2019年8月2日、都内で「夏休み、子どもとデジタルゲームの上手な付き合い方」をテーマにイベントが開催された。セミナーではパネルディスカッションや、ゲーム体験、ワークショップが開かれ、参加した親子は一様に満足したようすだった。
セミナーのようすや、イベントに参加した東京大学 大学総合教育研究センターでゲーム学習論が専門の藤本徹先生、現役の東大生で謎解きクリエイターでもある松丸亮吾氏の話を通じて、子どものデジタルゲームとの付き合い方や、親のスタンスについて考えていきたい。
デジタルゲームも必要な「遊び」
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藤本徹先生と松丸亮吾氏によるパネルディスカッションで、イベントは開始された。
藤本先生が用意したテーマは「ゲームのイメージについて」「そもそもゲームってどんなもの?」「ゲームは楽しいのに学校は楽しくないのはなぜ?」「ゲームの良いところはどんなところ?」の4つ。時間の関係もあり、その中の「ゲームは楽しいのに学校は楽しくないのはなぜ?」「ゲームの良いところはどんなところ?」の2つのテーマが選ばれ、藤本先生と松丸氏が意見を交わした。
ゲームはさまざまな「学び」の入口
「ゲームは楽しいのに学校は楽しくないのはなぜ?」のテーマでは、藤本先生はゲームについて「どんな種類のゲームにも"ゴール:達成目標""ルール:条件""フィードバックシステム:結果の判定""自発的参加:自分がやりたいから参加する"という4つの共通点がある。この4つの要素は学校の中にすべて詰まっているのに、なんでこれが楽しくないのか。ゲームには参加したくなるようなストーリーや世界観があり、負けたり挫折したりしても、繰り返しやりたくなるように作られている。そこに"インタラクティブ=相互作用"がある。ところが学校は、ゲーム的な要素は備えているのにアプローチが逆で、やりがいを与えるということはあまり考えられていないのが問題」と指摘。
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松丸氏は「確かに僕自身のことを振り返ると、僕の中では、将来やりたいことというのがすでにあって、それに到達するためには大学に行かなければならないということがわかっていた。勉強をする意味がわかっていたからこそ、自分から勉強をしていたんだと思う。また、僕は母親から、間違えたところは悪いところではなく、むしろ、できないことがはっきりしたんだからそれをできるようにすればいいんだよと言われて育った。できなかったことはむしろチャンスだよ、できないところがわかったのだから、と言われ続けたのも大きいと思う」と述べた。
それに対し藤本先生は「それは、ご家庭でゲームと学校での学習の間を補ったから、学校の世界観をゲーム的世界観で捉えて活動できたということ。お子さんの性格や特性に依る部分ではあるけれど、親御さんたちはそのお子さんに合う、勉強するというアクションがどのような結果につながるのかというストーリーを作り、自発的に行動できるよう導くことが大事」と話した。
「ゲームの良いところはどんなところ?」のテーマで藤本先生は、シンガポールの大学で行われた体を動かすボーリングのゲームでの実験の結果について、「世代を超えて一緒にゲームをすることで仲良くなっただけでなく、自分とは異なる世代に対する印象も良くなった。何かを一緒に楽しむことで、世代間交流ができる」と、コミュニケーション力が高められることについて言及した。
そして「アクションゲームやパズルゲームは何も考えずにプレイすることが多いと思うが、無心に打ち込むことで気分転換できる作用もある。ほかにも、ゲームはいろいろな学びの入口になる。たとえば歴史ゲームで歴史上の人物に興味をもつようになったり、チーム対戦では仲間と戦略を練ったりするようになる。ホラーゲームも、恐怖心やプレッシャーの高い状況下で自分の感情をコントロールできるようになる。このようにさまざまなゲームが、さまざまな効果をもっているという調査結果が出ている」と続けた。
これを受けて松丸氏は自身の体験をもとに「大人になると、今、目の前にある問題をどうやって解決したらいいかを自主的に考えなければならない。僕はストラテジーゲーム(勝利のために熟考し計画を練ることに焦点を置いたコンピューターゲームのジャンルのひとつ)が好きで、それで自主性を身に付けられたと考えている。公式に当てはめても解決できないものは、自分で試行錯誤して解決しよう、と思うようになった。何をやっても学びの入口になるゲームは、僕の思考力を養ってくれたと思っている」と語った。
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さらに、家庭内のルール付けについても話が及んだ。松丸氏は「僕が小学生のころ、家では1日3時間勉強を終えなければゲーム機を触らせてもらえなかった。3時間勉強さえすれば、その後はいくらでもゲームができる。そのうち、毎日勉強をやっていると成績も上がり、次第に勉強そのものが楽しくなった」と話すと、藤本先生は「松丸さんの親御さんはものすごくルール付けがうまい。お子さんの性格や向き不向き、興味に合わせて、そのルール付けも楽しくやれるといい」とアドバイスした。
