【中学受験2022】北嶺中入試の講評

 北嶺中学校の2022年度入学試験が1月8日に実施された。リセマムは、練成会グループ四谷大塚NETの協力を得て、講評を掲載する。出願倍率は9.9倍だった。

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 北嶺中学校の2022年度入学試験が1月8日に実施された。リセマムは、練成会グループ四谷大塚NETの協力を得て、国語・算数・理科・社会の4教科の講評を掲載する。

 2022年度北嶺中学校入学試験の出願状況は、定員120人に対し、出願者1,194人、出願倍率9.9倍。このうち、青雲寮コースは定員60人に対し、志願者506人だった。

北嶺中学校 講評
(練成会グループ四谷大塚NET提供)


国語


 大問3題構成(物語文・随筆文・論説文)は例年どおりです。小問数は20問(2021年度)⇒18問とあまり変わらないものの、選択肢問題が7問⇒4問、50字記述が2問⇒1問に減り、また抜き出し問題が1問⇒2問と増えたことで、難易度はやや下がったといえます。選択肢はア~オの5択であるうえ、2020年度から難易度が上昇。昨年度まで選択肢の本文同士に類似表現が含まれるだけでなく、本文と同じ表現を含む選択肢が複数あり、紛らわしい作りになっていました。今年は大問1と大問3で選択肢が出題されていますが、特に大問3の「具体例から読み取れる筆者の考え」(問3)、「本文の内容と合うもの」(問5)を選ぶ問題は、しっかり文脈を把握したうえで本文を読めば正解できるはずです。

 記述については、50字記述が1問、30字記述が4問出題されました。50字以上の記述は1問しか出ていませんが、難易度が下がったわけではありません。北嶺では「理由記述」と「言い換え記述」が頻出ですが、どちらも本文中の表現を引っ張ってくるだけでは書けないタイプのものです。また。2020年度から字数制限が設けられ、具体例や重複表現等を削除し、要点のみを取り出してまとめる力が問われるようになっています。つまり、余計な材料を入れるとあっという間に字数オーバーになるしかけになっています。30字という範囲内で、どのくらい必要な情報を過不足なく入れられたかが今年の受験生の勝負どころになったのではないでしょうか。

大問1:物語文 芥川龍之介「仙人」
 毎年文中での語句の意味を問う問題が出ています。文学史は3年連続出題。今年は小説の冒頭部分が示され、それぞれの作者名を問う問題でした。実際に作品を読んでなくても、A夏目漱石「坊ちゃん」、B芥川龍之介「杜子春」、C川端康成「雪国」(日本人初のノーベル文学賞受賞作)は重要知識事項としておさえておきたいところです。

大問2:随筆文 中村哲「希望の一滴」
 昨年同様、ここでも語句の意味を問う問題が出ています。問2で四字熟語の読みを問う問題が出ていますが、エネルギーを注ぐべき問題は問4・5の記述です。問5の50字記述は難問ですが、傍線部の前後をよく読めば、まず「理屈の世界・科学的常識⇔生命の根源としての水を尊ぶ心情」の対比構造に気づき、設問で答えるべき「筆者の感情」を捉えられるはずです。

大問3:論説文 藤原正彦「祖国とは国語」
 問3・5の選択肢、問4の記述に「北嶺らしさ」が出ています。食料自給率の具体例では細かい数値データが列挙されていますが、読み取るべきは細部ではなく、「そこから何が言いたいのか」という要旨です。本文中に繰り返されるキーワード「大局観」は、実は受験生に向けた出題者からのメッセージかもしれません。

<合格に向けてのポイント>
(1)知識分野
 漢字は毎年5問程度出題されますが、書けないものがあっても心配ありません。5問中3問正解できれば十分です。標準レベルの漢字が書けるように日々の練習を怠らないようにしましょう。
(2)文脈把握力を鍛える
接続詞・副詞は毎年出題されています。語句の意味を問う問題も、あくまで「文中での意味を問うもの」。ただの暗記では解けるようになりません。前後の文同士が「順接」「逆接」「言い換え」「具体例⇒意見」「意見⇒具体例」のうち、どのパターンでつながっていくのか、まずは丁寧にチェックしながら読み、解いていく癖を身につけてください。
(3)要旨をとらえる
 繰り返しの表現や言い換えの部分はしっかりチェックしましょう。記述の材料として最有力候補になる箇所です。また、記述は(1)模範解答と自分の解答を比較、(2)なぜ×なのか、どこが足りない(多い)のかを自分でチェック、(3)第三者(先生)に必ず添削してもらう、の3つを忘れないようにしてください。特に(3)は大切です。客観的な目で判断してもらうことが「伝わる答案を仕上げる力」を養うための近道となります。

算数


 大問5問、小問22題は例年通りです。全体として極端に難易度の高い問題はそれほど多くありませんが、難易度の低い問題も多くありません。入試に向けてしっかり準備してきた受験生に入学してもらいたいという学校の意図が見える、差のつきやすい問題でした。平均点は昨年よりもやや上がると予想されます。以下、大問ごとの内容を詳しくみていきます。

