東京大学宇宙線研究所の藤本征史氏と大内正己准教授をはじめとする研究チームは、アルマ望遠鏡を使って、人類史上最も暗いミリ波天体の検出に成功、これら天体から放射される赤外線がこれまで謎だった宇宙赤外線背景放射の起源であることが明らかになった。宇宙では、赤外線、マイクロ波、可視光といった弱い光があるが、このうち赤外線はその起源が明らかになっていない。研究チームは、公開されている約900日間に及ぶアルマ望遠鏡観測データをくまなく調査し、更に背景天体が重力レンズ効果で増光されることを利用して、これまで検出することができなかった、より暗い天体を網羅する探査を実施した。この結果、研究チームは133個の暗い天体を発見、その中にはこれまで発見されていたものよりも最大で5倍も暗い天体が含まれている。その明るさと数を足し合わせると赤外線のほぼ全てに相当することが今回分かった。また、今回の研究で見つかった暗いミリ波天体をハッブル宇宙望遠鏡やすばる望遠鏡の光赤外線の画像で調べた。その結果、暗いミリ波天体のうち約60%の正体は、これまで光赤外線の観測で知られている遠方銀河だと分かった。残りの約40%の天体は、光赤外線観測では姿が見えない天体だった。今回の研究によって、宇宙赤外線背景放射の起源が銀河などの天体であることが明らかになった一方で、これらのうち40%については正体不明の新タイプの天体である可能性が出てきたとしている。研究チームは今後、アルマ望遠鏡を用いた詳細観測によって、こうした暗いアルマ天体の正体を明らかにすることを目指す。