東京【高校受験2021】SAPIX中学部に聞く、都立難関突破のための学習戦略

難関校合格者を多く輩出するSAPIX中学部の教育情報センター課長・伊藤俊平氏に、2021年度の都立進学指導重点校の入試の特徴や学習方法、現在の中学1・2年生が2022年度、2023年度の入試に向けて備えておくべきこと等について聞いた。

教育・受験 中学生
SAPIX中学部 教育情報センター課長 伊藤俊平氏
  • SAPIX中学部 教育情報センター課長 伊藤俊平氏
  • 令和3年度(2021年度)東京都立高等学校入学者選抜  出題範囲から除外する内容
  • 学力の3つの要素
  • 東京都立高等学校入学者選抜の日程
  • 東京都中学校英語スピーキングテスト 導入までのスケジュール(2020年6月11日変更発表)
 難関校合格者を多く輩出するSAPIX中学部の教育情報センター課長・伊藤俊平氏に、2021年度の都立進学指導重点校の入試の特徴や学習方法現在の中学1・2年生が2022年度、2023年度の入試に向けて備えておくべきこと等について聞いた。

2021年の都立入試、例年と異なる点をチェック



 2021年度は新型コロナウイルス感染症対策を主眼に置いた変更点が多くある。まず、例年とは異なる点をチェックしたうえで入試の日に向けて準備を進めておきたい。

1.出願方法


 従来「窓口」だった出願が、原則として「郵送」になった。また、将来の導入を検討するため都立立川のみインターネットでの出願を試行する

2.推薦に基づく選抜


 学校により2日間にわたる場合があったが、これを1日のみとする。また、「集団討論」は行わない。大会が行われなかったケースも多いため、「実績等を証明する書類等の写し」の提出を求めない

3.学力検査に基づく選抜


 「緊急事態宣言」発出による中学校休業を踏まえ、出題範囲について配慮する

4.合格発表


 掲示板発表のみで行う学校が多かったが、Webサイトでも行うこととする

5.追試


 従来から分割後期・二次と同じ日程でインフルエンザ等学校感染症罹患者に対する追試を実施してきたが、これに新型コロナウイルス罹患者・濃厚接触者も加える


求める生徒像により合致した受験生を選抜する自校作成問題



--2020年度はコロナの波が迫る中で入試が行われました。いよいよコロナ禍で2021年度入試を迎えますが、都立進学指導重点校の入試の特徴を教えてください。

 東京都教育委員会から指定された進学指導重点校は、都立日比谷(千代田区)・都立西(杉並区)・都立国立(国立市)・都立八王子東(八王子市)・都立戸山(新宿区)・都立青山(渋谷区)・都立立川(立川市)の7つあります。それぞれが長い歴史をもつ伝統校であり、それに加えて進路・受験指導に力を入れています。その結果、大学合格実績は大幅な回復を見せ、現在の都立人気の原動力となっています。

 入学者選抜の大きな特徴は、学力検査において「自校作成問題」を導入している点です。ほとんどの学校で採用されている「共通問題」は、4万人を超える都立高校受験者すべての学力を幅広くはかることを目的としていますので、学力上位生の実力を見るには十分ではありません。国語・数学・英語の3教科の入試問題を独自で作成することで、求める生徒像により合致した受験生を選抜しています。なお、英語のリスニング問題、理科、社会は「共通問題」を使います。

--出題範囲縮小における進学指導重点校受験生への影響と対策について教えてください。

 2020年6月11日に東京都教育委員会が出題範囲を削減することを発表しています。

 数学の三平方の定理、英語の関係代名詞とその省略が目立ちます。これらの削減は、「共通問題」だけでなく、進学指導重点校の「自校作成問題」にも適用されます。

令和3年度(2021年度)東京都立高等学校入学者選抜  出題範囲から除外する内容
 進学指導重点校受験者にアドバイスをするなら、出題範囲縮小については「気にしない」ことだと思います。出題範囲が削減されるとなると、「~を知っている」ではなく、その場で「~がわかるかどうか」を答える問題が増えていきます。原理・原則を大切にし、ものごとに好奇心をもち、与えられた条件の中で問題解決を行う。これは、元からの都立高校入試の傾向と変わりません。「試験に出題されるかどうか」で「勉強する・しない」を決める姿勢からは本当の学力は身に付きません。