そして藤本先生は、「夏休みはお子さんがゲームをやりすぎていると気にされる方も多いと思うが、そんなに心配しなくてもいいと思ってほしい。なかなか外で遊べない環境になってきている今、昔は外遊びで得られた経験を、ゲームで体験することができるようになっている。ほかの遊びと区別しないでゲームと接し、楽しみながらお子さんと接するのがいいと思う」と締めくくった。
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ゲームに没頭することは決して悪いことではない。プラスの効果も得られ、さまざまな学びの入口であるということを示唆した内容で、会場のあちこちでうなずく保護者の姿が見られたのが印象的だった。
一緒にデモンストレーション
今回のイベントでは、Nintendo Switchソフト『ポケットモンスター Let's Go! ピカチュウ・Let's Go! イーブイ』を用いたデモンストレーションと、ゲーム体験も行われた。松丸氏が会場内に入ると、子どもたちから歓声が上がり、盛り上がった雰囲気の中、ゲームの説明が始まった。
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『ポケットモンスター Let's Go! ピカチュウ・Let's Go! イーブイ』は、2016年に登場した『ポケモン GO』の人気を受け、初めてポケモンのゲームに興味をもった人や、低年齢で自分のスマートフォンがなく『ポケモン GO』を遊べない子どもに向けて開発された。
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テーマは「みんなが楽しく、一緒に遊べる『初めてのポケットモンスター』」。松丸氏はまず冒頭で「これからゲームの説明をしますが、大事なのは楽しんでやること。こうやらなければいけないというものではありません。強制されるとゲームの楽しさを奪ってしまうので」と前置きをしたうえで、ゲームの説明に移った。
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登場するポケモンのタイプや、どこで何をするとめずらしいポケモンに遭遇できるかなどの話をしながら、松丸氏は「学びのポイント」についても子どもたちに伝授。状況に応じて自分の戦略を使い分ける必要性など、ゲームの世界に限らず、実際に生活をしていくうえでも必要となる視点を織り交ぜながら説明。また、パネルディスカッションでも話のあったインタラクティブ=相互作用を体現するべく、子どもたちに積極的に意見を出してもらったり、質問を投げかけるシーンもあった。
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説明の後は子どもたちお待ちかねのゲーム体験。あっという間に操作を覚えた子どもたちはゲームに没頭。各テーブルからは歓声が上がり、会場内は大盛り上がりとなった。普段、テレビの向こう側にしか見ることのできない「お兄さん」と一緒にゲームをした記憶は、子どもたちの「夏休みの思い出」の一幕として、刻まれたに違いない。
「楽しい」が「学ぶ」につながる
ほんの数分で没頭し、楽しんでいる子どもたち。そんな我が子の姿を見て、保護者の方々はどのように感じたのだろうか。
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4年生の女の子と2年生の男の子のきょうだいのお母さんに話を聞くことができた。
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「きょうだい一緒に楽しんで、力を合わせてやっているのもいいですよね。デジタルゲーム機は家にあるんですが、2人で一緒にやることはあまりありません。パネルディスカッションで、ゲームでコミュニケーション能力が鍛えられるというお話もありましたし、ポケモンは子どもも知っていて、内容的にも買い与えるのに安心感がある。夏休みは長いですし、暑いと外に連れ出すのにも躊躇してしまうから、こうやってきょうだい仲良く遊んでくれるなら購入を考えてもいいかもしれないですね(笑)」。
また、3年生と年長さん姉妹のお父さんは次のように語ってくれた。
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「画像が凄くリアルなのに驚きました。すでにほかのポケモンのゲームをもっているんですが、暴力的なシーンもなくやらせていて安心できます。実は妹のほうはゲームを通じてカタカナを覚えてしまったんです。松丸さんが説明していたようなポケモンのタイプによるこうげきの強弱などは家にあるゲームでも覚えていて。だから、ゲームが学びにつながるというのは実感しているところでもあります」。
パネルディスカッションでの話はもちろん、実際に子どもがゲームを体験する姿を通じて、親子で「ゲームとの上手な付き合い方」を体感として落とし込めたのではないだろうか、と感じられるイベントだった。
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