【e絵本】デジタルえほんの進化を体現…アワード受賞「みんなでつなげっと」

 勢いを増すデジタルえほんの世界。そのひとつの大きな道しるべともいえる賞「デジタルえほんアワード」の第2回結果発表が、3月上旬に行われました。早速、大賞作品を楽しんでみました。

 大賞を受賞したのは、鈴木のりたけ作「みんなでつなげっと まち」。

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みんなでつなげっと まち
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 いま、ぐんぐん勢いを増すデジタルえほんの世界。その中で、ひとつの大きな道しるべともいえる賞「デジタルえほんアワード」の第2回結果発表が、3月上旬に行われました。

 大賞を受賞したのは、鈴木のりたけ作「みんなでつなげっと まち」。iPhone/iPad対応、スマートエデュケーションより配信中。「(ひる)編」無料版がiTunesで入手できるほか、アプリ「おやこでスマほん」内で「(ひる)編」製品版・「(ゆうがた)編」・「(よる)編」が各500円、セット1,200円にて購入できます。

 「(ひる)編」無料版で「つなげっと」をスタートさせると、つぶさに描かれた町の一枚絵が広がります。豆腐屋さんに新幹線、謎の鬼ヶ島までありとあらゆるものが詰まっていて「これを眺めるだけでも十分楽しいっ!」…のですが、そこはデジタルえほん。絵の中の動く部分をタップすると、ゲームの始まりです。

 動いているのは、町の人々。たとえば消防士をタップすると、カードが現れて「火事があったらすぐにかけつけて火を消すよ」のコメントが。これに対し、今度は町の中から「助けてー!家が燃えてるよ!」のコメントカードを持つ人を見つけて、「つなげっと」(=マッチング)すると得点が入る仕組みです。

 さしずめ、“需要と供給を合致させる神経衰弱ゲーム”といったところ。合う組を探すのに、「消防士が考えているのはこれで、こっちの人は火を消してほしいんだから、2人を引き合わせればいいんだな」と読者が連想する必要があるため、作品内では対象年齢の目安を「6歳~」としています。

 一方で、「3~5歳」向けには「あわせっと」モードを用意。こちらは出てきたカードに対して、町の中で同じカードを持つ人を探す遊びです。発達段階に応じて、無理なく遊べる方を大人が選んであげるとよいですね。

 さて、2011年10月の第1回から約70本の作品を紹介し、デジタルえほんを見つめ続けてきた本連載。今回のアワード結果発表を受け、筆者は改めて「デジタルえほんの進化スピードはとてつもなく速い」との実感をかみしめています。

 連載開始当初は、めくって読み進むだけのシンプルな読み物がほとんどでしたが、2012年には技術的な側面で大きな伸びが見られました。タップするとお話が展開したり、画面上で3D世界が繰り広げられたり…。

 実り豊かな昨年を経てこのたびは、その技術と“絵本作家の職人技”が魅力的に融合した本作が受賞。開花期から技術の進歩期を過ぎて、2013年はより多くの絵本作家たちがこの世界で活躍し、エッジのきいた創造的な作品を生んでくれるのではと予感しています。

 進化の先は、未知。見たこともない表現のかたちを眼前に突きつけられる快感が、筆者をデジタルえほんの世界から離れがたくしているようです。
《てらしまちはる》

てらしまちはる

ワークショッププランナー/コラムニスト/絵本ワークショップ研究者。東京学芸大学個人研究員。2022年3月に単行本『非認知能力をはぐくむ絵本ガイド180』(秀和システム)を刊行。絵本とワークショップをライフワークとしている。アトリエ游主宰。

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