算数から数学になってもつまずかない、中学さきどり学習のススメ<数学編>

 30年にわたって中学生・高校生に数学を教えてきた京華中学校の教頭、永見利幸氏が監修の「中学数学のさきどりが7日間でできる本」(KADOKAWA)より、小学生のうちから数学の基礎をしっかり学び、数学でつまずかないためのポイントを紹介する。

教育・受験 中学生
「中学数学のさきどりが7日間でできる本」(KADOKAWA)より
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 「算数」が「数学」になる。これだけで、警戒モードになってしまう新中学1年生も多いかもしれない。ただでさえ算数が苦手だったのに、さらに「数学」についていけるのだろうか?と、心配する保護者もいるのはないだろうか。

 「数学の面白さに気づける」「数学を好きになれる」ことが、数学を伸ばしていく第一歩。30年にわたって中学生・高校生に数学を教えてきた京華中学校の教頭、永見利幸氏によると、算数が嫌い・苦手だったとしても、中学校から伸びていく生徒には特長があるという。

 「中学数学のさきどりが7日間でできる本」(KADOKAWA)より、小学生のうちから数学の基礎をしっかり学び、数学でつまずかないためのポイントを永見氏の解説をまじえて紹介する。

最高の中学校生活は“数学”の学習から



 小学校で学習をした算数。数えることから始まって四則演算や面積など日常生活に関係あることを学びました。いよいよ中学校で数学を勉強することになります。

 長年、中学校・高校で数学を教えてきましたが、中学校に入学してくる生徒を見ていると、いろいろな生徒がいます。数学が得意な生徒、嫌いで諦めている生徒などなど。中には小学校の算数はあまり得意ではなかった生徒が中学校で数学が得意になることがよくあります。

 そんな中学校で伸びる生徒たちを見ていると、どうやら、伸びるためのきっかけがあるようです。それは、中学校の最初につまずかないで、いいスタートをきり、学習習慣をつけられたということです。

 これから中学校に入学するけれど、予習で何をやったらいいのかわからない人も多いと思います。入学してきた生徒たちから、こんな声をよく聞きます。

「中学校の数学ってどこが、算数と違うのだろう」
「何を勉強するのかな」

 などなど、さまざまな不安と期待をもっていたようです。

 中学校の数学で学習する内容は、どの分野も、中学校のみならず、高校3年間の礎ともなります。ですから、最初のスタートが肝心です。中学校への入学前に、早めの予習をして、数学の世界に足を踏み入れましょう。

 私が監修をした「中学数学のさきどりが7日間でできる本」は、小学6年生のお子さんが、少し余裕をもって、中学校の数学ってこんな感じというのがわかり、数学の学習に興味をもってスタートができるようにしています。まず説明をした後で、問題演習をして、理解を深められるように工夫をしてあります。この本などであらかじめスタートダッシュをきっておくと、中学校の授業で先生の説明を聞いても、すらすらと頭に入ってくるでしょう。

数学嫌いにならないために、知っておくべきこと



 「数学は考える学問。僕は考えることは不得意で、数学嫌い」などの声をよく聞きます。確かに、考えることは考えるのですが、その前に覚えることもあります。考えるのにも道具が必要で、道具の使いこなし方も理解しておく必要があります。繰り返しの学習で覚えるべきこともたくさんあります。「考える」ことも数学の勉強ですが、その前に約束を覚えなければならないこともあります。道具をそろえての仕事です。

 不得意だとか「できない」と思い込んでいるお子さんには、どうか、「問題をどのように解くのかある程度、暗記することも必要となり、解き方になれること」、「解法を覚えることも大切な学習法のひとつで、その道具の使い方をマスターしてしまえば、だれでもできるようになること」を、覚えておいてほしいです。

 現代の社会においては、いろいろな情報をうまくまとめ、予測し、実行することなど、多くの場面で数学が使われています。社会を支えるさまざまなことに、数学が根底で使われているといっても過言ではありません。数学的なものの見方や考え方は、これからの社会を生き抜くお子さんたちに必要であり、役に立つに違いありません。

算数から数学へのステップアップ



 「数学って難しそう」とか、「方程式を見ただけでちょっと引く」とか、「関数って?」とか不安な気持ちになるお子さんもいらっしゃるかもしれませんが、そんなに心配はいりません。

