自宅からアートに触れ、感性磨く…ポーラ美術館、対話型鑑賞イベント開催

 ポーラ美術館は2021年8月8日、これまでも夏休みに開催してきた対話型鑑賞イベント「キッズ☆おしゃべり鑑賞会」を初めてオンラインで実施した。同館で展示中の美術作品に小学生がオンラインで親しみ、自由な雰囲気の中で新たな発見や発想をしながらアートと触れあった。

教育イベント 小学生
対話型鑑賞イベント「オンラインでキッズ☆おしゃべり鑑賞会」のようす
  • 対話型鑑賞イベント「オンラインでキッズ☆おしゃべり鑑賞会」のようす
  • 森の中にたたずむガラス張りのポーラ美術館
  • 森の中に展示されているアート作品
  • 森の中に展示されているアート作品
  • ポーラ美術館チケットカウンター周辺の光景 (c) Ken KATO
  • 岡田杏里「Soñar dentro de la tierra」2021年、アクリル/カンヴァス (c) Anri Okada
  • クロード・モネ「ルーアン大聖堂」1892年 油彩/カンヴァス
  • クロード・モネ「ジヴェルニーの積みわら」1884年 油彩/カンヴァス
 ポーラ美術館は2021年8月8日、これまでも夏休みに開催してきた対話型鑑賞イベント「キッズ☆おしゃべり鑑賞会」を初めてオンラインで実施した。イベントでは、会場となるZoomミーティングに全国各地から小学生親子31組が集まり、同館で展示中の美術作品を鑑賞しながら、自由な雰囲気の中で新たな発見や発想とともにアートとの触れあいを楽しんだ。

 「箱根の自然と美術の共生」をコンセプトに2002年、神奈川県箱根町に開館したポーラ美術館は、開館以来、アートによる対話を大切にし、美術館を拠点にしながらさまざまな場で対話による鑑賞活動を展開している。小中学生は無料で入館できるのも魅力だ。

森の中にたたずむガラス張りのポーラ美術館

 これまでも子供向けの美術鑑賞プログラムとして、子供たちが学芸員と一緒に展示室をまわりながら作品と触れあう対話型の鑑賞イベントを開催してきたが、新型コロナウイルス感染拡大防止対策として今回初めてオンラインで実施した。

 担当学芸員の山塙菜未氏は「展覧会ごとの講演会やギャラリートークなどに加え、夏休みに子供たちとアートとの出会いの場を生み出す鑑賞会は、私たちも特に楽しみにしていたイベントの1つ。コロナ禍で美術館に行く機会が減ってしまった子供たちにも、アートや、対話を通した他者との繋がりをもつチャンスを提供していきたいという想いから、今回のオンラインイベントの実現に至った」と話す。

画面越しにアートを感じる、対話型イベント



 イベントは、芸術資源開発機構「ARDA」のメンバーがファシリテーターを務め、低・中・高学年向けに3回、学年別に開催。美術館周辺の豊かな自然の音色を流し、まるで現地にいるかのような演出を施しながら、森の中の遊歩道に点在する大小さまざまなアート作品、自然に溶け込むガラス張りの建物を写真で紹介。メキシコ在住のアーティストである岡田杏里氏による、カラフルなカッティングシートを貼ったポップなエレベーターをはじめ、館内も案内した。

森の中に展示されているアート作品

 続いて、5人ほどの小グループに分かれて作品を鑑賞。ファシリテーターが「ひとりひとりが作品を見て感じることや思ったことに正解・不正解はない」と伝え、「どの作品が好きか」「この絵の中でどんなことが起きているか」「作品からどう感じるか」と問いかけた。子供たちからは、作品に対するユニークな発見や感想が次々と飛び出した。

