廃止か見直しか? 再評価を迫られる学校選択制

 公立の小中学校で指定校以外の学校を選択できる制度「学校選択制」が導入されて約10年が経過し、成果や課題が明らかになってきた。平成24年度は、23区のうち小学校では15区、中学校では19区がこの制度を取り入れている。

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東京23区の学校選択制の実施状況(平成24年度)
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 公立の小中学校で指定校以外の学校を選択できる制度「学校選択制」が導入されて約10年が経過し、成果や課題が明らかになってきた。豊島区のように「大多数の保護者の支持を得ている学校選択制の根本的な見直しは困難」というところがある一方、国の方針で学校選択制度を取り入れてはみたものの、実情に即しておらずそのギャップを埋めるために制度の再評価を迫られているところもある。

 平成9年に、文部科学省より通学区域制度の弾力的運用に努めるよう通知され、小中学校で指定校以外の学校を選択できる「学校選択制」が各市区町村で導入された。全国では、三重・紀宝町が平成10年度に導入、都内では、平成12年度に品川区が導入したのを筆頭に、平成14年度から導入が相次いだ。平成24年度は、23区のうち小学校では15区、中学校では19区がこの制度を取り入れている。

 江東区や板橋区、練馬区は、すでに制度の見直しを実施し、新宿区や江戸川区は、来年度から見直しを予定。杉並区は、平成28年度から制度の廃止を予定している。

 「地域コミュニティーの崩壊を防止するという理由」から、江東区は平成21年度より、学校の選択範囲を「原則徒歩30分以内の範囲」と変更した。

 板橋区は検討会を重ね、「小学生が通学区外の遠い小学校に通うのは無理がある」という理由で、平成24年度から小学校に限り、学校選択の制度を「自由選択制」から「隣接区域選択制」に変更した。板橋区教育委員会によると、「今のところ、変更による反対意見はない」という。

 練馬区は、平成20年度に検証委員会を立ち上げたところ、学校間の生徒数のばらつきが問題視され、それ以降は、規模を考慮して受け入れを制限する中学校を設けたという。

 都心回帰の傾向が強い新宿区では、区内の特定の地域に子育て世代の人口が増え、未就学児が増えており、学校間による生徒数の差を緩和する狙いで、平成25年度から受け入れが限界にある小学校について指定学区外から選択できないようにする。新宿区教育委員会によると、「学校には、適正な規模があるべきで、今回の制限は、適正な規模に近づけるための対策」という。また、並行して35人以下学級の導入を予定している。

 「特定の学校に希望が集中したり、選択の結果により児童生徒数が減少する学校が出てくる。地域で学校を支えるという意識が希薄になる等の課題が聞かれるようになった」と懸念する江戸川区では、学校選択制は、学校を選択できるという保護者や子どもたちの期待が大きい半面、学校選択制の改善に対して地域関係者や学校の強い要望がある。このため、小学校では、希望調査票提出後に変更期間を設ける。中学校では、これまでの全校30人程度としてきた選択制受入数を現状に合わせて「受け入れができない学校」「15人程度」「30人程度」の3段階に変更する」という。小学校については平成25年度から実施し、中学校については、リーフレットの改善は平成25年度から、受入数の3段階化ついては平成26年度から実施する予定だ。

 学校選択制の廃止を検討している杉並区は、平成14年度に制度を導入して10年が経過し、「開かれた学校づくり」という当初の目的は達成できたとして、「やはり、地元の学校に通うのがよいのでは」という意見を尊重し、平成28年度から原則として学区内の学校に通学する制度に改める方針。現在、パブリックコメントを集計中で、7月中旬頃に正式発表する予定。「スポーツ強豪校に入りたい」などの理由で学区域外の学校を希望する場合、現行では、学校選択制と指定校変更制のどちらかの制度を利用することになるが、平成28年度からは、指定校変更制度で柔軟に対応していくという。
《工藤めぐみ》

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