海陽学園で過ごす6年間の成長過程で欠かせないのが、学校行事や課外活動だ。「主体性は先輩から受け継がれていくという風土」の中で、生徒たちはどのように動き、考え、成長していくのか。数学を教える傍らハウスマスターとして生徒たちと生活を共にする中島啓介先生、2022年度海陽祭(文化祭)の実行委員長を務める内藤有哉さん、スチューデントリーダーに選出されている鴨志田大希さん(ともに高校2年生)に、学校行事や課外活動、キャリア教育など、海陽学園ならではの取組みについて話を聞いた。
入学してわかった海陽学園の魅力
--ご出身と、海陽学園に進学したきっかけを教えてください。
鴨志田さん:東京都出身です。海陽学園を知ったきっかけは親のすすめです。東京の学校もいくつか検討しましたが、夏休みに1泊2日の体験入学に参加して、学校の雰囲気や寮生活、海に囲まれ恵まれた立地と環境をこの目で見たのが決め手です。東京からは遠く、親元を離れる不安はありましたが、離れたことで自律できたことがたくさんあると思っています。
内藤さん:僕は大阪出身です。ひとりっ子だったので、兄弟姉妹のいるにぎやかな生活に憧れがあったんです。海陽学園が全寮制だということを知り、友達と24時間一緒に過ごせるのは楽しそうだなと思い、志望しました。実は受験前に見学に訪れたこともなく、大阪会場で受験したので、実際にキャンパスに足を踏み入れたのは入学前の制服採寸のときが初めてでした。これから始まる寮生活にワクワクしたのを覚えています。
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--入学してみてどんな印象を受けましたか?
内藤さん:海陽学園のハウスは学年別で構成されていますが、中学2年生と3年生、高校1年生と2年生はそれぞれ一緒にハウス(寮)で生活しています。ハウス全体で行う行事がとても多いのですが、先輩たちが行事の企画や運営にすごく積極的に参加していて。友達と連携したりまわりを巻き込んだりして、いろいろ楽しそうにやっている姿にとても影響を受けました。
鴨志田さん:本当に行事が多いですね。入学する前は、進学校なので勉強ばかりしているのかなと思っていたんですけど、入学してみたら、学校行事もハウスのイベントもたくさんあって、自分のハウスだけではなくて他のハウス、同学年だけでなくて先輩、たくさんの人たちと関わりがあるのが意外でした。5年間、ハウスマスターやフロアマスターとの共同生活を通じて、幅広い年代の方とコミュニケーションをとることで自分自身が成長できたと感じることがたくさんあります。同年代だけでは得ることができなかった考え方や価値観にたくさん出会える、入ってみたらそういう学校でした。
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--中島先生はハウスマスターのほか教壇にも立たれているそうですが、先生のご経歴、現在の海陽学園での役割を教えてください。
中島先生:私は、以前は大阪の公立高校で数学の教師をしていました。海陽学園に赴任して11年目になります。教員として採用され、その後学年主任として生徒たちと関わり、卒業生も送り出してきました。その後、自ら志望してハウスマスターを務めることになり数学教師と兼務しております。ハウスマスターは生徒と深く関わる立場なので、実際に生徒たちに教えてきた経験がものをいうケースも多々あります。現在は、ハウスマスターをしながら週4コマ授業をもっています。教室で数学を教えることも、ハウスの中で子供たちをじっくり見て父親役のように生活を共にすることも、どちらもとても楽しくてやりがいがあります。
--教科の先生と父親役のようなハウスマスター、両方を担っているのですね。ハウスマスターとして、生徒との関わり方で心がけていることを教えてください。
中島先生:ハウスマスターとしては4年目ですが、教師として生徒たちを卒業まで見送った経験から、子供たちの成長過程の中で「この時期はだいたいこんな感じ」というのがわかっているつもりです。たとえ子供が悪いことをしていても「今はこういうものかな」「もう少ししたら落ち着くかな」と鷹揚に構えられるというのはありますね。もちろん「これは大人が介入しないといけない、今が口をはさむタイミングだな」というときは、全力で子供と向き合います。そういった、メリハリのある視点で子供たちと接するようにしています。
