金10・銀11・銅2の快挙…国際科学オリンピック2011 成果発表会

 アーバンネット大手町ビルにて8月5日、今年7月に開催された国際科学オリンピックの成果発表会(科学技術振興機構・日本科学オリンピック推進委員会 主催)が行われた。

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【写真1】国際科学オリンピックに参加した代表生徒と指導担当者(メンター)
  • 【写真1】国際科学オリンピックに参加した代表生徒と指導担当者(メンター)
  • 【写真2】帰国間もない代表選手たち
  • 成果報告会の様子
 アーバンネット大手町ビルにて8月5日、今年7月に開催された国際科学オリンピックの成果発表会(科学技術振興機構・日本科学オリンピック推進委員会 主催)が行われた。

 国際科学オリンピックとは、世界中の中学・高等学校生を対象とした、科学技術に関する国際コンテストで、「知のオリンピック」とも呼ばれている。目的は、すべての国の科学的才能に恵まれた子どもたちを見出し、その才能を伸ばすチャンスを与えること、その才能を伸ばすこと、国際交流・国際理解を深めることなど。各国の持ち回りで毎年開催されている。教科には、数学、物理、化学、情報、生物学、地理、地学がある。

 成果発表会には、各教科の代表生徒と指導担当者(メンター)が出席し、大会の様子や今後の課題等について発表した。

 コンテストの詳細は教科によって異なるが、開会式に始まり、約5時間×2日間の試験と、国際交流・観光の時間、表彰式・閉会式の10日間の日程で行われた。

 日本代表団は、数学、化学、物理、生物学、情報で金メダルを獲得するなどすばらしい成績をおさめた。成績は次のとおりである。

数学 :6名参加。金2名、銀2名、銅2名。国別順位101カ国・地域中12位。
化学 :4名参加。金1名、銀3名。国別順位70カ国・地域中15位。
物理 :5名参加。金3名、銀2名。国別順位85カ国・地域中5位。
生物学:4名参加。金3名、銀1名。国別順位58カ国・地域中3位。
情報 :4名参加。金1名、銀3名。国別順位78カ国・地域中8位。
地理 :4名参加。メダルなし。
地学 :4名参加。9月5日~14日開催。

 参加した代表生徒からは、「メダルの獲得も嬉しかったが、各国の学生たちと交流できたことが何より楽しかった」(吉田健祐さん 筑波大学附属駒場高等学校3年)、「金メダルは取れたが、順位は32位。31人も自分より上がいることを知ったことはいい経験になった。他国の人との交流から得たことも大きい。帰国後もfacebookを利用して、交流を続けている」(佐藤遼太郎さん 秀光中等教育学校6年)、「他国の人との交流の時間が多く、とても楽しかった。英語が苦手だったことが残念。これからは英語が必要だと実感した」(大塚祐太さん 千葉県立船橋高等学校3年)などの声があった。

 同行した指導担当者の方々からは、いくつか課題もあげられた。「実験試験のウエートが高いが、日本の高校では実験の時間が少なく苦戦した。国際的な物理教育と、日本の物理教育との乖離が生じていることも苦戦した要因の一つ」(物理 九州大学大学院工学研究員 向田昌志教授)、「開催国のタイでは王女や首相も参加するなど国をあげて応援している。日本でも資金面、人材面での支援が必要。情報は日本の高校ではなじみが薄いので裾野を広げることが必要」(情報 京都大学大学院 伊藤哲史准教授)、「欧米は9月始業のため、日本の大学1年にあたる生徒も参加できる。それはハンデとなった」(数学 勝田岳彦先生)、「試験問題は日本の教科書の10倍もの内容。幅広く考えさせる問題が多かった。授業ではほとんど実験をしないため、事前に実験の特別訓練をしたことが好成績につながった」(生物学 日本科学オリンピック推進委員会の浅島誠理事)、「メダルが取れず、世界の壁を感じた。フィールドワークの時間が中高の授業ではほとんど取れず慣れていなかったことで苦戦した。出題・解答とも英語だったことも敗因。日本の地理教育と世界が求める内容の乖離も感じた」(地理 大谷誠一先生)。

 最後に、浅島誠理事が、「今年の受験者は1万人を超えた。年々裾野が広がっていることは喜ばしい。しかし一方で、世界が求める教育内容と日本の教育内容が乖離し、遅れてきていると感じている。科学技術創造立国を担う若い世代の育成のために、教育の充実はぜひ必要。国としても支援してもらいたい」と今大会を総括し、「参加した生徒たちは、大変満足し、誇りを持って帰ってきた。彼らのような若い世代が日本を元気にし、困難を乗り越える鍵となるだろう」と締めくくった。

【写真1】国際科学オリンピックに参加した代表生徒と指導担当者(メンター)。向かって左から、数学の藤田岳彦先生と吉田健祐さん(筑波大学附属駒場高等学校3年)、物理の向田昌志先生と佐藤遼太郎さん(秀光中等教育学校6年)、化学の下井守先生と副島智大さん(立教池袋高等学校2年)、情報の伊藤哲史先生と村井翔悟さん(開成高等学校2年)、生物学の浅島誠先生と大塚祐太さん(千葉県立船橋高等学校3年)、地理の大谷誠一先生と水田匡さん(東京都立西高等学校2年)

【写真2】帰国間もない代表選手たち。向かって左から、数学の吉田健祐さん(筑波大学附属駒場高等学校3年)、物理の佐藤遼太郎さん(秀光中等教育学校6年)、化学の副島智大さん(立教池袋高等学校2年)、情報の村井翔悟さん(開成高等学校2年)、生物学の大塚祐太さん(千葉県立船橋高等学校3年)、地理の水田匡さん(東京都立西高等学校2年)
《石井栄子》

石井栄子

子育てから、健康、食、教育、留学、政治まで幅広いジャンルで執筆・編集活動を行うフリーライター兼編集者。趣味は登山とヒップホップダンス、英語の勉強。「いつか英語がペラペラに!」を夢に、オンライン英会話で細々と勉強を続けている。最近編集を手掛けた本:『10歳からの図解でわかるSDGs「17の目標」と「自分にできること」』(平本督太郎著 メイツ出版)、『10代から知っておきたいメンタルケア しんどい時の自分の守り方』(増田史著 ナツメ社)『13歳からの著作権 正しく使う・作る・発信するための 「権利」とのつきあい方がわかる本』(久保田裕監修 メイツ出版)ほか多数

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