 いままで学習をした算数をもとに数式に翻訳して考えていきます。ただ、多少のルールがありますから、そのルールを覚えてやっていけば、どうにかなります。言葉、定理など覚えなければならないものはありますが、家庭での繰り返しの学習を定着させていきましょう。

 それでは、数学の世界をのぞいてみましょう。

 1 から順番に整数を加えていきます。たとえば、6までですと
 1 + 2 + 3 + 4 + 5 + 6 で21 ですね。
 9までですと45です。9 × 5 = 45ですので、最後にたした数9の5倍をすると1から9までの和の45がでてくることがわかります。ここで、表をつくってまとめてみます。

「中学数学のさきどりが7日間でできる本」(KADOKAWA)より

 ただ計算をするのは算数です。「最後にたした数の何倍かな」と思った瞬間に数学の世界に入り込みます。

 たとえば、6まででしたら3.5倍になっています。また、7まででしたら4倍です。
  6 → 3.5    7 → 4    8 → 4.5
 この3回分だけでもいろいろなことがわかります。

 3.5 は7の半分、4 は8の半分、4.5は9の半分と考えていると
  6 → 7/2    7 → 8/2   8 → 9/2

 分子をよく見ると6までですと7、7までですと8、8までですと9になっています。
 最後にたした数に1をたしています。
 1 + 2 + 3 + 4 + 5 + 6 は、6に1をたす。7になる。7を2でわる。この数を最後にたした数6にかけると1から6までの和がでてきます。

 つまり、最後にたした数に1をたして2でわれば何倍すればよいかがわかります。15までたすと、(15 + 1)÷ 2で8倍とわかりますから、その8を15にかけて、1から15までの和は15 × 8で120です。たし算をしなくてもかけ算で答えがだせるなんて不思議ですね。

 では、数を大きくしていきます。100 までたすときは、101 ÷ 2 = 50.5 になり、100× 50.5 で1 から100 までの和は5050 になります。一般的に公式ができそうですね。

 1 + 2 +……+○      (○+ 1)÷ 2 → この数を○にかける

「中学数学のさきどりが7日間でできる本」(KADOKAWA)より
 タイルを使って説明します。2 までたすと1 + 2 で、タイルは3枚です。ここで、さらに同じ形のタイルを合わせます。するとタイルは横2枚縦3枚の長方形にならぶので2 × 3で6枚になり、この6の半分、つまり6 ÷ 2がもとのタイルの枚数ですね。

 結局、2 × 3 ÷ 2 で2枚までの和は2を1.5倍しています。
 1枚から4枚までの和を求めるときは、タイルは4 × 5で20です。20を2でわれば10となります。

 4 × 5 ÷ 2 でこれは4 × 2.5と同じです。2.5は最後にたした数の4に1をたして2でわれば求まります。

 このように、具体的なことから出発して類推しながら、文字や式を使って法則を考えて、公式や定理を導き出し、そのことがあっているのか説明することが、数学です。

 1から順番にたしていく計算は小学校で学習した算数です。数学では、算数をもとにしていろいろな考え方を学んでいきます。

 たとえば、数学では1本の数直線で場所を表しています。これを、2本、3本と増やし、平面から空間へと拡張していきます。さらに、今まで学習していた数だけでは、どうしても方程式が解けなくなり不都合が生じてしまうことがあります。そんなときは、数を拡張します。

 この数を拡張することも、類推していくことも、直線から平面、空間へと拡張していくことも楽しい数学の世界のひとつです。こういった数学の楽しさ、面白さに気づいて、中学校からさらに伸びていけるといいでしょう。

中学数学のさきどりが7日間でできる本

発行:KADOKAWA

<監修者プロフィール:永見 利幸(ながみ としゆき)>
 京華中学校 教頭。中学生・高校生に数学を教えて30年余り。「教科書に書いてなくても大切なことを、しっかり教える」をモットーに、生徒が数学に興味を持って学習意欲を高められることを目標として、多くの教材を開発している。共著書に「精解中学数学 代数編」「精解中学数学 幾何編」(いずれも学研)、監修書に「中1数学をひとつひとつわかりやすく。」「中2数学をひとつひとつわかりやすく。」「中3数学をひとつひとつわかりやすく。」(いずれも学研)などがある。

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