 たとえば、数学の図形問題で解答までの過程を記述する場合、今回削減された「三平方の定理」を使って解答しても問題ありません。つまり、削減内容が解答の妨げになることはありません。また、「高校入学のタイミングでは、中学での学習範囲はしっかりと身に付けてきてほしい」と複数の都立高校の校長先生がおっしゃっています。入試に出ないだけで学習しなくて良いということではありません。出題傾向や難易度、入学後のことまで考えるとすべての範囲を学習するのが自然な流れだと思います。

都立志望者は前年比112%、私立大学附属校合格+本命は都立難関



--夏の取材では、景気悪化で都立高へ人気が傾くとおっしゃっていました。コロナ禍による併願受験校数や志望校選択にはどのような影響がありますでしょうか。

 SAPIXが実施する公開模試「サピックスオープン」の志望校登録を見ると、明らかに都立志望者が増加(前年比112%)しています。また、東京都・神奈川県の私立高校の解禁日である2月10日の登録者は逆にやや減少(前年比96%)しています。ひとりの受験生が複数の志望校を登録できますので、この数字が第一志望者の実態を表しているわけではありませんが、ある程度の傾向はわかります。

 ここ数年の人気動向を簡単にまとめると、2つの大きな流れがあります。

1.都立上位校の人気上昇。逆に中堅以下で定員割れもあり、二極化傾向が進む。


2.大学入試改革への不安から、高校受験から私立大学附属校へ進む志向が増える。



 一般に公立高校志望者は、私立高校でひとつ合格をもらって本命の公立高校を受験するというパターンが多いのですが、首都圏には200を超える私立高校がありますので、有力な選択肢になりえます。2月10日は多くの私立大学附属校が集まっていますので、2に関連して、たとえば都立高校第一志望だとしても、2月10日に附属校を受験しておく生徒が増えていました。

 新型コロナウイルス感染症の影響で、このような全体的に出願者数が増える傾向にブレーキがかかったものと考えられます。ただし、ひとりの受験生が進学できるのはひとつの学校しかありませんので、全体の出願者数が減ったからといって、合格しやすくなるわけではありません。以前から人気の早慶附属校・MARCH附属校は横ばい以上の水準です。

 全国の公立高校の授業料は無償化されています。新型コロナウイルス感染症に関連した休業要請などによる経済的な不安がそのまま公立高校人気へとつながっている状況です。ただし、「高等学校等就学支援金制度」(国の制度)や「私立高等学校等授業料軽減助成金事業」(東京都の例)など、年収や世帯状況による制限はあるものの、私立高校の授業料も大半を支給してくれる制度があります。特に保護者の方は子どもの選択の幅を広げるためにも、制度に対する理解を深めておくと良いと思います。

--併願の多い国・私立難関校のコロナの影響(出題範囲等)と対策について教えてください。

 都立高校と異なり、国立・私立の難関校の対応は学校によってまちまちです。入試当日の新型コロナウイルス感染症対策については、いろいろ特徴はあるものの、きちんと練られていると思います。また、罹患または濃厚接触者に指定された場合の対応、具体的には追試験を実施するかどうかは募集要項や出願書類などで調べておきましょう。

 出題範囲に関して言えば、学校により異なります。「都立高校に準ずる」から「例年どおり変更なし」まで不統一で、「未発表」の学校もあります。いろいろな学校を併願する受験生が多いと思いますので、私立高校の志望順位が高い受験生は学習指導要領の範囲はマスターしておいたほうが良いでしょう。

