日本の道交法で6歳未満の幼児の乗車に対し、チャイルドシートの使用が義務付けられたのは2002年のこと。ドライバーに罰則規定もあることから、チャイルドシートをクルマに据え付けるファミリーユーザーが瞬く間に増えた。警察庁のデータによれば年々使用者率は上昇し、2009年度は70.5%にまでなっている。もっともこれは乗車中にケガをした子供のうち、チャイルドシートに乗車していた割合だけを計ったもので、実際の装着率ではないらしい。JAFが街頭で調査したところ、同じ2009年度のチャイルドシート着用率は56.8%だったそうだ。ところが、子供の安全のためにチャイルドシートに座らせているユーザーでも、キチンとチャイルドシートを固定しているのは、36.8%に過ぎないそうだ(タカタ調べ)。ということは実質的なチャイルドシートの利用率はわずか20%程度なのである。問題は「装着率が低い」と言うより、キチンと装着していると思っているユーザーでも、正しく使えているのは3割強だということだ。この現状を知れば子供の安全を真剣に考えて使用しているユーザーはガッカリするに違いない。チャイルドシートを正しく利用するには、弾力のある大人用のシートを潰すようにチャイルドシートを上から強く押さえつけながら、シートベルトでガッチリと固定しなければならない。それは女性にはまず難しく、男性でもかなりの注意を払う必要がある。そんな状況を改善するには、チャイルドシートの固定を簡単、確実なものにするのが早道だろう。ISOFIX取り付け方法が生まれたのは、そんな背景からだ。つまりこれは日本だけの問題ではなく先進国共通の問題で、自動車を生産する国にとって対応していかねばならない問題だった、ということだ。シートベルトやエアバッグなどクルマの安全装置を生産、供給するタカタはチャイルドシートでも独自のシートベルト巻き取り装置を内蔵するなど、取り付け方法を工夫する一方で、国内で唯一のISOFIX対応チャイルドシートを生産し、自動車メーカーと共に普及活動を推進してきた。その活動は80年代後半からのISOFIX創設黎明期から現在までに及び、米国の道路交通安全局(NHTSA)とも共同でチャイルドシートの側面衝突事故における安全性を共同研究するなど、欧米での信頼も厚い。2012年7月1日、遅ればせながら日本でもISOFIX取り付け方式が車両に義務化される。チャイルドシートをより確実に利用すべく、法規も整えられるのだ。