教えて!松田孝先生、未来に役立つ小学生からのプログラミング学習

 注目が高まるプログラミング教育について、松田孝先生と小学生の保護者による座談会を開催。プログラミング教育の楽しさと大切さ、家庭でできる自学教材「くもんのプログラミングワーク」の活用法について教えてもらった。

教育ICT 小学生
松田孝先生と、座談会に参加したお母さまたち
  • 松田孝先生と、座談会に参加したお母さまたち
  • 質問に答える松田孝先生
  • 松田先生に示していただいた5行のプログラム
  • IchigoJamでテキストプログラミングを体感
  • “@”“@@”“@@@”の記号をくり返すプログラムを実行
  • 松田孝先生と、座談会に参加したお母さまたち
  • くもんのプログラミングワーク
 注目が高まるプログラミング教育について、ICT教育の最先端をいく取組みを行う松田孝先生と、小学生の保護者による座談会を開催。プログラミング教育の楽しさと大切さ、家庭でできる自学教材「くもんのプログラミングワーク」の活用法について教えてもらった。松田孝先生は、ICT先進校として有名な小金井市立前原小学校で校長を務め、ICT化やプログラミング教育を先導したのち「MAZDA Incredible Lab」を設立。「ICTで学びの変革を」をテーマに子どもたちの学びを支援している。

座談会に参加した保護者とお子さまの学齢


湯浅さん:小5・女児、小3・男児
松尾さん:小3・男児、年長・女児
有本さん:小3・男児、年中・男児
※ 保護者の名前はすべて仮名

デジタル機器&プログラミング学習体験



家庭での体験



--お子さまは家庭でどのようにデジタル機器を利用していますか。またプログラミングの学習経験があれば教えてください。

湯浅さん:タブレット、親のお下がりのノートパソコン、スマートフォンを、可能な限りフィルターはかけつつも自由に使わせています。私自身がプログラミングに興味があり、小学校入前後からプログラミング教室の体験レッスンなどに参加しています。

松尾さん:子ども専用のタブレットにスマートフォン、スマートスピーカーなどデジタル機器には毎日触れています。科学館のワークショップでプログラミングに興味をもち、数年前にはロボットプログラミングのキットも購入しましたが、すでに飽きてしまって部屋で置物化しているのをどうにかしたいですね。

有本さん:家では父親のタブレットを使ってScratchやマインクラフトをやっています。飲み込みも速く、楽しんでやっていますが、その先どう学びにつなげていったらいいのかわからないという感じです。

学校での体験



--みなさん公立の小学校にお通いですが、学校でのプログラミングの取組みについてはいかがでしょうか。

湯浅さん:今年からプログラミングが必修化しましたが、学校からのインフォメーションは特にありませんでした。年間学習計画に“プログラミング授業の日”はあったので、どんなことをしているのか聞いてみたところ、タイピングゲームをしたり、パソコンで調べたことを発表したりする機会があったようです。

有本さん:休校期間中の宿題として、無料のWeb教材「Hour of Code」を1時間やって感想を書いて提出するというのはありました。指示の書かれたブロックを組み合わせてキャラクターを動かしたり、音が出たりするのでおもしろがっていましたが、なかなか続かないんですよね。

松尾さん:「総合」の時間に学校のパソコン室で一斉にパソコンを習ったことはあるようです。ただ、「プログラミング」として習っているわけではなく、パソコンゲームに触ってみた程度のようです。1人1台タブレットとキーボードが支給されるようですが、具体的にどんな利用をするのかはまだわかりません。

プログラミング教育への後押しがない現状



--小学校でプログラミング教育が必修化され、GIGAスクール構想も実現に向けて進んでいます。今なぜプログラミング教育が必要なのでしょうか。

松田先生:“プログラミング教育の必要性”としては、「1-物事を論理的に考えられる力を身に付けるため」「2-情報技術で支えられているこれからの社会に必要不可欠なものだから」などが一般的な答えでしょうか。私が前原小学校に赴任した4~5年前に比べ、プログラミングやICTを使った教育が大切だということは、保護者の間でもだいぶ浸透してきたように思います。

