【中学受験2021】どうなる入試、休校中の勉強は? 小川大介先生に聞いた

 「かしこい塾の使い方」主任相談員で中学受験指導のカリスマ講師である小川大介先生に休校期間中の悩みの解決のためのヒントを聞いた。

教育・受験 小学生
インタビューは会議ツール「Teams」を使って実施した。学校や塾でもこうした会議ツールを利用した双方向授業が始まっている
  • インタビューは会議ツール「Teams」を使って実施した。学校や塾でもこうした会議ツールを利用した双方向授業が始まっている
 新型コロナウイルス感染拡大に伴い3月に始まった全国一斉休校期間も、2か月になろうとしている。そんな中、大手進学塾も休講を余儀なくされており、特に受験生をおもちのご家庭ではいろいろと悩みを抱えていることだろう。

 「かしこい塾の使い方」主任相談員で中学受験指導のカリスマ講師である小川大介先生のもとにも多くの悩み相談が寄せられているという。小川先生に、悩み解決のためのヒントを聞いた。

8割の家庭は勉強ができていない



 --「子どもの今の学習状態が、ほかの子と比べて進んでいるのか遅れているのかわからず不安です」という悩みが多いようですが、小川先生はこの状況をどのようにご覧になっていますか。

 例年で言えば中学受験生にとっての3月、4月というのは、「試金石」ともいえる期間です。というのはゴールデンウィークの時期というのは多くの塾で特訓講座が開始され、勉強のペースを徐々に上げていく時期ですね。自分のテストの正答率や勉強の進み方を塾の中で、ほかの生徒と比較をしながら、どこまで頑張れば希望に近づけそうか確認をしていくのです。

 ところが今年は、学校のみならず塾も休講している状況下にあり、他人との比較ができない。与えられた教材を自分たちでこなさなければならない。私たちは普段から申し上げているのですが、塾の宿題というのは100%こなすということは到底無理で、ありえない。

 今、取捨選択の方法を知らないために、宿題を100%やらせようとしている家が続出しているはずです。しかも、休校期間で家にいるため、どこまでもやれるという気持ちに陥りやすい。そこで顕在化してきたのが、「頑張りすぎ問題」です。

 保護者の方もそうでしょうが子どもたち自身も、自分が頑張れているのかどうか、ほかと比較ができないので確認ができなく不安な状況にあるのです。そして悩みとしても寄せられていますが、「自学自習できるタイプの子は休校期間中にものすごく学力を伸ばしているだろうから、差がついてしまっているのではないか」という、保護者の焦りにつながっています。

 持ち時間が10時間あるとして、その100%を勉強時間に充てようとするのはありえないと、保護者の方は考えてください。子どもの学習量には当然限界があります。実際、私が相談をお受けした方の中にも、勉強をやりすぎて燃え尽きの傾向が出てきている子がいました。今からこれでは早晩、子どもは潰れてしまいます。

 逆に、周りとの比較ができないがゆえにどれだけ頑張るべきかの基準がわからず、ずるずると時間を過ごしている子もいます。勉強のペースを上げられずレベルアップができないのですね。言い換えれば小学校5年生の感覚のままなのです。割合的には圧倒的にこちらのタイプの子が多いですね。

オンライン授業は塾も手探り状態



 --大手の塾ではオンライン授業に切り替えているところもあります。

 確かに、大手の進学塾でいえば早稲田アカデミーはもともと家庭とのコミュニケーションを密にとっている塾で、いち早く双方向型授業を実現しており、アシスタントと一緒に生徒のフォローも行い、見えやすい工夫なども凝らしているようです。SAPIXや日能研は以前から一方向型の動画配信を行っていますが、近々、双方向型授業にチャレンジするようです。四谷大塚は動画配信のほか、担当講師によるリモート指導も順次始めているようです。関西だと、浜学園はもともとオンライン授業を行っていますが、希学園や馬渕教室も3月からオンラインの授業対応を始めました。

 ただしまだ、子どもの学習の定着度を上げていく施策や、保護者の心理的不安感を解消するまでには至っていないところが多いようです。

 そういう中では、希学園のオンライン指導は一歩進んでいるといえます。希学園は学習を丸抱えするスタイルの塾ですが、オンライン対応でもその方針を崩していません。子どもたちに家庭での学習ペースを崩させないように、午前中からオンライン自習室を設置し、決まった時刻に生徒を参加させています。ただ単に課題を渡して学習は家庭任せとなっている塾が大半である中、学習リズムのチェックにも踏み込んでいるのは、私が聞いている限り希学園だけです(※編集部注:話中の希学園は関西。首都圏も順次対応の予定)。

