言語を通じ文化を学ぶ…心の教育に力を入れる洛南高等学校附属小学校の英語教育

 洛南学園 洛南高等学校附属小学校では、小学校から中学、高等学校までの12年間をかけてアカデミックな英語を学ぶ。英語と道徳の授業を担当する片山泰幸先生に話を聞いた。

教育・受験 小学生
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洛南高等学校附属小学校の外観
  • 洛南高等学校附属小学校の外観
  • 1年生の授業のようす。英語をはじめすべての教科で「教科担任制」を採用
  • 2年生の授業のようす。ネイティブの先生による授業
  • 4年生のノート
  • 4年生の授業のようす:英語で発表
 京都府向日市にある洛南高等学校附属小学校では、小学校から中学・高等学校までの12年間をかけてアカデミックな英語を学ぶ。先を見据えたレベルの高い英語教育においてTOEFL Primaryをどう活用しているのか。中学、高校での英語指導を経て、同小学校で英語と道徳の授業を担当する渉外主任の片山泰幸先生に話を聞いた。

真言宗を礎に心を学ぶ



--洛南高等学校附属小学校の教育全般の特徴について教えてください。

 本校の始まりは、平安初期に弘法大師空海が庶民のための教育の場として創られた日本最初の私立学校「綜芸種智院(しゅげいしゅちいん)」までさかのぼることができます。仏教校として真言宗の教えに基づいた心の教育に力を入れています。週一度、道徳の授業で宗教について学ぶほか、宗教行事を大切にしており、弘法大師の月命日に行われる御影供(みえいく)という法要や、お釈迦様のお誕生をお祝いする花まつり、お寺に泊まって写経や掃除をしたりといった宿泊学習もあります。仏教が日々の礎になっていますが、その教義や由来などに重きを置くというよりも、子供たちが自分自身を振り返り、心を静める時間をもつことをもっとも大切にしています。

 また、小・中・高校12年の一貫教育であることも大きな特徴です。大学ではなく、高校の附属小学校というのは全国的にも珍しいでしょう。子供たちは必然的に大学入試を受けることになりますが、高校卒業時にしっかりと志をもってその先へと進んでいけるように、小学校の6年間の学びが中学の学びに、そして中学での学びが高校での学びへつながっていくよう意識しています。

 なかでも、小学校は心と教養を育む大切な6年間と捉えています。基礎となる学びをよりいっそう深めるために、英語だけではなく、すべての教科において専門の先生が授業を担当する「教科担任制」をとっていることも、私どもの教育の柱となっています。

1年生の授業のようす。英語をはじめすべての教科で「教科担任制」を採用

--御校の英語教育について教えてください。「言語を学ぶことは、その言語を使う人々の文化を学ぶことである」という教育理念には、どのような考えが込められているのでしょうか。

 小学校の英語教育は、まだまだ指導法が確立していないという現状があります。が、12年一貫して英語を学ぶからには、「英語に親しむ、慣れる」だけではなく、アカデミックなものへとつなげていきたいという思いが根底にあります。

 私どもの真言宗は「真(まこと)の言葉」の名のとおり、「ことば」に重きをおいた教えです。ふだん子供たちは、自分が話している言語について、あまり意識しないで使っていると思いますが、他言語、第二言語を学ぶということは、母語との比較にもつながります。外国語を学ぶことで、改めて「ことば」とは何なのかということに気付き、言語がもつ力、言語によって形成された価値観や文化を理解することにつながると考えています。

 言語を学ぶことは文化を学ぶこと。ひいては総合的に人間を学ぶということであると考えています。

小学校から英語を学ぶメリットはリスニング力



--英語4技能の総合的な育成のための具体的な教育内容について教えてください。

 小学1~6年生まで、ネイティブと日本人の先生によるT&T(チームティーチング)の授業が週に2時間、さらに3年生から文法などの授業が加わり英語のカリキュラム数は合計週3時間となります。また、毎日の「海の時間」という15分間のモジュール学習では、全学年クラス担任が英語の指導をしています。低学年のうちは、外国人の先生の問いかけに英語で答えるなどコミュニケーションを重視しています。

2年生の授業のようす。ネイティブの先生による授業

 以前、私は中学・高校で英語を教えていましたが、リスニングやスピーキングの力が伸ばしきれずに苦労した経験があります。この2つの分野は小学生だからこそ伸ばせるという実感があります。小学生のうちからその部分をしっかりやっておくことで、後々必ずプラスになると確信しています。

 一方で「読む・書く」といった文字の壁がなかなか越えられないことも課題だと捉えています。会話ができると、英語が身に付いたように感じて安心してしまいがちですが、我が校の求める英語力は会話力だけではなく、読む・書くことも重視しています。子供たちの発達段階において何が学びやすいかを念頭に置きつつ、耳から聞いた音と文字をどうつなげていくかを試行錯誤しているところです。

「書く」ことも重視。こちらは4年生のノート

--英語に対する子供たちの吸収力は、先生方の想定と比べてどうでしょうか。

 英語に限らずですが、低学年はいろいろな学びを楽しんでくれるので、その気持ちを大事にしながら授業を進めています。文法や単語、読解といったアプローチの前段階として、楽しく歌を歌ったり、ネイティブの先生との会話を楽しんだりする中で、自然と身に付けています。

 まだ脳が柔軟で音に対する感覚が素直で、先生の発音をしっかりと真似することができるので、驚くほど発音がきれいですね。また、英語を聞いて捉えられるのも小学生のうち。単語が読めないのにも関わらず、耳から入ってきた内容を、きちんと理解して答えられるのです。私たちが思っていた以上に高い、発音とリスニング力を実感しています。

