【被災地で学習支援】夢を叶える…大学生とキャリアプランを考える3日間

 一般社団法人「子どものエンパワメントいわて」は被災した子どもたちにもう一度夢を描きなおしてほしいとの想いから学習支援活動を行っている。そして活動の一環として“スリーデイズ・プロジェクト”という企画が実施されている。

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スリーデイズ・プロジェクト参加者の一人、滝口暉己さん
  • スリーデイズ・プロジェクト参加者の一人、滝口暉己さん
  • 滝口暉己さん
  • 岩手県釜石市内の建物には、どこまで津波が来たかを表示するパネルが多くみられる
  • 現在の岩手県釜石市
  • 現在の岩手県釜石市
  • スリーデイズ・プロジェクト
◆子どもたちの夢を具体化、進学するべき学校を一緒に調べてサポート

 3日間のプログラムを通じて、滝口さんを含めて大学生メンバー(中学生8名に対して大学生4名で構成)は、大学生生活や今後の夢などについて語った。反対に、生徒たちからも将来の夢を語ってもらった。

 そのうえで、将来の夢を叶えるにはどうすればよいのか(その職業につくにはどの学校に行くべきか、その学校に行くにはどうすればよいのか、またその職業と同じ目的を達成できる仕事にはどのようなものがあるのか等)について話し合った。

 このほか、東京での大学生活や大学での勉強と実社会の関わりについてのトークタイムも設けられた。滝口さんは法学の基礎的な考え方を紹介し、それを日常的な行為にあてはめたらどうなるか、ジョークを交えて語った。

 勉強以外の面では、なにげない会話のなかで「僕は野球しかできないから」と言う子に対し「なにか1つできることがあるのは、良いこと」と肯定的に言い換えるなど、子どもたちに自信をもたせる工夫をしていたようだ。

◆子どもたちの目線と笑い「お互い良い影響を与えられた実感覚を得られた」

 スリーデイズ・プロジェクト後。再び滝口さんに聞いた。

--参加前に、ボランティアを通じて子どもたちに良い刺激や衝撃を与えられたらよいとおっしゃっていましたが、実際にやってみていかがでしたか。

 与えられたと思います。抽象的な表現になってしまうけれど、自分の話を子ども達はちゃんと受け止めたんじゃないかな、と感じていて。相手の顔を見ればしっかり目線が返って来るし、笑いの反応もすごく良い。興味を持って聞いてもらった実感があります。たとえば計算問題で小技を見せたときに“もっと他にもないんですか”と食いついてきてくれて。

--たしかに。滝口さんがもっとも勉強したときのエピソードには、すごい反応でしたね。寝ない工夫を子どもたちがさっそく真似していて。

 そうですね。あとは、コーディネーターの浅石さんや支援員さんに“勉強の動機づけ”を手伝ってほしいと言われていたのですが、子どもたちがすでに将来のことを考えていたのですごく進行しやすかったです。

 ぼくは都内で塾講師のバイトをしているのですが、都内の子どもと比較しても、キチンと将来を考えている子が多かった印象があります。夢を聞いたら答えてくれるし、夢を叶えるにはどうすればよいのか聞いてくる子どもがいたり。

◆「人を助けるお父さんを見て」震災は進路を考えるキッカケに

--そういった違いはどうして生まれると思いますか。

 ぼくなりにまとめると、震災の影響はあるようです。震災のときに父親が働いて人を助けるところを見て、自分もそうなりたいと思う子がいたり。たとえばもともと医療系のドラマが好きで、震災をきっかけにドラマと現実が結びついた子なんかもいて。人を助ける仕事につきたい、という意思が固まったようです。だからぼくは人を助ける目的を達成するにも、最前線と後方からの支援とがあって、現場で救命する人も医療関係のメーカーも同じラインにあることを説明してみました。そのうえでその子は“最前線でやりたい”ことを確信するに至りました。

--なるほど、ほかではなく、なぜその仕事なのかを考える作業もしたのですね。就職活動の面接対策のようですね。ありがとうございました。

 インタビューを通じて、自身の肌で感じたことを元に、自信をもって活動成果を答えてくれた滝口さん。

 今回の活動を通じて触れ合った子どもたちの、心の中まで覗き見ることはできないため、今回の活動でどれだけ運営側の要望に応えられたかは測れない。けれど、「夢を叶えるために必要なものは何か」「将来とはいつの事なのか」「それまでに、どこにいるべきなのか」、一緒に考えることを通じて、子どもたちの将来の夢を“より詳細に”描く作業に協力できたのは確かなようだ。

 子どもたちが活動を通じて得たことを活かし、今後夢を叶えていってくれることを“スリーデイズ・プロジェクト”参加者皆が願っている。
《北原梨津子》

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