スタジオジブリ・宮崎吾郎、子どもには”隙間”が必要

生活・健康

作品づくりのコンセプトなどを語る宮崎氏
  • 作品づくりのコンセプトなどを語る宮崎氏
  • 3人の後方に見えるのは愛・地球博で再現された「サツキとメイの家」(『となりのトトロ』から)
  • 古谷教授
  • 妹尾教授
 日本建築学会の子ども教育支援建築会議が東京都港区の建築会館ホールを会場に開いたシンポジウムで、「宮崎吾朗氏(スタジオジブリ)に聞く、子どもと住まい・まちの文化」と題する対談企画が行われた。アニメ映画『ゲド戦記』や『コクリコ坂から』(スタジオジブリ制作)の監督として知られる宮崎氏。同支援会議運営委員長の古谷誠章早大教授、妹尾理子香川大教授の二人が進行役となり、宮崎氏に作品づくりのコンセプトや子どもの生活空間などについて語ってもらった。

 宮崎氏は1967年生まれ。信州大学農学部森林工学科を卒業後、造園コンサルタント会社で公園緑地や都市緑化の計画・設計に従事した経歴を持つ。98年からはスタジオジブリで「三鷹の森ジブリ美術館」(東京都三鷹市)の総合デザインを担当し、その初代館長(2001~05年)も務めた。05年開催の愛知万博(愛・地球博)では、長久手会場(名古屋市)に建設された人気パビリオン「サツキとメイが住む家」の設計統括を手掛けている。

 対談で宮崎氏は、ジブリ作品で描かれている世界観のリアリティーについて、「(アニメ映画監督の)高畑勲と宮崎駿はアニメーションの世界に入ったころ、本来なら子どものためのアニメーションに劇映画の要素を持ち込みたいと考えた。そのためには世界観に説得力がなくてはならず、どういう家に住み、そこで何を食べてどう暮らし、そこで見える風景はどういうものか、しっかりさせておく必要があった」と説明。2作品に登場する建物や町並みなどを、写真や資料に基づいて書くことはせず、「(宮崎駿は)覚えているもので絵を描き、覚えていないところはたぶん想像で描く。そうすると、ありそうだけれど、ないものになる。それがオリジナリティーの基になっている」と作品づくりの裏側を明かした。

 加えて、「全体像からは決して入らず、部分から入る。断片の集積で組み立てていくことが、ある種の説得力を生むことになっているのだと思う」と語った。



 大ヒット映画『となりのトトロ』は、母親の療養のため郊外に引っ越してきた家族の物語。この映画では、日本の伝統的木造住宅に洋風の応接室(洋館)が付いた建物が一家の住む家として描かれている。宮崎氏は「これは宮崎駿が子どものころに住んでいた家がモデル。それをベースに物語に必要なものを織り込んでいる」とした。

 対談では、子どもたちにとって望ましい空間のあり方にも話題が広がり、宮崎氏が「(以前は)生活の中にあいまいで隙間みたいなものが時間的、空間的にもあった。今は余計なところがなさ過ぎる」と指摘。その上で、「まちにも、子どもがうろうろしていい隙間がない。そんな場所をまち全体でつくってあげたい。都市化、経済合理性をどこまでだったら捨てられるのか、元に戻せるのかを考えなければいけない時期だと思う」と述べた。さらに、「学校建築が与える影響は大きい。そうした場所も少しずつ入れていってほしい」と持論を語った。

 対談の中で、古谷教授は「おじいちゃんたちが居られるすき間もなくなってきている。会社をリタイアしても元気な人たちはどんどん増えており、地域の子どもたちに目配りしてくれるこうした人たちを活用しない手はない」と強調。妹尾教授は「本物に触れることや実体験を豊かにすることは大切だが、それらが非常に難しい今だからこそ、アニメーションや映画の果たす役割を考えていきたい」と話した。

建築学会シンポ「スタジオジブリ・宮崎吾郎氏に聞く」/記憶と創造で生まれるオリジナリティー

《日刊建設工業新聞》

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