東大2回合格の医師が教える!「脳」率アップな勉強法その1

 「偏差値アップには医学的根拠が必要」。東大に「2回」合格した医学博士・福井一成氏の言葉である。この記事では脳の働き、記憶のメカニズムを受験勉強に応用する利用法を紹介する。

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右脳と左脳
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 「偏差値アップには医学的根拠が必要」。東大に「2回」合格した医学博士・福井一成氏の言葉である。この記事ではKADOKAWA発行、著・福井一成氏の『改訂版・東大に2回合格した医者が教える脳を一番効率よく使う勉強法』より、脳の働き、記憶のメカニズムを受験勉強に応用する利用法を紹介する。

受験勉強は左脳をメインに使う!



認知症の患者さんが教えてくれた脳の働き



 まずはじめに、脳の構造と働きについてお話しします。脳の正しい使い方を知らないと、受験勉強もスムーズに進まないからです。

 私は老人ホームで10年以上にわたり、認知症の患者さんを1000人以上診察してきました。ひと口に「認知症」といっても、患者さんによって脳のどの部分にダメージがあるかは異なります。

 たとえば、ダメージが海馬なのか側頭葉なのか(あるいはその両方か)、前頭葉なのか、左脳か右脳なのかなど、脳の部分によって知的障害の種類や程度、学習能力の低下度も違います。

 そうした患者さんを診ていて、「脳のどの部分がどういう知的活動をしているか」が、実感としてわかってきました。別の言い方をすれば、「どういう知的活動(=勉強)をするときに、脳のどの部分を使えばいいか」「どの科目のとき、脳のどの部分を使えば効果的か」がわかったわけです。

 1つ具体例を挙げましょう。受験界でよく話題になるのが、数学は「暗記」科目なのか、それとも「思考力」を鍛えて解く科目なのかということです。実は数学は、考えて解く科目ではなく、暗記科目なのです。それを教えてくれたのが、認知症の患者さんでした。

 脳のダメージ部分と、その患者さんたちの計算テストを比較したところ、暗記力が衰えた人は計算力も衰えていました。つまり、「(思考力はあるものの)暗記力が衰えると計算力も衰える」ことから、数学は暗記科目といえるのです。

右脳をもっと活用しよう



 脳には大脳と小脳がありますが、運動に関係しているのが小脳で、受験勉強に関係があるのが大脳です。大脳は、まん中でくびれていて左右に分かれており、左半分が左脳、右半分が右脳です

 地球は赤道を境に北半球と南半球に分かれていますが、同じように左脳・右脳を「大脳半球」と呼ぶこともあります。右脳より、言葉や文字の左脳のほうが優れていると考えられていたため、左脳を「優位半球」、右脳を「劣位半球」ということもあります。

 目・耳・鼻は左右とも同じ働きをしているため、昔は左脳も右脳も同じ働きをしていると考えられていました。しかし、いまから50年ほど前に、アメリカの神経心理学者ロジャー・スペリーによって、左脳と右脳は別々の働きをしていることが判明しました。

 スペリーの研究は、次のようなものです。当時、ある病気の治療として左脳と右脳のつながった部分を切断する(=分離脳)手術が行われていました。その患者たちは、日常生活は普通に送れますが、ときたま何かを見逃します。それに気づいたスペリーは、分離脳の患者の左前と右前に、文字または絵のいずれかが映るスクリーンを1つずつ置きました。

 つまり、「左脳に文字を見せる」「左脳に絵を見せる」「右脳に文字を見せる」「右脳に絵を見せる」の4パターンの実験です。その結果、「左脳は文字はわかるが、絵はわからない」「右脳は文字はわからないが、絵はわかる」ということが判明したのです。「文字がわかる左脳は優秀だが、文字がわからない右脳は劣っている」ということで、左脳を「優位半球」、右脳を「劣位半球」と呼ぶようになったのです。

 左脳には、言語的な役割、つまり、言葉を読む・書く・聴く・話す働きがあります。たとえば、教科書や参考書を目で読んだり、英文読解のテキストを口で音読したり、学校や塾の先生の講義を耳で聴いたり、授業中にノートを書いたり、試験の答案を手で書くなどは、すべて左脳の働きによります。つまり、受験勉強は左脳で行っているのです。



 一方、右脳には非言語的な役割、たとえば、絵・写真・図などの画像を目で見たり、雨の音や動物の鳴き声を耳で聴いたりする働きがあります。カラオケの音楽や歌詞のない音楽も、右脳で聴きます。

 受験勉強で右脳を使うのは、日本史や世界史の資料集の写真や絵、地理の地図帳やグラフ、生物や化学の資料集のイラストや写真などです。左脳に比べて、右脳を使った受験勉強はあまりしませんが、これは非常にもったいないことなのです。なぜなら、右脳の記憶力は左脳の10倍以上もあるからです。

 もちろん、右脳は言葉を使えませんから、左脳が言葉を暗記するのと同時に、その言葉と関係のある画像や音を右脳で暗記すればいいのです。

 たとえば、日本史や世界史の「マンガ参考書」を使って、セリフ(=歴史用語)とマンガ(=人物)を同時に覚える。あるいは、教科書の内容を音読してICレコーダーに録音し、それを聴いて勉強する。つまり、左脳は言語として暗記し、右脳は「聴こえたまま」を音として暗記するのです。

 左脳と右脳の話は、以上です。

側頭葉と海馬が偏差値アップの鍵



 次は、脳の構造をもう少し詳しく説明しましょう。大脳は、いろいろな部分に分かれていることはすでにお話しました。

 それぞれ別の役割がありますが、受験勉強に一番関係するのが側頭葉です。ここに、過去の記憶(=暗記してから1か月以上たった知識)が貯えられています。ちなみに、暗記してから1か月以内の知識は、海馬に存在します。海馬は大脳の一部ではなく、大脳のもっと奥深くにある大脳辺縁系の一部です。

 側頭葉や海馬には、地歴や公民などの暗記科目はもちろん、英単語・英熟語・英文法の知識、評論文用語・古文単語・漢文の句法、そして数学の公式や解法パターンなどが貯えられています。この、側頭葉と海馬にどれだけ多くの知識が存在するかが、偏差値と大いに関係するわけです。

 記憶という重要な役割を持っている海馬は、左右に1つずつあり、直径1センチ・長さ5センチの小指のような形です(名前の由来は、ギリシア神話の海の神ポセイドンが乗っている怪獣)。そのすぐ近くに、直径1センチのハート形をした扁桃核があります。別名を扁桃体ともいいますが、カゼをひいたときに赤く腫れる扁桃腺とは別ものです。


改訂版 東大に2回合格した医者が教える 脳を一番効率よく使う勉強法

発行:KADOKAWA

<著者プロフィール:福井 一成>
 医学博士。開成中学・開成高校を経て、東大の文2に入学。文2の在学中に、記憶のメカニズムや効率的な勉強法を身につける。その効果を確かめるため、10月に仮退学しわずか4ヶ月半の受験勉強で、東大の理3に合格した。東大医学部を卒業後は、医師として勤務しつつ、勉強法や脳科学に関する著書や雑誌記事を執筆。医学的根拠のある科学的勉強法を受験生に薦めている。現在は老人ホームの施設長・理事。

《編集部》

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