 しかし、プログラミングが学校で必修化されたとはいえ、子どもたちが惹きつけられるような授業が実践されていないという現状は否めません。というのも、文科省が提示している学習指導要領では「教科の狙いをよりよく達成するためにプログラミングを用いる」と示すに留まり、何年生で何時間、具体的にどんなことを学ばなければいけないかというのは学校任せ。ちょっとやっただけでも、プログラミング教育を実施したことになるのです。でもそれでは本来のプログラミング必修化ではありません。

 実は学校の先生方も、「子どもの成長にとって必要なんだ」という強い気持ちや後押しがないまま、ふだんの授業や行事、さらにコロナ休校の遅れを取り戻すのに精一杯で、とてもプログラミング教育に向く状況ではなくなってしまっているのです。

質問に答える松田孝先生
質問に答える松田孝先生

湯浅さん:確かに、国が目指しているデジタル化を推し進める教育と学校の現状、さらには学校と家庭の意識も違うと感じています。親としては、子どもの可能性を広げるためにできることはやってあげたいという気持ちですが、プログラミング教育がより広く推進されるには、学校の先生や保護者の意識をどう変えていけばいいのでしょうか。

松田先生:そもそも学校とは「子どもたちの生きる未来に、責任をもつ教育を行う場である」という原点に立ち返り、「はたして子どもたちの生きる未来とは?」ということを改めて考えることが大切ですね。

Society 5.0を生きるための教育が必須



松田先生:みなさんは「Society 5.0」という言葉をご存知でしょうか。「コンピューターが作るサイバー空間と、サイバー空間(仮想空間)と私たちがいる現実のフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたなかで、経済発展とさまざまな社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」という国が提唱している概念です。今の子どもたちは、オンラインゲーム上で集まってチャットをしながら学校の宿題をするというように、現実空間と仮想空間の区分けを意識することもなく、それらが混然一体となった時代を生きています。

 そんな世の中の流れに翻弄されるのではなく、自分たちをとりまく情報技術や仕組みを理解したうえでSociety 5.0時代を主体的に生きることが必要なわけです。

有本さん:確かに、今の子どもたちは生まれたころからインターネットが繋がっていて、物心がついたときにはスマートフォンがあって。親よりも子どものほうが飲み込みも速く、教えたわけでもないのにデジタルツールを上手に使いこなしてしまうことはよくあります。

松田先生:今の1年間の進歩はデジタルに換算すると、昔の200年分に相当するともいわれます。10才の子が社会の第一線で活躍する30才になるまでには、200年×20年の4,000年先を行かなければならないよって子どもたちにも話すのですが、どんどん科学技術が発展し世の中が大きく変わっています。すべてのものがインターネットにつながって、その情報がクラウドに上がって、ビッグデータをAIが解析して結果をより豊かで便利なものに還元して…その技術は絶対的にコンピューターがつくっていくわけです。だからこそ、コンピューターとコミュニケーションをとる力ってものすごく大事。そのとっかかりがプログラミングなのです。

松尾さん:「コンピューターと話ができる力」こそがSociety 5.0に必須のリテラシーなのですね。

松田先生:いろいろな言葉を話すと世界が広がるように、コンピューターの仕組みがわかれば世界が広がります。一律一斉に目標を定めて先生が技能や正しい答えを授けて、社会に適応することを目指したのがこれまでの教育。ですが、これからはICTの技術革新で予測することもできない時代。どんどん変化することが当たり前の社会となり、物事をひとつの尺度では測れない時代を子どもたちは生きていくことになります。そんな時代を、しなやかに生きていくための教育へと、私たちの概念も変えていかなければなりません。

湯浅さん:時代の変化とともに、「学びのイメージ」も転換する時期を迎えているのですね。Society 5.0時代の教育にプログラミングはどう関わっていくのでしょうか。

松田先生:合理性や経済性、さまざまな視点からよりよい最適解を求められる“デザイン思考”目的を達成するためにはこんなやり方がいいかなと試行錯誤し、自分の個性を生かしながら自分の力を将来につなげる“自己調整力”をきちんと育ててあげることが重要です。

