親切を行う幼児は、後に周りの児から親切にしてもらいやすく、自分が親切にした分を周りの児から返してもらっていることなどが、大阪大学の研究によって明らかになった。「情けは人の為ならず」が5~6歳児の日常生活で働いていることが実証された。 ある個体が利他行動(他者に親切にする行動)を行った結果、その個体の評価が高まり、他者に行った利他行動が回り回って別の他者から返ってくる仕組みは社会間接互恵性と呼ばれる。同大の清水真由子特任研究員、大西賢治助教授らの研究グループは、大阪府下の保育園で5~6歳児を対象に、幼児が日常生活で他児に対して社会間接互恵的に振る舞うのかを検証した。 研究では、12名の追跡観察する児(親切児)を選出する。また、親切児が他児の手伝い、ものを貸してあげるなどの利他行動を行った時に、親切児の周囲1m以内にいた児から1名を選び、親切行動観察児として行動を観察。その後、10分間に親切行動観察児が親切児に向けて行った利他行動を記録する。後日、親切児のすぐ近くに同じ親切行動観察児がいた際に同様の観察を行い、普段場面として、親切行動を行った直後と比較した。 その結果、親切行動観察児は親切児が他児に利他行動を行ったのを見た直後に、普段よりも高い頻度で親切児に対して利他行動を行っていた。「親切児が普段受ける利他行動の頻度」や「親切児と親切行動観察児の仲の良さ」を考慮しても、効果は消えないという。さらに、利他行動だけでなく、体に触ったり、肯定的な内容で話しかけるなどの親和行動も普段より頻繁に行っていた。 このことから、5~6歳児は、日常生活の中で間接互恵的な行動傾向を示していることが確認された。また、幼児が第三者間のやりとりから他者を評価する際には、その他者と仲良くしたい、その他者を好ましく思うという単純な感情が重要な役割を果たしている可能性が示唆された。 同研究グループでは、この研究で示された「他者間のやりとりから他者の評価を形成し、親切な者には、より親切に振る舞う」というルール以外にも、他者に親切にしない者には親切にしないなどのルールが幼児の日常生活で働いているのかを検討していく予定だという。