絶滅危惧種「日本ライチョウ」抱卵前のふ化に成功…上野動物園

 国の天然記念物であり絶滅危惧種でもある日本のライチョウ。上野動物園は6月27日から28日にかけて、乗鞍岳で採取した全5羽のふ化に成功。抱卵前に採取した卵から人工ふ化に成功したのは今回が初めてだという。

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ふ化したライチョウのヒナ
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 国の天然記念物であり絶滅危惧種でもある日本のライチョウ。上野動物園は6月27日から28日にかけて、乗鞍岳で採取した全5羽のふ化に成功。抱卵前に採取した卵から人工ふ化に成功したのは今回が初めてだという。

 日本のライチョウは、本州中部高山帯(頚城山塊、北アルプス、乗鞍岳、御嶽山、南アルプス)に分布。世界に分布する23亜種の中でも最南端に位置しており、かつて最終氷期に大陸から移り棲み、温暖化が進むとともに日本では高山帯に取り残された依存種とされている。体長は約37センチメートル、羽色は季節によって変化し、夏羽は黒褐色に白斑が混じり、冬には尾羽を除き純白になる。

 現在、日本のライチョウは絶滅の危機に瀕しており、同園はライチョウの繁殖を目的として、ノルウェーのスバールバルライチョウの繁殖に挑戦。2008年には飼育下での繁殖に成功していた。

 今回ふ化した卵は、2015年6月5日に長野県と岐阜県の県境にある乗鞍岳で採取し、同園に輸送されたもの。6月26日から卵の内側からくちばしで殻を割り始める「嘴打ち(はしうち)」が確認され、27日午後6時から翌28日午前4時にかけて5羽すべてがふ化した。国内では「ふ化直前」の卵を採取して人工ふ化させた例はあるが、それよりも早い「抱卵前」の卵で成功したのは初めてだという。

 ふ化した5羽の性別は不明、体重は約16.7~18.7グラム。ふ化後約2週は特に体調をくずしやすいため、これまでのふ化や育雛の経験を活かし、注意深く飼育・観察を行っていくとしている。今後のふ化などの状況については、順次、同園ホームページで案内していくという。
《黄金崎綾乃》

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