学校管理職育成に自治体の大学院連携は現状維持と消極的

 国立教育政策研究所は、都道府県・政令指定都市における「学校管理職育成の現状と今後の大学院活用の可能性に関する調査」の報告書を作成。育成のための研修の企画や運営に大学院と連携を増やしたいと希望する自治体は3分の1にとどまった。

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学校管理職育成の現状の評価
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  • 地元国立大にプログラム内容の要望・交渉の有無
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 国立教育政策研究所は、都道府県・政令指定都市における「学校管理職育成の現状と今後の大学院活用の可能性に関する調査」の報告書を作成。育成のための研修の企画や運営に大学院と連携を増やしたいと希望する自治体は3分の1にとどまった。

 調査は、都道府県・政令指定都市教育委員会および教育研究所・センターに対して、学校管理職育成の現状と今後の大学院活用の可能性について研究することを目的に行われた。あわせて、学校管理職育成の取り組みについて、大学などに聞き取り調査を実施した。

 学校管理職育成の現状には、約7割の自治体が「どちらかといえば良い」または「良い」と回答し、都道府県・政令指定都市教育委員会は肯定的にとらえていることがわかった。

 しかし、「学校管理者候補の育成・確保」には、約6割が「課題が多い」または「どちらかといえば課題がある」と評価。具体的には、「女性学校管理職の数をどう増やすのか」「学校管理職の需給バランスにどう対処するのか」「いかに若手の教職員に学校管理職の魅力を感じさせ、資質・能力の向上を図るか」などの指摘があった。

 大学院派遣者数については、回答のあった自治体(42自治体)のうち「増やしたい」と回答したのは9自治体で、ほとんどの自治体は「現状維持で良い」と回答した。

 学校管理職育成という観点で大学院などに派遣するために直面している課題は、「地元に学校管理職養成コースがない」「派遣者の費用負担の大きさ」など条件整備に関わるものだった。また、大学院派遣を行う場合、プログラム内容の充実などについて地元の国立大学の教員養成系大学・学部などに要望や交渉を行ったことがあるのは、わずか6自治体だった。

 また今後、学校管理職育成のための研修の企画・実施について大学と連携を増やしたいと考えている自治体は全体の3分の1にとどまっているが、研修プログラムの共同開発を望む声が多かった。報告書では、先進事例として教育委員会と大学院が連携するプログラムを紹介。大阪教育大学と大阪府・大阪市教育委員会と連携し、学校づくりの実践例を学校・教育行政、大学が一堂に会して検討する「学びの場」などの事例をあげている。

 同研究所では、学校管理職育成における大学院との関わりに現状維持を支持する意見の根底には条件整備や、都道府県・政令指定都市教育委員会および教育研究所・センターと大学院の間のコミュニケーション不足が考えられるという。しかし、要望や交渉を行った自治体で内容を実現したケースも多く、お互いの「壁」を越境する施策を推進することが必要だとまとめている。
《田中志実》

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