日本弁護士連合会は2022年10月18日、生活保護世帯の子供の大学等進学を認めることを求める会長声明を発表した。
厚生労働省に対し、生活保護世帯の子供が大学・短期大学・専修学校(以下「大学等」という)に進学する際に、世帯分離することを定めた通知を改訂し、その子供が得た収入を収入認定から除外する等の通知を新設することを求めるとともに、社会保障審議会生活困窮者自立支援および生活保護部会においても同様の方向で議論がなされるよう要望した。
その背景には、生活保護世帯の子供が大学等に進学する場合、厚生労働省の定める通知では世帯分離の扱いとなり、世帯員として扱わないことがある。そのため、世帯としてはその子供の分の生活扶助費が減額され、子供は奨学金やアルバイト収入で学費や生活費を賄わなければならない。
一般世帯の大学等への進学率は7割に達し、高校卒業後は大学等に進学する者が多数を占める実態がある。その一方で、生活保護世帯からの大学等への進学率は4割程度にとどまる。
現在の運用の前提は、高校を卒業すれば稼働能力を活用すべきであり、生活保護を利用していない一般世帯との均衡を図る必要があるとの考え方にある。
しかし、大学等に進学するとその者の稼働能力を高める蓋然性が高く、長期的な視点で捉えれば、稼働能力を活用していないと評価することはできない。また、一般世帯の大学等への進学率の高さからすれば、一般世帯との均衡を失することにはならない。
大学等で学ぶ権利を保障するため、大学等に進学した子供を世帯分離する取扱いについては見直すべきであり、そのことは、大学等での就学を通じた自立の実現を支援することになり、生活保護法が趣旨とする自立の助長にも資するものであると説明した。