やるべきことはわかっている、後はスピード… DiTT5/25<後編>

 5月25日(月)に、慶應義塾大学 三田キャンパスで開催されたデジタル教科書教材協議会(以下、DiTT)シンポジウム「未来の教科書をみんなで考えよう!」で、パネルディスカッションが行われた。

教育ICT 行政
パネラー
  • パネラー
  • 中村伊知哉 DiTT事務局長(慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授)
  • 遠藤利明氏(衆議院議員)
  • 石戸奈々子DiTT理事(NPO法人CANVAS理事長)
  • 川瀬徹氏(東京書籍 ICT事業本部 第一営業部長)
  • 菊池尚人氏(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科特任准教授)
  • 黒川弘一氏(光村図書出版 取締役 編集本部長)
 5月25日(月)に、慶應義塾大学 三田キャンパスで開催されたデジタル教科書教材協議会(以下、DiTT)シンポジウム「未来の教科書をみんなで考えよう!」で、パネルディスカッションが行われ、デジタル教科書を普及させるために解決が必要な課題について議論された。当日交わされた議論と、おもな意見を紹介する。

◆課題は法改正、コスト、著作権、流通

 デジタル教科書普及の前には、いくつもの壁が立ちはだかっている。そのひとつが法改正。現状の学校教育法では、教科書は「図書」とされていて、デジタル教科書は法的に認められていない。

 2つ目はコストの問題。たとえば紙の教科書は書写なら1冊157円。デジタル教科書をその金額で作るのは不可能だ。

 3つ目は、検定審査の問題。デジタル教科書には当然、動画や音声などのコンテンツが入ってくるが、これらリンク先の検定審査をどうするのか。

 4つ目は、コストの中でも多くを占める著作権の問題。

 そして5つ目は、配信・流通方法をどうするかだ。クラウドサービスを使うとなると莫大な予算がかかってしまう。

 パネルディスカッションでは、これらについて議論を行った。参加したのは、遠藤利明氏(衆議院議員)、川瀬徹氏(東京書籍 ICT事業本部 第一営業部長)、黒川弘一氏(光村図書出版 取締役 編集本部長)、菊池尚人氏(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科特任准教授)、中村伊知哉 DiTT事務局長(慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授)、石戸奈々子 DiTT理事(CANVAS理事長)ら。

◆紙かデジタルかではなく、紙もデジタルも

遠藤氏:現場では新しい取組みに慎重な先生方が多い。ICTの導入に本当に教育的効果があるのか、教員たちが使いこなせるのかという議論も未だにある。海外と比べても日本の教育の情報化は大変遅れている。改善のためには、理解者を少しでも増やしていくことが急務。

中村氏:課題はもうはっきりしている。議論は必要だが、いつまでも議論しているわけにはいかない。どこかで決断しなければ。

川瀬氏:「紙」対「デジタル」という議論になると困る。紙もデジタルも、学習者が自由に選べる環境でなければならない。

黒川氏:コストについては、紙の教科書をPDF化する程度のデジタル教科書でいいのか、学習履歴もとりたいのか、クラウドサービスで配信するのか、どこまでやるかで変わってくる。また、コンテンツだけでなく、無線LANなどの環境整備や端末にかかる費用もデジタル教科書に含むのか。線引きが曖昧だ。

川瀬氏:デジタル教科書の制作費の半分以上は、資料にかかる著作権料。
《石井栄子》

石井栄子

子育てから、健康、食、教育、留学、政治まで幅広いジャンルで執筆・編集活動を行うフリーライター兼編集者。趣味は登山とヒップホップダンス、英語の勉強。「いつか英語がペラペラに!」を夢に、オンライン英会話で細々と勉強を続けている。最近編集を手掛けた本:『10歳からの図解でわかるSDGs「17の目標」と「自分にできること」』(平本督太郎著 メイツ出版)、『10代から知っておきたいメンタルケア しんどい時の自分の守り方』(増田史著 ナツメ社)『13歳からの著作権 正しく使う・作る・発信するための 「権利」とのつきあい方がわかる本』(久保田裕監修 メイツ出版)ほか多数

+ 続きを読む

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top