中学受験を目指す小学生のみなさんへ…武蔵高等学校中学校・梶取弘昌校長からのメッセージ

 ゴールデンウィークを過ぎ、本格的に中学受験へ向かう小学生に向け、武蔵高等学校中学校の梶取弘昌校長先生に、小学6年生に向けたアドバイスを聞いた。

教育・受験 小学生
武蔵高等学校中学校 梶取弘昌校長
  • 武蔵高等学校中学校 梶取弘昌校長
  • 校内を流れる新緑のすすぎ川 画像提供:武蔵高等学校中学校
  • 校内を流れる夏のすすぎ川 画像提供:武蔵高等学校中学校
 新学期から1か月。中学受験を終え、晴れて1年生となった先輩たちは現在、どのような生活をしているのだろうか。武蔵高等学校中学校の梶取弘昌校長先生に、ゴールデンウィークを過ぎ本格的に中学受験へ向かう小学生へのアドバイスを聞いた。

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◆新学期を迎えて

 新年度が始まり、1か月が過ぎようとしています。春休みはどのように過ごしましたか?新しい学期が始まると気持ちも新たになります。ワクワクした気持ちで新学期を迎えたことと思います。「何かが始まる!」。その気持ちが大切です。

 まず1年間の計画を立ててください。中学受験を考えているのであれば、いまの時期、何をすべきかを考えましょう。「頑張ろう!」だけでは頑張れません。目標に向かって一生懸命勉強すること。テストで良い点数を取ることが目的ではありません。結果を出すことが重要ではありません。いままで知らなかったことを知る、できなかったことができるようになる。『学び』とはそのような過程を大事にすることです。何かを知った、何かができたという結果ではありません。

 志望校に合格することを考える前に、まずこれから1週間、何をするか計画を立ててください。1週間の予定を書いてみましょう。予定を紙に自分の手で書いてください。いまの時代、いろいろ便利な道具が増えましたが、手で書くことがおろそかになっています。1週間、1か月、1学期間の予定を立てましょう。そして、自分が立てた予定がうまくいったかどうか振り返りましょう。あまり大きな目標を立てると失敗します。いまの自分の力で少し頑張ればできるレベルの目標がちょうどいいのです。そうやって、1週間、1か月、1学期を見直しましてください。それを繰り返していくことがみなさんの成長につながります。勉強ができるようになったことが成長ではありません。『学ぶ』ことが楽しかった、そう思えることが大切ですね。

◆「人との出会い」が大切

 目の前の勉強も大切ですが、それ以上に大切なことは、君たちが身近な人たちとどう接するかです。君たちが生きてきた12年間、いろいろな出会いがありました。これからも新たな出会いが生まれます。君たちが多くの人に支えられてここまで育ってきたことは忘れてはいけません。そのことにまず感謝してください。人は誰でも一人では生きていくことはできません。そのことは忘れてはいけませんし、君たち自身も人を助けているのです。人に対して感謝の気持ちを忘れないでください。

◆建学の精神『三理想』

 武蔵には、建学の精神『三理想』というのがあります。その中に「自ら調べ自ら考える」という言葉があります。正確には、「自ら調べ自ら考える力ある人物」と書かれています。この言葉を縮めて「自調自考」と言ったりします。この『三理想』は1922年の創立当初からありました。100年も前の精神がいまの時代でも通用する、素晴らしいことですね。この「考える」ということがいまの時代、軽んじられています。君たちは、「しっかりと考える」ことをしているでしょうか?

◆じっくり考えること

 まずは、じっくり考えることを習慣にしてください。武蔵でも、「考える」ことを大切にしています。すぐに結論を出す必要はありません。問題を素早く解くことが大事ではないのです。「効率的であること」、「早く結果を出すこと」。いまの時代に求められていますね。

 でも、ちょっと待ってください。「じっくり考える」。このような考え方は、素早さを求めるいまの時代には合いません。みなさんは、まずじっくり考えることを実行してください。みなさんの「想像力」を働かせてください。

 「想像力」の反対側にあるものは何だと思いますか?それは「効率」です。素早く、そつなく、誰よりも早くできること。もちろんこれらがすべてダメとは言いません。でも『学び』について言えば、「効率優先」ではダメです。『学ぶ』とは、答 のない問題の答を探そうとする過程のことです。じっくり考えることです。結果をすぐに求めるのでなく、みなさんは『学び』の過程を大切にしてください。「『学ぶ』ことは楽しい!」このことを実感してください。

◆先生の役割

 では、先生たちは何をするのでしょうか?先生は君たちが考えるときにそばにいて、見守ってくれる存在です。答を教えてくれるのが先生ではありません。

 手取り足取り教える先生が良い先生ではありません。効率の良い授業をするのが良い先生ではありません。素晴らしい授業とは、ワクワクする授業です。先生も生徒もワクワクできる授業が素晴らしい授業です。問題の解き方を教えるのが授業の大きな目的ではありません。先生に何かを教わることを期待してはいけません。君たちが自分の手で『学び』をつかみ取るのです。武蔵にはこのような『学び』が満ちあふれています。

◆勝ち負けではない『学び』

 試験をすると君たちの答案に点数がついて戻って来ます。試験の目的は、自分に何が足りなかったのか、これから何を変えていけばいいのかを考えることです。どのように『学び』を伝えれば良かったのか。先生たちも君たちのために考えます。試験は点数を競うものではありません。人と比べるものでもありません。君たちには『真の学び』をめざしてほしい。君たちの回りにいる同級生は皆仲間です。お互い励まし合い、自分を高めてください。仲間の素晴らしさを認めてください。出会う人すべてが君の仲間です。仲間を大切にしてください。

 実り多い1年であることを祈っています。

◆保護者の方へのお願い

 私が考える『学び』はこのようなことです。私からお願いしたいことは、子どもたちを見守ってくださいということです。過度に干渉せず、過度に放任せず、「あなたを見ていますよ」というメッセージを送り続けてください。子どもたちが一番信頼しているのは保護者のみなさまです。暖かい温もりのある家庭が子どもたちを育てます。

武蔵高等学校中学校
校長 梶取弘昌
《編集部》

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