千葉県柏市柏の葉。東京大学生産技術研究所付属千葉実験所(柏キャンパス)で、自動車メーカー各社のキーパーソンたちが見つめるなか、ヤマハ製ゴルフカートベースの電動小型低速車両4台が試験路を走る。
3月23~24日に開催された自動運転車両競技イベント「Japan Automotive AI Challnege 自動運転AIチャレンジ」の光景だ。主催は公益社団法人自動車技術会。後援は経済産業省、東京大学生産技術研究所、東京大学モビリティ・イノベーション連携研究機構、日本自動車工業会。
冒頭の言葉は、自動車技術会 坂本秀行会長(日産自動車)のひとこと。「AIやITの技術者が不足しているなか、若いエンジニアをどう育てていくかが課題。今後もこうした大会を盛り上げていきたい」と意気込む。
◆経産省AIエッジコンテスト上位者4チームがガチンコ勝負
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初開催となった自動運転AIチャレンジに参戦したのは、画像認識アルゴリズム精度競技「経済産業省主催AIエッジコンテスト」のランキング上位4チーム。筑波大学大学院チーム「kaggler-lya」、中国 浙江大学チーム「WARRIORS」、東京大学大学院チーム「MTLLAB」、会社員チーム「r488it」(特別枠)。
競技車両は、自動運転プラットフォーム搭載電動小型低速車両「アカデミックパックPRO」。このクルマは、ヤマハモーターパワープロダクツ、ティアフォー、マクニカが共同で開発し、ことし1月に提供を開始したモデル。4チームは、実装したアルゴリズムを調整しながら、テスト走行を経て2種類の競技に挑む。
◆人・信号・車両をちゃんと認識しているか?
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今回設定された競技は、シナリオ完走部門と制御精度部門の2種類がある。シナリオ完走部門は、右左折をともなう試験路を自動運転で走らせる。チェックポイントは次の3点。
ポイント1:横断歩道に立つ歩行者を認識し、車両を自動停止させる。歩行者が去った後、車両の走行を自動再開させる。
ポイント2:駐車車両を認識し、車両を自動停止させる。駐車車両が去った後、車両の走行を自動再開させる。
ポイント3:赤信号を認識し、車両を自動停止させる。青信号になった後、車両の走行を自動再開させる。
◆停止線にピタリと止められるか?
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また、制御精度部門は、競技車両を既定のコースに従って自動運転させ、所定の場所に停車させる位置精度を競い合う。まず交差点で赤信号を認識し、車両を自動停止させる。そのさい車両の前輪を停止線にできるだけ近づけて停止できるかがポイントだ。
距離の測定は、停止線と左前輪タイヤ中心線の間を測る。停止線をオーバーランしたら失格で、各チーム2回までトライでき、よりよいリザルトを比較し最終的な優劣を競う。
◆各チーム、挙動がまったく異なる結果に
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シナリオ完走部門では、チーム「r488it」が歩行者と駐車車両の認識を成功させるも、信号を正しく認識できず、初トライで完走できなかった。そのほかの3チームもトライするも、1日目はどのチームも完走できなかった。2日目は、最初の走行でチーム「MTLLAB」が歩行者・駐車車両・信号の認識をすべて成功させ、初めて完走。そのほかの3チームは完走できなかった。
また制御精度部門は、オーバーランで失格となってしまった2チーム(MTLLAB/kaggler-lya)、停止できずに失格となったチーム(WARRIORS)もあったなか、停止線と左前輪タイヤ中心線の間が最も近かったのが、r488itの29.5cmだった。
◆そして栄えある第1回 自動運転AIチャレンジの勝者は?
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初めて開催された自動運転AIチャレンジ。その勝者は、2部門とも東京大学大学院チーム「MTLLAB」。実際の成績トップは、会社員チーム「r488it」だったが特別枠参加ということで、順位から外されたかたち。
シナリオ完走部門 賞金30万円と、制御精度部門 賞金20万円を獲得した東京大学大学院チーム「MTLLAB」は、「制御精度部門の3回目(参考記録)のトライで、距離0cmというぴったり止められたときはうれしかった。これからも、こうした競技大会で技術アップしていきたい」と話していた。
また、この大会後には、「AIと自動運転が切り拓く未来のモビリティ社会 AIはモビリティ社会をどう変える? 課題は?」と題したパネルディスカッションを開催。参加者たちは、人工知能技術研究者や自動運転技術開発者たちのリアルなトークに聞き入っていた。