 その力を育てるには、試行錯誤の繰り返しが必要不可欠だと思っています。何度間違ってもOK、失敗を恐れずに何度もトライ&エラーのサイクルを体感し、さまざまな気付きを得ながら何かを表現する(つくる)ことができるというプログラミングは、まさに新しい時代を見据えた教育観に合致しています。

大学入試でもプログラミング採用の動き



松尾さん:プログラミング教育は不可欠と耳にしていながらも、中学や高校から学べばいいのかなと後回しに考えていました。小学校で必修となったプログラミング教育は、中学、高校と進むにつれてどのように展開していくのでしょうか。

松田先生:小学校では算数の「正多角形の作図」、理科の「電気の性質と働き」などの単元にプログラミングを取り入れるに留まっていますが、中学生になると、「ネットワークを活用した双方向性のあるコンテンツ」のプログラミングを学びます。高校生になると情報活用能力を幅広く学ぶ「情報I」が必修になり、PythonやJavaなどのプログラミング言語を用いるようになります。さらに2025年度以降の大学入学共通テストから「情報」が採用されることが検討されています。

松尾さん:中学、高校あたりから急に難しくなるイメージですね。移行できるのかなと不安です。

松田先生:今の小学生がこのままいって、プログラミング言語や技能を習得しようとか、いざ大学入試で情報の試験があるとなったら、本当に大変です。やはり、小学生のうちからベースとなるものに触れておくことが必要だと感じています。先々につながる知識と技能を習得させるためにはテキストプログラミングがお勧めです。学校でできなくても、パソコンさえあれば家庭で進めることができる「くもんのプログラミングワーク」は最高の自学教材ですね。

くもんのプログラミングワーク

テキストプログラミングは難しい、は思い込み



有本さん:子ども向けのプログラミング教材というと、Scratchのようなビジュアルブロックを使ったものが主流で、学校やプログラミング教室でもまずはScratchやViscuitなどを使うことが多いように思います。まだパソコンの扱いに慣れていない子どもに、テキストプログラミングは難しいイメージもあるのですが。

松田先生:「くもんのプログラミングワーク」で使うテキストプログラミングのIchigoJam(イチゴジャム)は、キーボード入力の練習から始め、少しずつ新しいコマンドを覚えながらプログラムを自分で書いていきます。初心者向けのプログラミング言語BASICを使っているので、気軽に本格的なプログラミングを体験できるのが特徴です。

 子どもにテキストプログラミングは難しいというのは大人の思い込みで、子どもは楽しみながらどんどん進めてしまいますよ。ビジュアルブロックを使ったものよりも、テキストを入力しながらのプログラミングができるほうが、子ども自身が「自分はコンピューターに強いんだ」って思えるし、コンピューターとコミュニケーションができたと実感できるのです。また、より本格的な言語であるJavaScriptとコマンドが似ているので、いずれほかの言語に進むときにも移行しやすいというメリットもあります。

IchigoJamでテキストプログラミングを体感



 松田先生にテキストプログラミングの重要性を伺ったところで、後半は「くもんのプログラミングワーク1」を体験してみることに。お母さまたちは、テキストプログラミングをするのは初めて。IchigoJamのウェブサイトを開くと現れたのは白と黒のシンプルな画面。松田先生に示していただいた5行のプログラムを入力し、実行を押すと…。

松田先生に示していただいた5行のプログラム
松田先生に示していただいた5行のプログラム

IchigoJamでテキストプログラミングを体感
IchigoJamでテキストプログラミングを体感

“@”“@@”“@@@”の記号をくり返すプログラムを実行
“@”“@@”“@@@”の記号をくり返すプログラムを実行

コンピューターの反応が楽しい!