 --そうした授業を受けていても、子どもたちは感覚を切り替えられないということでしょうか。

 先に言ったとおり、この時期というのは周りとの比較の中で自分の位置を確かめていくものなのです。いま家庭が置かれている不安感に寄り添うなら、集団塾はただテキストやテスト問題を家庭に送るだけではなく、昨年の今の時期のテスト問題と正答率データも渡すなどして、比較基準をもっと丁寧に出してあげてほしいですね。ご家庭の今の悩みを解消していくには、塾側がどこまで説明責任を果たせるかにかかっているというのが私の考えです。

 --「塾のオンライン授業が上手く生かせない」「つまらない、すぐに飽きる、よくわからない」といった悩みが実際にあるようです。

 オンライン授業について言及すると、教室での対面での指導とオンラインでは、まったく質が異なります。「オンライン指導」について、日ごろ教室で行っている授業を録画して動画配信すればOKと思っている塾が多いと思いますが、これではサポートがまったく足りません。双方向をうたっているオンライン授業であっても、です。

 オンライン授業は、子どもの側からしてみれば心理的には1対1なのです。たとえ双方向授業であったとしても、先生側から見て1対多人数でも、子どもの見る画面は先生中心です。そして、たとえば誰かが質問をし、その子に対応をするとなると、画面上では先生の注意は自分からそれてしまい放っておかれることになるわけです。すると子どもたちの注意力は散漫にならざるを得ません。

 オンライン授業をまじめにやろうとすると、受け手に何をどう渡すかという、事前の情報のやり取りや指導中の指示の仕方、次のアクションがわかりやすくなる方法というのが大事になってくるのです。しかし現状では、そこまで研究できていない塾が多い印象です。

負担を軽くする3つのポイント



 --「動画授業をうけて宿題に取り組むにも、親が教えるには限界がある。授業のサポートをする必要もあるので負担が大きい」といった声も寄せられています。

 はっきり言って、保護者をフォローする姿勢と意識についてはどの塾も足りていません。保護者の不安解消やケアは、本来は塾がもっと頑張らなければならない部分ではないでしょうか。そこがないがしろにされている部分があるため、家庭に負担としてのしかかっているのだと思うのです。

 そうした悩みを解消するには3つのポイントがあります。

 1つは、これまでうまくいっていなかったことは一旦忘れる。遅れた分を取り返そうするから翌日の課題が増えてしまい、やる気をなくしてしまうのです。リセットして今の地点から再スタートを切ることです。

 2つめのポイントは、1日の学習の時間を絞る。午前中は2時間、お昼を食べてから、夕方までに2時間、そして夜に2時間、という風に、子どもが「長い時間だけれどギリギリ頑張れる」時間に区切る。1日分の長い時間があると思うからだらだらしてしまうのです。もちろん課題も1日分を見せると多いと感じてしまうから、午前中の課題はこれだけ、夕方はこれだけと分けて、ひとかたまりを絞る。こなす学習内容も絞る必要があります。きついけれどももうちょっと頑張れそうという目標を「ストレッチ目標」といいますが、こうした、ちょっと厳しいけれどやれそうという見通しの立つ量というのは、人間は頑張って到達できるものです。

 3つめはとにかく褒める。こまめに褒めてあげてほしいのです。承認すること。これをいつもの2倍から3倍やったほうがいい。実はこの休校期間中、幼児返りのような状態になっているお子さんがいます。不安心理から引き起こされている現象なのですが、多かれ少なかれどんな子どもたちも、今のこの状況は異常なものであると不安を感じているわけです。ですので、お子さんの自己肯定力を高めるためにも、普段以上に褒めてあげてほしいと思います。

 見過ごされがちですが、子どもたちにとってオンライン講義というのは、通常の教室授業よりもずっとエネルギーが必要とされるもの。目の負担も大きく、脳が疲れやすいようです。

 そこで、録画動画(一方向型)の場合は止めながら観る。そうしながら理解と疲労度のバランスを見ながら受けると良いと思います。

 双方向型は、途中でストップしたり巻き戻したりすることができないため、授業の前にざっとテキストを見ておいて、ここはしっかり聞いておきたいなどの見通しを立ててから臨むようにしたほうがいいかもしれません。また、保護者の方は授業のときにどの問題でお子さんが困っていたか状況を記録しておくと、その後の対策もしやすいでしょう。