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また、ハウス全体のバランスをとることも心がけています。日頃の生活に関する相談など細かいところに目を向けるのは、年が近いフロアマスターの方が向いています。大人が皆で同じようなことを言っては子供たちの息が詰まってしまいますので、子供を取り巻く大人たちの役割分担も大切にしています。
生徒主体のマインドを先輩から受け継がれることが“強み”
--たくさんある行事やイベントの中でも海陽祭は力が入るのではと思います。2022年度の実行委員長を務める内藤さんは今どのような準備を進めているのでしょうか(2022年9月1日取材時点)。
内藤さん:昨年、海陽祭の副実行委員長として先輩の元で海陽祭の運営を支えた経験を生かし、今年は実行委員長を務めることになりました。「こんなことをしたい」「こういうふうにしたら良いんじゃないか」と、僕や皆が出したアイデアを、企画案としてまとめたり、実現するにはどうすれば良いか、どうすればもっと楽しくなるかというのを“超優秀”な実行委員メンバーと具現化していく感じです。僕が何かするというよりも、仲間と一緒に創り上げていっています。苦労もありますがとても楽しいです。
今年の海陽祭の目玉は、打ち上げ花火とスカイランタンです。実際の火は使えないので、LEDを用いたスカイランタンを用意して、海陽祭のフィナーレで打ち上げ花火と一緒に飛ばしたら盛り上がるだろうなと幻想的なシーンを思い描きながら準備を進めているところです。
スカイランタンや花火の打ち上げの資金については、クラウドファンディングを通じて自分たちで調達しました。夏休みの初めにサイトをオープンして、多くの方々にご支援いただいたおかげで、夏休みの終わりには目標額の90万円を超える100万円を達成しました。今回プロジェクトを支援してくださった方へのお礼として、フィナーレのようすをライブ配信することも考えています。
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--想像しただけでも盛り上がりそうな企画ですね。苦労もあるのではないでしょうか。
内藤さん:一昨年、昨年とコロナの影響で海陽祭に保護者を呼ぶことができなかったのが心残りで、ふだん離れて暮らしているぶん、海陽祭にはせめて親だけでも今年は来てもらいたいと考えています。ただ、大勢の方に来てもらいたいけれど接触が多くなると感染リスクも上がってしまうので、できる限りの安全対策を考えながら、学校側に納得してもらって許可を得るところまで自分たちで交渉しないといけません。感染対策を取りながら保護者の方にも楽しんでいただくにはどうしたら良いかという難題をクリアしようと、皆で力を合わせて考えている最中です。
--海陽学園の行事運営はあくまで生徒主体だそうですが、先生から見て海陽学園ならではの運営力を感じるのはどのような点でしょうか。
中島先生:毎年5月に行われるスポーツフェスタ(体育祭)もそうですが、行事の運営や実行方法について僕ら大人はほとんど手を出しません。海陽祭に関しては、中学3年生以上から実行委員のメンバーを募ります。副委員長として経験を積んだ内藤くんが翌年の委員長になったように、経験をつなげていくということを生徒たちだけでやっているのは大したものです。感染対策も然り、いろいろ大変な調整ごとに関しても、自分たちで案を考えて、問題に対して自分たちで解決策を練って「これでどうですか」とネゴシエーションまでやっていく。「思いつきではダメ。きちっと段取りをしないと実現しない、そのためにはここまでやらないと」という上の学年からのマインドが自然と定着しているんですよね。その主体性、丁寧でプロセスを怠らないマインドが受け継がれていくことが海陽生の強みだと感じます。
とくに海陽祭の実行委員は総勢90名とかなりの大規模。ステージ担当、教室コンテンツの担当といった部署もたくさんあるので、それを束ねるのは大変だと思いますが、各部署で頻繁にミーティングをしながら自主的に活動していますね。担当の先生も、生徒たちが自由に動くぶんコントロールが大変だとは思いますが、何よりも生徒が発信する活動の実績を大切にするのが海陽学園の風土なんです。
--生徒主体で行う行事運営の風土が、科学の甲子園や国際数学オリンピックといった課外活動の実績にもつながっているのですね。
中島先生:科学の甲子園ジュニア大会での連覇達成、国際数学オリンピックでの金メダル獲得など多方面で華々しい結果を残していますが、個人の力はもちろんですが、チームワークの力も大きいと感じています。優勝した先輩たちが、次年度の後輩にその経験を伝えていくような場を設けたり、卒業してからもコンテストに出場経験のあるOBが声をかけてくれたり。生徒たちのなかでそういった文化が受け継がれていくんですよね。
