「新設校ブーム」時代に医師になった世代の子どもが受験期に
医学部受験者増加の背景にはもう一つ、大きな要因があります。
それは「医師の増加」→「医師の子どもの増加」→「医学部受験者数の増加」という図式です。
特に2000年前後以降に順次大学受験年齢に達したお子さんを持つ親御さんは、だいたい1970年代に医学部に入学し、80年代に医師となった方が多いのではないでしょうか。
その時期は、実は医学部が次々に新設された時期です。1970年に4校、71年に2校、72年には7校、73年にも5校、さらに79年までに15校が新設されました。医学部の募集定員はこの時期に大きく増えたのです。結果、医師数も増加を続けました。
医師の家庭では、自然に子どもが医学部を志望する率は一般家庭に比べ高くなるため、医学部志望者増加の要因として見逃せません。3人子どもがいれば、3人とも医学部を目指すことも珍しくありません。
これらの要因を総合した結果、少子化、募集定員の増加にもかかわらず、医学部志望者が増加を続け、医学部受験はますます難しくなっているというのが現実なのです。
医学部が「なぜ難しいのか」を知っておく
医学部受験は他の学部と違い、「独特」なところがあります。通常の理系のトップ校受験対策とは違う対策をとらないと、合格は非常に難しくなります。
詳しくは後述しますが、たとえば入学試験も、学力試験だけではなく、ほとんどの場合小論文と面接が加わるので、通常、入試で必要とされる学力だけでは合格できません。
だからこそ、文系再受験生でも不利になるとは限らず、場合によっては有利とも考えられるということです。
実際、「戦略」さえ間違えなければ、医学部は数学が苦手でも合格できますし、現役のときは合格にまったく届かなかった受験生でも、1年間正しい方法で勉強すれば合格は可能です。
そもそも「医師」という職業は、理系より文系的要素が強い職業とも言われます。
数学者を目指すわけではありませんので、医学部に進学するための「受験の数学」さえ突破してしまえばいいのです。
ところが戦略を間違えると、何年やっても合格できないことになりかねません。
まず最初にお話ししたいのは、「医学部受験」とは、いったいどういうものなのかを知っておくべきだということです。
医学部入試は難しいと言われます。けれど、いったい何がどれだけ難しいのか?
ここをきちんと整理しておきましょう。
いきなり「偏差値は?」、「倍率は?」、「模試がE判定でも受かるの?」、「面接で何を聞かれるの?」、「小論文の対策は?」、「入試問題の特徴は?」と次々と疑問が出てくると思いますが、情報をきちんと整理して、医学部受験の基礎を知りましょう。
(※本記事内の情報は2016年6月時のものです)
医学部合格完全読本
<著者プロフィール:田尻 友久(たじり ともひさ)>
医歯専門予備校メルリックス学院 学院長。大阪府出身。同志社大学法学部卒。銀行に入行後、複数の上場企業を中心とした企業グループの統括部門を経て、1996年から医学部受験にかかわり、2000年に私立医学部・歯学部受験を専門とするメルリックス学院を創立、学院長に就任し、現在に至る。予備校関係者でさえも想像に頼る部分が多い医学部入試について、全国の大学医学部から直接話を聞き、正確かつ最新の入試情報を得ている。毎年メルリックス学院から発行される「私立医歯学部受験攻略ガイド」は今や、受験生やその家族はもちろん、高校、塾、予備校でも医学部受験指導の必需品となっており、大学関係者からも高い評価を得ている。