◆描きやすくて、イメージが膨らむノート
--最初に、「ソフトリングノート」の第一印象をお聞かせください。
平澤さん:もともとシンプルなものが好きなので、ひと目見て「シンプルでいいな」と思いました。無駄な装飾がないので思考の邪魔にならず、頭の中がフリーでいられる。自分でアレンジできるので、「ここからどのように使っていこう」というワクワク感もありますね。
--使用してみていかがでしたか。
平澤さん:普段から、思いついたときにすぐスケッチできるよう、ノートをバッグに入れて持ち歩いているのですが、リングノートはきちんと二つ折りにできるところが気に入って、もともとよく使っていました。リングが邪魔だと意識したことはなかったのですが、「ソフトリングノート」を使ってみると、「あれ? リングがやわらかいとこんなに使いやすいんだ!」と驚きでしたね。ストレスフリーで快適、使ってみないとわからない良さもあります。紙質も、ペンの滑りがよくてすごく描きやすい。どんどんペンが進んで、気がついたらいっぱい描いていました。
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◆小さいときから、「絵を描く人」になりたかった
--平澤さんがイラストレーターになりたいと意識するようになったのはいつ頃からですか?
平澤さん:幼稚園の頃には漠然と「絵を描く人になりたい」と考えていました。毎晩母が読み聞かせをしてくれたアンデルセン童話やイソップ物語の絵が好きで、その影響だと思います。絵を描く仕事といってもどんな仕事があるのかわからないので、身近なところで「絵本を作る人になれたらいいな」と思っていました。
美術展にもよく連れて行ってもらいました。マリー・ローランサンのほわっとして明るい世界はとても好きで、初めて見たときの衝撃は今でも覚えています。一方で、ミレーのような暗い雰囲気を持った絵も「こんな絵もあるんだ」と興味深かったですね。
あまり熱心に見ていたからか、「この子は絵が好きなんだろう」と思ったらしく母が絵画教室に通わせてくれました。先生は女性の洋画家でしたが、いつも好きなように描かせてくれて、どんな絵でもとてもほめてくれたんです。それでますます絵が好きになりましたね。
--「絵が好きな子ども」が「イラストレーター」になるまで、どのような道をたどったのでしょうか。
平澤さん:中学から高校生の頃には、イラストレーターになりたいと思うようになっていました。美術大学に行くつもりで受験の情報も集めていたのですが、それまで何でも好きにさせてくれていた両親が「大学だけは普通のところに言ってくれ」と。それで美大受験をあきらめ、普通の大学の経済学部に進学しました。でも、経済学にはまったく興味を感じられず、ラクロス部に入って体育会系女子になっていましたね(笑)。
ところが、大学3年になると友達は就職活動をし始めているのに、自分は何をしたいのかわからない。「何かしないとまずいな」と思っていたときに、セツ・モードセミナーという美術学校(セツ・モードセミナーは1954年に開校。デザイナーや芸術家を数多く輩出し、2017年4月23日に閉校した)を見つけました。大好きなイラストレーターさんもたくさんセツ・モードセミナーを卒業していました。授業は週3回なので大学とも両立できそうだし、授業料もアルバイトでなんとかなりそう、ここに行こう!と。
セツはユニークなことに入学試験がなく、くじ引きで入学が決まるのです。これまでちゃんと絵を勉強していない私にとって、これは大きな魅力でした。長沢節先生(セツ・モードセミナーの創設者。1999年没)は、「技術は後からでも学べる。大事なのは縁と運だ。縁と運があれば、あとは自分で切り開いていける」という考え方で、だから入学試験がなかったんです。そういうところにもとても共感しましたね。結局、好運にも1年目に入学できました。
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--まさに、運を持っていたんですね。セツ・モードセミナーではどのように学んだのですか?
平澤さん:入学してみたら、周囲は美大出身の人ばかりで、みんなすごく上手なんです。恥ずかしくて、いつも隅っこで隠しながら描いていました。だけど、毎日絵を描けることが楽しくて。どんどんと描いているうちに自分でもいい線が描けるような気がしてきました。友達にも「よくなったね」とほめてもらえると嬉しくて。それからは、「絵を描くって楽しい!!」と、スポンジが水を吸収するように勢いづいてどんどん描くようになっていきました。
◆旅が転機となった
--デビューはどのようにして?