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もうひとつの大きな強みは、やはり24時間同じ敷地内で生活しているというところですね。大会の直前は、例外的ではありますが夜の勉強時間も準備に充てたりすることもありますし、土日も活動に使うことができます。いつでも相談できて、話せる仲間や先輩がすぐ近くにいるというのは大きいと思います。
生徒たちは通学時間がないぶん時間を有効に使えるというのはありますが、授業や部活、夜間学習といった日課もたくさんあります。忙しいなかでも隙間時間を見つけてミーティングをするなど、海陽学園の生徒たちはタイムマネジメントに秀でていると大人から見ても思います。与えられるのを待っているのではなく、自分で何とか行動していくという意識がすごく強い。彼らを見ていると、6年間を海陽学園で過ごすことで、単なる学力やコミュニケーションスキルのみではない、総合的な人間力を得て卒業していくんだろうなと感じます。
日本を代表する企業がバックアップするキャリア教育
--企業のバックアップによる工場見学・企業訪問などキャリア教育についてどのようなものがあるか教えてください。
鴨志田さん:中学生のときに工場見学が、高校生になると企業訪問があります。名だたる有名企業を、実際に見ることができるのは有難いですよね。僕は三菱電機と伊藤園の工場見学に行きましたが、実際の生産現場などを見ることでモノづくりに対する理解を深めることができました。
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企業訪問は、実際にどこの企業に行くかを自分で決めることができるんです。自分が将来何をやりたいか、自分がどこに行ったらより成長できるのかということを深く考えるきっかけにもなります。僕は、海外との物流を支えている日本郵船という会社に興味があり、実際に企業訪問をさせていただきました。島国である日本は海外との交流や貿易は欠かせませんし、今後もっともっと重要性が増していくと思っているからです。企業訪問にあたって、日本郵船についてインターネットでいろいろ調べて臨みましたが、実際にどんな部署があって、どんな仕事をしているのかというのを現地で見ることができたのは貴重な経験でした。第一線で活躍する方々に、現状の日本の問題点について質問し、答えていただいたことは、自分のこれからのキャリアを考えるうえでもとても参考になっています。
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中島先生:海陽学園に賛同していただいている企業や、ハウスマスターの出向元の企業に訪問させていただくことが多いのですが、実際にグループワークで企画を出してプレゼンしたり、一般の見学者だったら見せないようなところまで見せていただいたりと、より密な企業訪問をさせていただいているところも数多くあります。訪問先は生徒自身が選ぶことができますが、就職活動さながらのエントリーシートを提出するなど、事前に企業のことを調べたうえで目的意識をもって訪問するようにしています。そうすることで、生徒たちが企業訪問から得られるものは多く、満足して帰ってくることが多いですね。企業からの出向者が多いという海陽学園ならではのメリットだと感じています。
--フロアマスターやOBによるソサイエティ(教養講座)も盛んだそうですね。どのような内容のものがあるか教えてください。
鴨志田さん:ソサイエティが開催されるのは月に1~2回ほどです。社会人であるフロアマスターが、出身業界の概要や仕事内容について紹介する講座の他、自身の大学受験の経験や趣味の一人旅の良さなどを話してくださいます。また、時には先輩生徒や卒業生の方が自身の経験談を伝えてくださることもあります。勉強とは違った自由なテーマで教養を提供し、興味を広げる場がソサイエティです。
僕が印象に残っているのは、科学の甲子園で優勝した先輩たちがアメリカの本大会に参加した話や、リニアモーターカーのソサイエティです。リニアの仕組みや開発秘話について知ることができておもしろかったですね。
内藤さん:フロアマスターがそれぞれの趣味について僕たちに語ってくれるソサイエティもあります。僕が一番おもしろいと思ったのは映画のソサイエティです。おすすめの映画を教えてくれて単純に映画を観て楽しむだけではなく、「映画から何を学んだか」「映画のキャラクターが人生の目標になった」というテーマで話してくれ、いろいろな生き方ついて考えさせられました。