日常生活とつながる、ゲームやクイズでアートを身近に



 低学年の回では、絵から見つけた形と同じ形の物を家の中から持ってくるゲーム、中学年の回では、作品に描かれた人物がどんなセリフを言っているのか想像するクイズを実施。発達段階に合わせたプログラムによって、子供たちはさまざまな視点から作品を見つめ、アートと楽しく触れあった。

岡田杏里「Soñar dentro de la tierra」2021年、アクリル/カンヴァス、作家蔵 (c) Anri Okada

親子ともに、作品にじっくり向きあう工夫



 鑑賞会の最後は、1つの作品にじっくり向きあう時間。子供たちは、作品を隅々まで眺めながら、色使いやタッチ、描かれている世界、光や雲の動き等、新たな発見や気付きを発表しあい、他の子供の考えからもイメージを広げていった。同席した保護者もQRコードをスマートフォンに読み込むことでLINEのオープンチャットに参加でき、自身も子供と同じ作品を鑑賞しながら参加者同士、感想を語りあうことができた。共通体験があることで、家族で美術館を訪問した際に、親子で一緒に作品について鑑賞することもできそうだ。

クロード・モネ「ルーアン大聖堂」1892年、油彩/カンヴァス、ポーラ美術館蔵


 鑑賞後は、作品を振り返り、ファシリテーターが作者やタイトル、作品が描かれた時代について紹介。高学年の回では、クロード・モネ作の「ジヴェルニーの積みわら」について、作者が積みわらをテーマに天候や時間帯を変えながら25点ほど描いていること等、関連する情報も含めて広く説明した。

クロード・モネ「ジヴェルニーの積みわら」1884年、油彩/カンヴァス、ポーラ美術館蔵


 さらにこの日に鑑賞した作品はポーラ美術館で実物を見ることができることも伝えられた。現在同館では、コレクション展「モネ-光のなかに」(2022年3月30日まで)、企画展「フジタ-色彩への旅」(9月5日まで)、現代美術ギャラリー「岡田杏里『Soñar dentro de la tierra/土の中で夢をみる』展」(同)、コレクション展「ポーラ美術館の名作絵画」(同)などが開催されている。

名作から刺激、子供たちの感性が光る



 参加した子供たちからは「自分と違う意見や同じ意見があって面白かった」「こんなにじっくり作品を見たことはなかったので楽しかった」等の感想が寄せられた。「美術館」「アート」というと、親子ともに敷居を高く感じがちだが、自由な雰囲気で作品を身近に感じることで、子供たちの感性がさらに磨かれ、名作から多くの刺激を受けたようすだった。

 開催を経て、山塙氏は「写真を使って遊歩道を含めた美術館全体の紹介ができたり、たくさんの作品を鑑賞できたりとオンラインならではの利点があった。いつかポーラ美術館に来たときには、画面越しに見た作品と、実際の作品との違いを楽しんでもらいたい。今後も子供たちを対象としたオンラインコンテンツに力を入れるべきという気持ちが強くなった」と語った。

対話型鑑賞イベント「オンラインでキッズ☆おしゃべり鑑賞会」のようす

 ポーラ美術館Webサイトでは、コロナ禍で外出や旅行が難しい状況にある中、自宅からでもアートを楽しんでもらおうと、「#おうちでポーラ美術館」と題したコンテンツを開設している。作品や展覧会についてじっくり学ぶことができる「ガイドムービー」、塗り絵を通してアート作品に親しむことができる「ぬり絵を楽しもう」等、さまざまなコンテンツを提供している。いずれも無料で利用できる。

続く学び、実物との再会にも期待



 後日、イベント参加者には「ポーラ美術館への招待状」と題した手紙やパンフレットが届けられた。美術館では、オンラインで親しんだ多数のアート作品が待っている。山塙氏によれば、1週間後には美術館を家族で訪れ、実際の作品を鑑賞したという参加者からの声も寄せられたという。イベントで鑑賞した作品との“再会”は、子供たちに感動と喜びをもたらしてくれるに違いない。
《奥山直美》

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