大問1:計算問題
 北嶺の合否にもっとも直結するのが計算です。試験時間の60分を考えると焦る必要はなく、むしろじっくりと確実に正解するよう取り組んでもらいたいところです。今年の問題では2016年度入試以来の時間の計算が出題されています。標準的な四則計算以外に、時間の計算や単位換算も含めて対策を講じていきましょう。日々の計算練習を積み重ねることが、北嶺合格には必要不可欠だと言えます。

大問2:小問集合
 小問集合は例年通りの5題構成です。(3)では、小学生には見慣れない「約数の総和」についての出題が見られます。整数の性質に関する深い理解が必要とされる難問でした。昨年に比べると大問2はやや平易で、(3)を除けば、取り組みやすいと感じた受験生が多かったと考えられます。前半で1題程度の失点を想定しながら解き進めると良いでしょう。

大問3:条件整理
 文章が長く条件が多いため、慌てずにじっくり整理していく力が求められる出題です。工場の3つの装置について、停電時・断水時・停電断水時のそれぞれの生産量が与えられており、それを整理すれば後は計算だけという問題でした。ここ3年ほど、北嶺では「○○算」という単元種別にこだわらない出題が増加しています。問題文を読み、手を動かしながら調べていくことのできる受験生が欲しいという学校の姿勢が見られます。

大問4:点の移動
 たて3cm、横4cmの長方形に1cmおきに平行な線を引き、その線上を2点が動く問題です。昨年に引き続き、大問の前半と後半では問題の複雑さが異なります。前半は正解したい問題ですが、後半の(4)1・2は難易度が高く、多くの受験生が悩んだことでしょう。このような難易度の高い問題は、合否に影響することはありません。難問に惑わされることなく、できそうな問題に全力を注ぐよう練習しましょう。

大問5:平面図形(正方形の長さ・面積・角度)
 正方形の折り返しから、直角三角形の相似や合同を利用する問題でした。等しい角度に印をつけながら考えていくようにしましょう。また、中学校の学習内容である「円周角の定理の逆」を利用して円の面積を求める問題も出題されています。ただし、特別な知識は必要ではなく、条件に従って丁寧に考えていけば解けるようにできており、作問者の意欲を感じる問題でした。

<合格に向けてのポイント>
(1)計算力
 何よりも大切なのは計算力です。日々の計算練習を積み重ねることを忘れずに準備を進めましょう。
(2)図形に慣れる
 平面図形も立体図形も、極端に難易度の高い問題は出題されにくい印象があります。日頃の学習で図形に対する経験値を積み上げ、さまざまな問題に触れるようにしましょう。
(3)問題を良く読む
 今年の大問3や4に代表される条件整理の問題では、問題文を良く読むことが何よりも大切です。何を問われているのか、なぜこの表現があるのか、など強く意識して学習を進めましょう。

理科


 出題構成は例年通りの化学・生物・地学・物理4分野からの大問4問でした。地学分野の大問は浮力(物理分野)に関する問題が半分を占めており、全体としては例年よりも物理分野に比重が置かれた出題となっていました。難易度は例年に比べ特に難化しているということはありませんが、「~していないものを…」「~できないものを…」「誤りを含むものを…」といった否定形での問いが多く誤解しないよう注意が必要でした。

大問1
 化学分野から石灰水と状態変化に関する出題でした。石灰水に関してはよく目にする石灰水と二酸化炭素の反応を素材としつつ、その際の濁りの正体である炭酸カルシウムの生成に焦点を当てた問題が出題されました。また塩酸と炭酸カルシウムの反応に関する基本的な計算問題も出題されています。状態変化に関する出題は標準的な難易度の問題でした。

大問2
 生物分野から食物連鎖とヒトの肝臓および呼吸に関する出題でした。食物連鎖に関しては、ハリガネムシによる宿主の入水行動を素材とした問題も出題されました。ヒトの肝臓および呼吸に関しての出題は計算問題もありましたが標準的な難易度の問題でした。

大問3
 地学分野から地質に関する出題でした。しかし冒頭でも触れたとおりその半数が浮力に関する物理分野の出題という構成であり、さらに北嶺中理科の伝統であるグラフを描画する出題もここで出題されました。この浮力に関する出題自体は標準的な難易度の問題でした。

大問4
 物理分野から原子の構造を踏まえての静電気に関する出題でした。普段の学習においてはなかなかここまでは触れることが少ないと思われますので、リード文からどれだけ事象の原理を把握できたかが得点の大きな分かれ目となったことでしょう。少々難易度の高い問題でした。

<合格に向けてのポイント>
 北嶺中理科の攻略にあたっては物理分野の攻略が大きな鍵を握ります。今年はその出題数も多かったです。全分野の基本的内容を満遍なく習得しつつ、特に物理分野に関しては苦手意識を作らないよう早期からの取組みが重要です。全体を通しては標準的な難易度の出題が多いことからも、基本問題で失点しないよう基本的内容の確実な習得は不可欠です。