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やりたいことを実現する力、取捨選択する力を培う
--海陽学園のこれからの取組みについて教えてください。
中島先生:これまでもこれからも、いかに生徒たちの興味を引けることを提供できるか、に尽きます。生徒自身が「これおもしろそうだからやってみよう」と思ったら、自分で考え行動するというのが海陽学園のスタンス。何か取っ掛かりを作るのは大人だったとしても、あとは自分たちで取捨選択をする、興味をもって深めていくという力を6年間で身に付けてもらいたいですね。
さまざまな分野の話を生徒たちに情報提供してあげるのが学園としてできることだとしたら、生徒たち自身もやはり情報をちゃんとキャッチして、さらにやりたいことをもってきてほしいですね。海陽学園で、ひいては社会に出てからやりたいことを実現させるにはどうしたら良いか。生徒たちの中にもっと海陽生らしいマインドを浸透できるようアプローチをしていきたいと思っています。
--今日お話を伺った活動から、生徒のみなさんの成長を感じるのはどんなときでしょうか。
中島先生:女子がいないこともあってか、中高一貫校の男子は高校1年生くらいまでは少々幼い印象があるんですよね。それが将来を意識するようになる高校2年生の夏を過ぎるころには、立派な大人の青年になっていくんです。入学したての、甲高い声の子たちが6年後には自分の背丈を超えるような青年に成長し、ホームシックで泣いていた子が仲間に囲まれて楽しくやっている姿を見ると本当にうれしく思います。
長い時間、子供たちと関わる私たちは、6年間かけて子供たちが変わっていく姿を保護者の方々の代わりに身近で見ることができます。それこそが私たち教員やハウスマスターの醍醐味であり、日々のやりがいかなと思います。子供たちが卒業するときはもう、ぐっと胸にくるものがあります。
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--最後に、生徒のお二人から中学受験を控えている子供たちにメッセージをお願いします。
鴨志田さん:中学受験をする理由は、良い学校で勉強して良い大学に入るためという目標ももちろんあると思うんですけれど、海陽学園はそれだけではありません。ハウスに入って友達や先輩と生活を共にすることや、生活面もすべて自分でやるということでも成長できる環境です。これまでの5年間、勉強や部活、委員会活動などいろいろなことに力を注いできましたが、共通していえる大切なことは、やはり日々の生活を丁寧に過ごすこと。朝起きて生活リズムを崩さないようにする、放課後も部活と勉強でメリハリをつけるなどを意識してきたことが自分自身の成長につながったと思っています。
海陽学園は行事や課外活動も盛りだくさん。積極的に参加することで、リーダーとしての経験はもちろんですが、逆にリーダーを支えるフォロワーとしての経験もできます。勉強だけに限らず、多くの点で成長できるとても良い学校です。受験勉強は大変だと思いますが、頑張ってぜひ入学してほしいなと思います。
内藤さん:海陽学園に入らなかったら出会えなかった人たちとたくさん関われたことが一番の財産です。たくさんの人たちと触れ合って、いろいろな価値観に触れて、世界の見方、自分の人生観が変わったと感じています。ここまで自分を変えてくれるのは、この環境しかありません。こんなに密な時間を過ごせる学校は日本では海陽学園しかないと思うので、ぜひみなさんも大きな期待をもって入学してきてほしいと思います。
--ありがとうございました。
「僕のまわりの仲間がとても優秀なんです」と実行委員長の内藤さん。スチューデントリーダーの鴨志田さんも「僕で良いのかなと思いながらも、期待に応えられるように頑張っています」と話してくれた。周りから一目置かれるリーダーシップだけではなく、謙虚さを兼ね備えた二人の姿が、海陽学園で過ごす6年間すべてが自己成長につながる唯一無二の環境であることをあらためて感じさせてくれるインタビューだった。
17年目を迎える日本屈指のボーディングスクール海陽学園では、自宅からオンラインで参加可能な個別相談会や入試説明会、全国各地で行われる対面の入試説明会などの生徒募集イベントを9月から12月まで随時開催中だ。入試では原則保護者・受験生(小学6年生)同伴の面談を実施するが、事前にオンライン個別相談会で面談を実施した場合、試験当日の面談は免除となる。申込みは海陽学園のWebサイトで受け付けている。
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