 こうした状況の中、学校の宿題をやってオンラインで塾の講義を受け、課題を全部こなし、そのサポートも家庭で行うなんて、子どもも保護者も全部できるわけがない。各単元の基本の問題が押さえられており、応用問題が1問でもできていれば単元を理解していると割り切るぐらいでいいでしょう。保護者の方は不安だとは思うのですが、この時期は手がまわりきらなかったところは切り捨てる勇気をもちましょう。

塾をうまく使う



 --とはいえ、できなかったところをすっぱり切り捨てるのは難しいと思われます。切り捨て方がわからない場合、親はどうしたらよいでしょうか。

 塾に通っているご家庭でしたら保護者の方にはちょっと頑張っていただいて、塾に相談しましょう。無理してご家庭で抱え込むのではなく、塾に電話をかけるのがいいのではないでしょうか。ただこうした状況下で、塾の先生方も対処で忙しいと思われますので、事前に要点をまとめること。この問題ができないけれどいつまでに身に付けたらいいのか、宿題の中で優先してやるべきなのはどれなのかなど、核心のある質問なら先生も端的に答えられます。

 あとは、しっかりと食事の時間を確保してください。

 その時間でゆっくり子どもと会話をして、勉強の内容やどこができなかったかなどを聞いてあげるのです。最初のうちは質問を重ねるようにして保護者の側が丁寧にヒアリングしていきましょう。そのうち子どものほうも慣れてきて、自ら報告できるようになります。そうすると、塾への確認もしやすくなります。

 --「解けない問題があったときにそれをどれくらい気にすべきか加減がわからない」といった声もあります。

 無理なものは無理とあきらめることも必要です。今理解できるものをしっかり身に付けさせたほうが良いと思います。

 これが4年生や5年生の今の時期だと、読み聞かせが効果を上げることもありますので試してみるといいでしょう。6年生でしたら、前の学年の内容に戻って基本を押さえるのが効果的です。

 --生活リズムがくるってしまった、というお悩みも寄せられています。

 これはとにかく、朝、起こすしかない(笑)。

 物理的な方法としては、日の光を浴びさせること。世の中には便利なグッズも登場していて、「太陽光目覚まし時計」という、時間を追うごとに光が強くなって、その光にあたることで目覚めさせるというものがあるので、こうしたものを活用するのもひとつの手です。

 もうひとつは、前日の夜のうちに、翌日起きる目的意識をもたせることです。朝はお手伝いをしてほしい、といった理由でもいいです。起きられない子は、二度寝をしてしまうから起きられないのですね。二度寝をするのは、起きる理由がないからなのです。ですから、前日のうちに起きるための計画と目的意識とを作っておきましょう。

今年度は「等身大」の入試に



 --最後に入試に向けたアドバイスをお願いします。

 「取り返そうと思うな、入れられるところを入れろ」ですね。

 何を入れるかというのは、今の時期におさえておかなければならない単元を中心に考えると良いです。今押さえておかなければ致命的になる単元は、あらかじめ塾で聞いたり、検索をすればヒントが出てきます。

 保護者も子どもも、周りとの比較ができずに焦る時期だと思いますが、自律して勉強のできる小学生はほんの数パーセント。無視できる範囲です。ですから気に病まないことです。できないことをご家庭の責任と思わないでほしい。特に日中、一緒にいる時間の長いお母さんが、このままでは潰れてしまいます。

 正直なところを申し上げると、8割のご家庭でうまく勉強ができておらず、前年比で言ったら平均的な学力は下がると思われます。ですが、入試の結果というのは相対的なものです。8割ができていないのですから、できないことを気にする必要はありません。

 この状況下にありますから、今年は従来の詰め込み型の方法、問題量をこなしてたたき上げるという手法が使えません。ですから今年の入試は、その子の実力に見合った「等身大の受験」になるのではないかと考えています。

 --ありがとうございました。

 収束の見通しのつかない現状にあり、ストレスのたまる状態はまだ続くだろう。子どもはもちろんそれを支える保護者も、少しでも悩みを軽減し、心身ともに健やかさを取り戻し、この状況を乗り越えてほしい。
《編集部》

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