身近な人に相談して学習面の不安を解消しよう



--授業の遅れ、模試の経験不足などによる焦りは、生徒たちのようすから感じますでしょうか。ラストスパートに向けて学習アドバイスをお願いします。

 今年の入学者選抜を受験するのは今年の中学3年生であり、新型コロナウイルス感染症による影響は全員が受けています。授業が遅れたり、模試を受ける機会が少なかったりするのはみんな同じなので、焦る必要は一切ありません。

 いま不安を抱えているのであれば、その不安が何に起因するものなのかをはっきりさせましょう。毎年直前期の受験生は不安を抱えているものです。それは学習面が原因であり、コロナが原因ではありません。自分に不足している点を具体化し、マスターしていくことで不安は解消していきます。学校や学習塾の先生など、身近な大人に相談してみるのも有用です。

 一方で、保護者の方に留意していただきたいのは、「周囲が過度に心配するとその不安が本人に伝播する」ということです。先ほど話したとおり、今年の中学3年生はみんな同じ環境で受験を迎えます。どんなに不遇に見えようと、受験生は与えられた環境で頑張るしかありません。もちろん保護者の方も不安だとは思いますが、こんなときだからこそ冷静に、しっかりと受験生を支えてあげてください。受験生は漠然と不安を抱いたり、ストレスを貯め込んだりしますので、本人が発する小さなメッセージを見逃さないように、コミュニケーションは密にしましょう。

 学習面では、そろそろ過去問に手を付ける時期になってきました。50分という試験時間を感覚的にとらえられるように計測しながら取り組んでみましょう。「時間が足りない」というのは毎年ある相談です。たとえば、数学や理科であっても長い文章を読んで解答する問題が多いので、どうしても時間がかかります。ポイントは「読みの精度を上げること」です。速く読むのは難しいですが、「同じところを何度も読み直す」という無駄を省くことは可能です。

現中学1・2年生が備えるべきこと



--2022年、2023年に向けて現在の中学1・2年生とその保護者はコロナ禍での入試のようすや動向に例年より注目をしていると思います。また、新学習指導要領や大学入試改革の影響から出題傾向はより「思考力」をみるものに変わっていくのではと考えられます。日本中がコロナ禍での受験、初めての大学入学共通テストという前例のない受験シーズンを経験した後に続く子どもたちは、どのような準備をしておくと良いでしょうか。

 文部科学省は学力を3つの要素にわけて説明しています。
学力の3つの要素
 大学入試をはじめとする教育改革において、入学試験で中段「思考力・判断力・表現力」を、さらには推薦入試やeポートフォリオで上段「主体性・多様性・協働性」を評価しようとしています。従来とは出題傾向が変わったように見えますが、下段「知識・技能」が不要になったわけではありません。むしろすべての基礎なのでこれを疎かにすると、中段・上段も崩れてしまいます。

 中学2年生までの学習は、中3の学習および入試問題につながる基礎となります。まずこれをしっかり身に付けることを最優先としましょう。「思考力を鍛える」うえでお勧めなのは、学習済みの単元で理解が甘かったり、できていなかったりする内容を深掘りしてみることです。たとえば、英単語の語源を探ってみる。「サラリーマン」はsalary(給料)+man(人)の成立ちですが、さらにsalaryの語源を調べてみるといった深掘りが大切です。

 数学ならば、なにげなく使っている用語が正しく説明できるかを確認してみる。関数で使われる「傾き」や「変化の割合」はきちんと理解できていますか。意外に不十分な点が見つかってくるはずです。難しく考えなくて構いません。頭を動かすきっかけは身の回りにちりばめられています

