子を持つことを社会から歓迎されている…フィンランド子育て事情

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両親が一緒に子育てをするのは当たり前。誰でも平等であるべき、という考え方のフィンランドでもそれは課題だ(撮影:松永光希)
  • 両親が一緒に子育てをするのは当たり前。誰でも平等であるべき、という考え方のフィンランドでもそれは課題だ(撮影:松永光希)
  • 中村雅子さんと息子ちゃんたち。ヘルシンキでのびのびと暮らす(撮影:松永光希)
  • ヘルシンキきってのおしゃれ地区、デザイン・ディストリクトにあるデザインショップCommonを夫婦で運営(撮影:松永光希)
  • ちょうど夏休み中のてんごちゃん。雨なので室内で遊ぶ(撮影:松永光希)
  • キッチンでも事務仕事なら作業可能。たおちゃんが眠っている今がチャンス!(撮影:松永光希)
  • 電車の中にはベビーカーのマークが明記されている。子連れでの移動も楽そうだ(撮影:松永光希)
  • 道路もバリアフリーがかなり進んでおり、店と道路にも段差がないなど誰にとっても歩きやすいようになっている(撮影:松永光希)
  • 公園内で夏休み中にサーブされる食事。「ほ~ら、お食べ~」とばかりによそってくれるソーシャルワーカー(撮影:松永光希)
 ある国に生まれ落ちたら、その国の政策に則って生活しなくてはならないのは当たり前のこと。その政策によって生活も人生も左右される。働きたいのに保育園に落ちてしまった母親の悲痛な思いを表した「日本死ね」が大きな話題を呼んだように、子育て世代はそれを痛感するのではないだろうか。だがどの国でも子育てが大変なわけではない。国を挙げて子育てを支援する国として知られるフィンランドで、実際に子育てをしている人に話を聞いた。

◆「ネウボラ」というシステム、その付き合い方は

 ベビーグッズがぎっしり詰まった「マタニティボックス」、親身になって話を聞いてくれる相談員、保育園不足なんて心配することなし! 子ども支援の国際組織セーブ・ザ・チルドレンによる「お母さんにやさしい国」ランキングで常にトップの常連といえばフィンランド。子育てがしやすい国として知られているが、“子どもを育てる”ということがストレスにならない、そんな夢のような生活ってあるのだろうか。

 ヘルシンキ在住12年。おしゃれな北欧デザインのお店が軒を連ねるデザイン・ディストリクトに雑貨のセレクトショップを日本人の夫とともに経営している中村雅子さんは、6歳と0歳男児の母だ。ふたりとも妊娠から出産までをフィンランドで体験し、現在も子育てにいそしむ。生まれてまだ2か月(取材時)のタオちゃんにお乳を含ませながら、ダイニングキッチンで事務処理を行う間、お兄ちゃんのてんごちゃんは保育園(※フィンランドでは保育園と幼稚園の違いはない)に通う。中村さん宅を訪れたときはちょうど夏休みであったため、てんごちゃんをうまく遊ばせながら、話を聞かせてくれた。

 フィンランドでは妊娠がわかるとまず、“ネウボラ”に行く。ネウボラとは妊娠から出産、小学校就学までの子育てについてなにかと無料で相談ができる場所だ。担当者は助産師や看護師で、子育て経験者のベテランだったり、子育て未経験者だったりとさまざまだが、“ネウボラおばさん(フィンランド語では「ネウボヤ」と呼ぶ)”として妊娠から小学校就学までを1人が担当する。中村さんも、1人目のてんごちゃんのときはずっと同じネウボヤに面倒を見てもらった。

 面談は定期的に行われ、30分から1時間ほど。担当者が同じ人なので、いちいちはじめからコトの経緯を話す必要もなく、信頼関係を築きやすいという。ネウボラは必要な手続き、たとえば産院の指定とその窓口としての役割も果たすうえ、サポートは妊娠・出産・子どもに関することだけでなく家庭の経済事情や夫婦間の問題など総合的だ。そのため、ネウボラの利用率はなんと99%にものぼるという。

 この利用率の高さは、日本にはない北欧的な要素が絡んでいるのではないだろうか。中村さんによると、ネウボヤたちは決して“上から目線”でモノを言うことがないのだそう。あくまでも同じ人間として――母でもなく、姉でもなく、かといって友人でもない、“ネウボヤ”という立場が確立されている――必要なときに必要な情報をくれる人。インターネットで調べようと思えば簡単に調べられることも多いだろうが、時にそれは家庭環境のことだったり、人間関係だったりと、個人的な問題に及ぶこともある。

 家族や友人ではないからこそ話しにくいことも話すことができるのだし、なによりネウボヤは批判や指導をするわけでもなく、いつでもただ話を聞いてくれる。そんな人がいる、というだけで違う。中村さん自身は特に深刻な悩みもなかったし、2人目のタオちゃんのときは妊娠から現在までに何人かネウボヤが変わっているが、だからといって特に不便もないという。中村さんのようにつかず離れず、という付き合い方もあれば、精神的にもネウボヤなしでは過ごせない人もいるかもしれない。いずれにせよ99%という高い利用率を実現しているわけで、それには中村さんの言う「フィンランドでは誰もが平等ですから」というのが大きな理由でありそうだ。
《岩佐史絵》

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