平澤さん:有名な公募展に応募して入選して仕事を得ていくという人が多かったのですが、私は自信がなかったので、地道に売り込みから始めました。小さなカットを描く仕事でしたが、幸いにもすぐにお仕事をいただけました。小さな仕事でもこつこつと続けていくと、作品ファイルも増え、次の仕事も得やすくなります。高望みをせず小さな仕事から始めたのがよかったと思います。
--子どものときから憧れていた、絵を仕事にするという夢が現実になったのですね。
平澤さん:最初は夢がかなった嬉しさで、夢中で過ごしてきたのですが、3年くらい経ったときに、一生カット描きで終わるのかな、このままではいけない、と思い始めたんです。それで自分を見直すために旅に出ることにしました。
北欧を一人旅したのですが、本当に素敵な国で。刺激を受けたり、考えされられることがたくさんあって、スケッチもいっぱいしてきました。今でこそ北欧ブームとかありますが、当時はまったく知られていない。こんなに素敵な国のことを、ぜひみんなに知らせたい! という思いが強くなって、個展をしようと思い立ちました。
友人のカフェをギャラリーとして使わせてもらい、旅先で描きためたスケッチを作品に仕上げ、散文詩的な言葉も添えて、北欧で買ってきた雑貨とともに展示をしたのです。それが幸いにもカワイイと評判になり、見てくださったある編集者から、本を作りませんかというお話をいただいて。
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◆会話から化学反応が起こり、面白いものができちゃった
--それで出版されたのが、平澤さんの最初の本「おでかけ手帖 TOKYO Smile holiday」(情報センター出版局)ですね。その後も絵本やエッセイなど、次々と出版されて今に至るわけですね。
平澤さん:イラストレーターの仕事って、相手から「こういう絵を描いてほしい」という依頼があって、それに応えて描くというのが一般的だと思うのですが、私の場合は「こんなもの作りたい」と思いつきを人に話したら、相手も「それ面白いね」と答えてくれたり、意見をくれたり、会話のキャッチボールを繰り返すうちに化学反応がおこって面白い企画ができちゃった、ということが多いですね。
--「ソフトリングノート」のイラストも、そういう会話の中から生まれたそうですね。
平澤さん:はい。コクヨさんから、「この商品はこういう感じの人に使ってほしい」というイメージをいただいて、私からも「こういうふうにしては?」という意見を返して、キャッチボールをしながら頭の中の妄想を膨らませ、絵にしていきました。
たとえば、「ソフトリングノート ナチュラル」を使う人のイメージは、ベージュのスプリングコートを来た女性。デニムを履いていて、トートバッグを持った軽やかな雰囲気の人。いろいろなことに好奇心があって、雑貨が好きで、週末には吉祥寺あたりを散歩している。
「ソフトリングノート クリア」を使っている人は、しゅっとした、デキる女子。テイクアウトのコーヒーを持って、革のバッグにスーツを着てヒールの靴を履いている。会社ではカッコよくプレゼンをしたりしていて、会議のときに、アイデアノートとしてソフトリングノートを開いている。
「ソフトリングノート ビジネス」を使っているのは、丸の内で働くおしゃれな男の人。持ち物はすべて自分のお気に入りで固めていて、靴とかメガネなどの小物にもこだわりがある。
「ソフトリングノート カラフル」を使っているのは、元気はつらつの女性。職場のムードメーカーで話題が豊富。常に新しいものにアンテナを張っている。
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「ソフトリングノート ビジネス」「ソフトリングノート カラフル」を使う人のイメージイラスト
そんなふうに、どんどん妄想していきました。
--その妄想が、イラストとして形になったのですね。ノートひとつからそれだけ発想が膨らませられるのはすごいですね。今後はどんな活動をしていきますか。
平澤さん:絵本の文章も書いてみたいし、行ったことのない国を旅したい。これからも、「こんなことをしたい! これが面白そう!」という自分発信の仕事をしていきたいですね。
7月には京都で銅版画の個展を開催します。今、小説家の小川糸さんといっしょに本を作っていて、9月の発売と同時に原画展を開催する予定です。
--いろいろとご活躍、楽しみですね。最後に、「ソフトリングノート」をどんなふうに使ってほしいか教えてください。
平澤さん:男性でも女性でも、年齢も関係なくだれでも使えるシンプルなノートです。自由な発想で、ぜひ楽しく使ってください。
--ありがとうございました。
<取材を終えて>
どこかレトロで、ほのぼのとしたイラストが素敵な平澤まりこさん。ご本人も、ほのぼのした優しい雰囲気。
「自分が楽しくなければいい絵は描けない」から、常に楽しい気分で絵が描けるよう、仕事場はシンプルにキレイにしているそうです。道具もシンプルで思考を妨げないものを選ぶそう。まさに「ソフトリングノート」は、快適、思考を妨げない、楽しく描ける最高のツールなのですね。平澤さんのノートに細かく書かれたスケッチや覚書は、それ自体が作品になりそうなほど素敵でした。
実は筆者は美大出身。かつては「絵を描く仕事をしたい」と憧れる子どもでした。本当に楽しそうに絵を描く平澤さんを見て、私もまた描きたくなりました。