社会


 例年通り試験時間に対し、リード文や設問文が長い(大問4題で約5,000字)うえに小問数が多く、いかに早く出題内容を把握し解答を作るかという処理速度と、小学生では解きづらく受験生間で差のつかない問題を取捨選択できるかが大切です。出題形式別でみると、記号選択18題、語句記述27題、短文記述4題と例年どおりでした。難易度で見ても、一部非常に難易度の高い問題はあるものの、受験生の間で差がつき、合否を分ける問題数は限られているので、全体的には例年どおりと言えるでしょう。長いリード文や設問文から早く正確に題意を読み取ることと、答えられる問題をしっかり正答しきることを意識しつつ、合否に影響しないであろう問題は飛ばして次に進む勇気を持ってほしいです。

 問題数は、大問が4題(50分)、小問が50題(大問1:13題、大問2:12題、大問3:12題、大問4:13題)。

大問1:地理(日本全域)
 地理(日本全域)をベースに海洋・都道府県・統計資料・地歴融合・時事などが出題されました。中には、在原業平から「伊勢物語」を答えさせる問題や、2021年4月の日米首脳共同声明に対し中国が反発した理由を問う問題があり、苦戦した受験生が多かったと予想されます。

大問2:地理・国際(日本と世界)
 地理・国際(日本と世界)からの出題で、言語や宗教を引き合いに日本地理のほか、世界地理や国際分野からの出題が見られ小学生では解きづらい問題が多かったと思われます。特に黄色人種を「モンゴロイド」と書かせる問題は、言葉そのものを知らない受験生が多かったでしょう。また、正誤問題で1題問題不成立があり、試験後に判明したため全員に加点がされました。

大問3:歴史
 「特許権」や「真鍋叔郎」を選択させる問題が見られたものの、全体的には旧石器時代から江戸時代までが満遍なく出題されました。奇をてらった問題はなく、得点源にしたい大問でした。

大問4:歴史
 ちょうど昨年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」が放映されていたこともあり、渋沢栄一をテーマに江戸時代から昭和時代までの近世・近代史からの出題でした。ことわざ「青は藍より出でて藍より青し」の「青」を答えさ、さらにこのことわざの意味を説明する問題や、「オペラ」を答える問題など、受験生にとっては戸惑ってしまう場面があったと思われます。

<合格に向けてのポイント>
 出題分野別で見た場合、5年前までは大問5題構成で、地歴各2題、公民1題でしたが、4年前から大問4題構成になり、地理2題、歴史2題と、それまでと比べ公民分野(特に政治分野)からの出題が大きく減っています。代わりに国際分野や世界地理、世界史分野の出題が、地理や歴史と融合された形で見られるようになっています。過去問を解く場合は、5年前以前の入試問題と最新の入試問題とは出題分野や大問構成が異なることがありますので、ご注意ください。

 さらに、北嶺中では教科書に記載されていないことが出題されることが多々あります。今年の問題でいえば、在原業平から「伊勢物語」を、渋沢栄一から「オペラ」を問うような問題です。しかし、このような問題では、受験生の間で大きく差がつくようなことはありません。そのため、細かい知識をすべて網羅しようとする学習スタイルよりも、中学受験のオーソドックスな学習を進め、多くの受験生が答えられる問題を早く正確に答えられるように練習していくことで北嶺中の社会を攻略することができるでしょう。

 また、時事問題では、これまでの入試傾向として2、3年前の内容からの出題が多く見られていました。そのため、直前期での付焼刃的な対策では不十分という傾向が続いていましたが、今年度の入試では最新の話題を中心に出題されました。ただし、より深い理解が求められる面があり、やはり直前に詰め込むだけでは足りません。4、5年生くらいからニュースや新聞に目を通しつつ、世の中の出来事に関心を持ち、さまざまな視点から物事を考える意識を持って、自分の言葉で説明できるよう練習しておく必要があるでしょう。

 試験本番では読み流さざるを得なかったリード文も、北嶺中から受験生へのメッセージがふんだんに盛り込まれており、入学後の社会の授業で持ち続けてほしい視点や、自分が将来の社会を創る一員であることを意識させる内容が書かれているので、受験が終わって入学した後にじっくり読んだり、過去問として取り組んだりして北嶺からのメッセージを読み取ってほしいです。また、社会科を学習することで広がる視野を意識させる問題も多いので、中高生になってから改めて解いてみると新しい発見が得られることもあるでしょう。

協力:練成会グループ四谷大塚NET

 練成会グループ四谷大塚NETでは、2022年度の北海道内中学入試データや実績を報告する「道内入試総括」を2月13日に四谷大塚NET北海道本部校で実施する。開催時間は午前の部が10時~12時、午後の部が1時~3時。対象は中学受験を検討している保護者、定員は午前・午後の部ともに各80人。申込みは、1月22日午前9時よりWebサイトにて受け付ける。
《工藤めぐみ》

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