--みなさん夢中でプログラミングを楽しんでいらしたようですが、実際にIchigoJamでのテキストプログラミングを体験してみていかがでしたか。

湯浅さん:テキストプログラミングは、プログラミングに精通した上級者がやるものでハードルが高いと思っていましたが、やってみると意外と簡単で、これなら小学生でもできると思いました。派手なビジュアルがあると子どもはそちらに気を取られてしまうので、シンプルで明解なIchigoJamは、ぜひ子どもにもやらせてあげたいと思いました。コンピューターがますます欠かせないこれからの時代、使われるより使う側にいってほしいので、テキスト言語を使う経験を早いうちからさせてあげたいですね。

有本さん:たった5行のプログラムですが、コマンドの意味や数字の配置、記号の使い方…さまざまな要素が詰まっていると思いました。ビジュアルブロックよりもテキストを打ち込むほうがコンピューターを動かしたという実感があります。自分のイメージをどうすれば表現できるのか考えるので、かなり頭を使いますね。タイピングの練習にもなりそうなので、さっそく息子と一緒にやってみたいです。

松尾さん:自分の入力したプログラムがどんな動き方をするのか、大人でもワクワクするので、子どもは絶対にワーって喜ぶと思います。数値の入力を見落としてエラーが出てしまいましたが、「トライ&エラーの繰り返しこそ楽しい」という松田先生のお話を聞いて納得しました。

簡潔だからこそクリエイティビティを養える



松田先生:IchigoJamはシンプルだからこそ、“このプログラムを打つとどうなるか”考えることが楽しいし、“この画面でこんなことを表現したい”という気持ちが湧いてくるんですよね。幼児にとっての砂場遊びと同じで、一見単純そうに見えて、想像力をおおいにかき立てる。縦に動かしたり横に動かしたり、流れ星のように縦横無尽に動かしたりすることもできます。黒と白のシンプルな画面を何かに見立ててイメージする力は、本質を見抜く力にも繋がるのです。

 さらにワークを進めるうちに、記号などの表示位置を変えるには、XY座標、代入や変数といった算数の考え方を使い、さらにはLEDの光り方や点滅のスピードを変えるには三角関数を使うんです。それらを“算数”として学ぶのではなく、“自分のイメージを表現するには、算数の考え方をどうプログラムに使えばいいのか”ということを学びます。“算数を使った表現の仕方”を体感することによって、表現の幅も広がるし算数そのものに対する興味関心が湧いてくる。このことも、低年齢のうちからテキストプログラミングをお勧めする理由です。

 極端な話ですが、正解のプログラムなんてないのです。いきなりイメージどおりにうまくいくこともありません。書いて、動かして、直して…何回も挑戦してみることに価値があるということを、プログラミングを通じて体感してください。それこそが、変化の激しいこれからの時代をしなやかに生きていく力になると確信しています。

松田孝先生と、座談会に参加したお母さまたち
松田孝先生と、座談会に参加したお母さまたち

 プログラミングを習ったことがない親世代は、“家庭で子どもを導こうにも、まず自分が理解できるのかわからなくて不安”という声も多く聞くが、家庭でプログラミングを学ぶコツは「教えて理解させるのではなく、子ども自身に任せればいい」と松田先生の心強い言葉が、そんな心配を払拭してくれた。経験がなくてもゼロから始められるテキストプログラミング「くもんのプログラミングワーク」、この冬休みにじっくり取り組んでみてはいかがだろうか。

くもんのプログラミングワーク


 プログラミングの創造的な面白さに触れることができる小学校からでも取り組めるワークブックで、解説を読みながら入力し、作ったプログラムを自分で改造して楽しむことができる。コンピューターの基礎知識やキーボード入力のやり方からはじまり、基本的なコマンドを使ってLEDを光らせたり、音を鳴らしたりする5行程度の簡単なプログラムまでを学べる「くもんのプログラミングワーク① はじめる!IchigoJam」、①で学習した内容をベースに、複数のコマンドを組み合わせて、遊べるゲーム作りまで進める「くもんのプログラミングワーク② チャレンジ!IchigoJam」の2タイトルが揃っている。

くもんのプログラミングワーク① はじめる!IchigoJam
くもんのプログラミングワーク② チャレンジ!IchigoJam
《吉野清美》

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