--英語スピーキングテストの都立入試への活用は令和4(2022)年度開始予定ですが、英語学習で早いうちから取り組むべきことなど、学習のアドバイスをお願いします。

 グローバル化が進み、多くの外国人を日本で見かけるようになり、ますます英語の重要性が高まってきています。また、ICT機器の発達などにより、ネイティブ音源に触れる機会も格段に増えています。そんな環境になっているものの、リスニングやスピーキングの練習に消極的な生徒が多くいる現状です。一朝一夕で身に付くものではないので、早いうちから習慣にしていきましょう。

東京都中学校英語スピーキングテスト 導入までのスケジュール(2020年6月11日変更発表)
 英語は言語であり、コミュニケーションツールです。自分の言いたいことを伝えるためには、英単語を知り、英文法を理解し、正しい英文の構造で表現することも必要です。プレゼンテーションなどの方法論にだけに注力し、基礎を疎かにしてしまうと、正しいスピーキングはできるようになりません。音声による学習と、単語や文法の知識の習得の両方を同時に進めていく必要があります。たとえば、SAPIX中学部が導入している英語オンライン・レッスン「ベストティーチャー」では、まず自分が話す内容を英語で作文します。次に外国人講師による添削を受け、正しい英語に直します。そのうえで満を持してネイティブスピーカーとのレッスンに移ります。上記の2点をバランスよく学習することで高い学習効果を上げています。

--今年は文化祭が開催されなかったり、学校見学も人数制限があったりと、学校の雰囲気を肌で感じる機会が少なかったのではと思います。志望校選びについてのアドバイスをお願いします。

 せっかく合格した高校なのに、通学してみたら「こんなはずじゃなかった」というようなケースは避けなければなりません。学校側も行事や説明会を通して、事前に学校を知ってもらうようにしています。コロナ禍によって形は変わっても、ミスマッチを防ぐための方策は行われています。たとえば、ICTを活用したオンライン説明会などが盛んに行われていますし、文化祭も動画で配信したり、より多くの資料を公開したりするケースが増えています。学校ごとに個性が表れていますので、志望校のWebサイトを訪れて情報収集する、新しいスタイルの学校見学をしてみましょう。

 また、偏差値の上下だけで学校を決めないほうが良いのはもちろんですが、毎年直前期に「不安」という理由で受験校を変更する生徒がいます。今年はコロナ禍でその傾向が強く出ると予想しています。偏差値はあくまで目安です。志望校を変更する場合は第三者を交えて冷静に判断すると良いでしょう。

2021年3月、SAPIX中学部 オンライン校開校



--コロナ禍でICTの活用が進み、どのような環境でも学びを止めないようオンライン学習に注目が集まっています。SAPIX中学部で新しい展開がありましたら教えてください。

 高校受験のSAPIX中学部は、2021年3月1日に、「SAPIX中学部 オンライン校」を新規開校します。開校時の対象学年は、首都圏の難関高校合格を目指す新小学6年生~新中学3年生。2021年9月からは小学5年生の授業もスタートします。

 ICTを活用することで、生徒と講師とのやり取りで進む『双方向授業』を実現しました。互いの顔が見えるオンライン上の教室でコミュニケーションを取りながら授業が進みます。

 さまざまな意見・思考の過程に触れ、自分の考えをブラッシュアップすることができるのが、双方向授業のメリットのひとつ。それを自宅にいながら受けられるのがオンライン校の最大の特長です。また、質問対応や課題の整理、保護者会・進路面談なども、講師がきめ細かく対応し、皆さんの受験をサポートします。

--ありがとうございました。

SAPIX中学部 冬のテスト・講習情報



冬期講習


対象:高校受験を考えている中学1・2年生
2020年12月26日(土)~2021年1月6日(水)
冬期講習(中学1・2年生対象)

小5・6冬期特別ゼミ


2021年1月4日(月)~1月6日(水)
小5・6冬期特別ゼミ

新学年 第1回入室テスト


対象:高校受験を考えている新小学6年生、新中学1~3年生
2021年1月24日(日)
新学年 第1回入室テスト
《編集部》

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