TOEFL Primary®の結果を指導プランに生かす



--TOEFL Primary®についてお聞きします。現在小学4~6年生の全員がTOEFL Primary®を受験されているとのこと。導入の狙いについて教えてください。

 前にも述べたとおり、小学校の英語教育は発展途上な面も多く、指導法も確立されていません。また、小学校から大学入試までつながっていく視野をもって子供たちに英語を教えられる先生も、まだまだ少ないという現状もあります。そんな中、私たちが試行錯誤していることが果たして正しいかどうか客観的な評価が必要と考え、TOEFL Primaryの導入に至りました。

 採用の決め手となったのは出題テーマや設問形式などのつくりが、子供の興味関心に沿ったものであることと、本校の求めている英語レベルを測るのにふさわしいという点です。小学生向けのテストは、遊びやゲームの延長としてわかりやすさを重視したものが多いのですが、そうではなく「アカデミックな場面で使える英語を身に付ける」という私たちの英語教育の方向性と、TOEFL Primaryの出題内容が一致していると考えています。

4年生の授業のようす。英語で発表

--年度の初めのプレテストとして導入されているそうですが、その活用方法はどのようなものでしょうか。

 学期の終わりに受けるテストは、どれだけの英語力が獲得できているのかを試し、「判断」や「確認」で終わってしまいがちです。しかし、新しい年度が始まったばかりの4月に受けることで、結果を1年間の指導方針に生かすことができます

 私たちが知りたいのは、目の前にいる子供たちが到達しているのはどのレベルなのかを知ったうえで、これから教えなければならないのはどんなことなのかという点です。TOEFL Primaryを子供たちが受けることで、ひとりひとりの習熟度や、得意不得意の分野が見えてきます。すると、英語の担当教師がテストの結果をふまえてアイデアや発想を持ち寄ることができ、常に改革をしながら授業を組み立てられるようになるのです。

--4技能を測る必要性をどのようにお考えでしょうか。

 合格する・しないの結果判断で終わってしまったり、解答方式が選択式で読解力や作文力が身に付いていなくても感覚で解けてしまったりすると、本当に英語の力を測れているのか疑問に感じます。英語の力を測るという目的では、将来的には4技能に分かれた形のTOEFL iBTのようなテストを受けることが必要だと思っています。その意味でも小学生においてはTOEFL Primaryを活用し、リスニング・リーディング、そしてスピーキングの3技能をしっかりと測ることが大切であると考えます。

先を見据えた英語指導を実践



--中学・高校との接続という観点でのTOEFL®活用について教えてください。

 進級し英語の習熟度が上がっていくにつれてTOEFL PrimaryからTOEFL Junior、TOEFL ITP、TOEFL iBTと受けるテストも変わってきます。小学校で学んだ英語を中学、高校へとつなげていく中で、同じTOEFLの枠組みで試験ができるのは、子供たちにとっても、よりレベルの高い英語の習得を目指すためのわかりやすい目標にもなるのではないかと思います。

--どのくらいの習熟レベルを目指しているのでしょうか。

 現在の我が校では、通常中学1、2年生で学ぶ程度の内容を小学5、6年生で学んでいます。英検でいえば4級レベル、できる子は3級くらいまでの力をつけてから中学に進むことを理想としています。今後は、世の中の英語教育全体がそのくらいの進度になっていくのではないかと思います。実際、文科省の方針として、今年度から指導要領が変わり、中学校で学ぶ英語のレベルが引き上げられています。

--読解力などの指標となる「レクサイル指数」はどのように活用しているのでしょうか。

 生徒たちはスカラスティック社の電子図書サービスを利用しているのですが、個々のレクサイル指数(英語の読解力と文章の難易度を表す指標)に応じて自動的にお勧めの本を選んでくれるといった、リーディング学習での活用をしています。また、図書館の洋書についてもレクサイル指数を参考に本を選ぶことができるようにしています。

 英語の習得には、多読の習慣も必要だと思っています。4年生になると英文の多読を行い、英語の本を読んで皆で感想を述べるといった取組みもしています。洋書は値段も高いですが、タブレット端末なら気軽にアクセスしてさまざまなレベルの本を試しながら読めますし、音声もついてくるので読みづらいときは聞くことができるのも良いですね。

--最後に、今後の御校の英語教育の展望を教えてください。

 私たちが今試行錯誤しながら子供たちに英語を教えていく中で、その教育の本当の成果というのは10年後、20年後にならないとわかりません。だからこそ、目の前の子供たちに、どのようにアプローチすれば力を伸ばしてあげられるのかというところを、私たち教員が正しく理解するためにもTOEFL Primaryを活用していけたらと思っています。

 そして、どういう指導が子供たちにとって適しているのか見定め、しっかり指導に生かしていけたらと思います。

--ありがとうございました。

洛南高等学校附属小学校

 目の前の子供に向き合い、常に最良のやり方を求めて、その指導方法をアップデートしている先生方の熱心さに頭が下がる。TOEFL Primaryを活用し、子供たちがぐんぐん英語の力を伸ばしていく姿が見えるインタビューだった。

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《吉野清美》

吉野清美

出版社、編集プロダクション勤務を経て、子育てとの両立を目指しフリーに。リセマムほかペット雑誌、不動産会報誌など幅広いジャンルで執筆中。受験や育児を通じて得る経験を記事に還元している。

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