高校の授業料無償化に伴い、私立高校生徒に対する自治体の支援格差が広がりつつある。国の制度では、授業料のみを制度の対象としているが、自治体によっては施設整備費なども対象とし、私立高校の保護者負担を実質無償化して、手厚く支援する動きも出ている。 公立高校の授業料無償化と私立高校の就学支援金制度は、2010年度にスタート。私立高校の生徒に対しては、就学支援金として国から年額118,800円が支給されている(学校が生徒本人や保護者にかわって受け取り、授業料の一部と相殺する仕組み)。さらに低所得世帯の生徒には、家庭の状況に応じて一定額が加算される。 ただ、国の助成を受けても、私立の授業料の一部しかまかなえず、差額は個人で負担せざるをえない。これに対して、自治体による就学支援は、国の制度分に上乗せして授業料を軽減することができ、返済義務もない。 中には、大阪府のように国の制度と合わせて私立高校授業料の保護者負担を実質無償化または年間100,000円で収まるように支援している自治体もある。大阪府では、高校授業料無償化後にも残る公私の授業料負担格差に対して、生徒の自由な学校選択の機会を保障しようと、手厚い支援を続けている。 このような私立高校生徒に対する自治体の取り組みが全国各地に広がれば、多くの家庭で安心して子どもを高校に送り出せるようになるだろう。 なお、就学支援制度の概要は自治体ごとに異なる。申請の時期や方法、対象者、支給額などについては、通っている私立高校や自治体で調べてみてほしい。◆各自治体の就学支援制度【大阪府・授業料支援補助金】対象者:生徒及び保護者(親権者全員)が大阪府内に住所を有している・「私立高校生等就学支援推進校」として指定された大阪府内の私立高校等に10月1日時点に在学している・就学支援金を受給している・保護者の所得(親権者合算)が所得要件を満たす支援の内容:10月1日時点での在学を確認後、1年分を一括して私立高校等へ振り込む・就学支援金と合わせて、授業料が無償もしくは保護者負担が100,000円で収まるように標準授業料(私立全日制高校等・年間580,000円)を上限に補助する。標準授業料を超えた授業料を設定している私立高校等の場合、差額分は就学支援推進校が負担する・入学金、実費精算を行う教材費、修学旅行費積立金などの授業料以外の給付金は支給対象外【京都府・私立高等学校あんしん修学支援事業(2012年度実施内容)】対象者:京都府内の私立高校に在籍する京都府民の生徒支援の内容:生活保護世帯は、国制度と府補助制度を活用した学校の授業料減免により授業料全額無償化(929,000円上限)・年収500万円未満程度の世帯は、国制度と府補助制度を活用した学校の授業料減免により府内平均授業料まで実質無償化(650,000円上限)・年収500万~900万円程度の世帯は年50,000円以内【広島県・授業料等減免制度(2012年度実施内容)】対象者:保護者が広島県内に住所を有する・保護者の税額等が対象要件を満たす支援の内容:生活保護世帯と、市町村民税所得割非課税世帯は、国制度と県制度により授業料等の全額軽減・保護者の市町村民税所得割額が年額51,300円未満の世帯は、国制度と県制度により授業料等の3分の2を軽減・軽減対象となる授業等の学校納付金の範囲は、施設整備費、実習費など授業料と同様の趣旨のものと認められる学校納付金を含む【東京都・授業料負担軽減制度】対象者:私立高校に在学する生徒と保護者が5月1日以前から引き続いて都内に在住している・住民税の額が一定基準以下である世帯支援の内容:生活保護世帯は、国制度と都制度により年額427,000円を軽減・住民税非課税または均等割のみの世帯は、国制度と都制度により年額377,000円を軽減