東大医科学研、コロナとインフル同時流行を検証

 東京大学医科学研究所は2023年1月13日、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザが同時流行しているか検証結果を公表した。2019 年から 2022 年まで、世界各地域を代表する22か国では、同じ地域において同時期に同規模では流行していないことが明らかになった。

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  • 世界各国における COVID-19 およびインフルエンザの陽性例
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  • COVID-19 およびインフルエンザの陽性例数/インフルエンザ流行のピーク時に COVID-19 の発生率あるいは陽性例数がもっとも多かった地域およびインフルエンザの流行地域

 東京大学医科学研究所は2023年1月13日、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザが同時流行しているか検証結果を公表した。2019年から2022年まで、世界各地域を代表する22か国では、同じ地域において同時期に同規模では流行していないことが明らかになった。

 今回、東京大学医科学研究所ウイルス感染部門の河岡義裕特任教授と国立感染症研究所インフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センターの高下恵美主任研究官らの研究グループは、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行がインフルエンザの流行に与える影響を調査。世界保健機関の全6地域を代表する22か国(南アフリカ、エジプト、フランス、ドイツ、イスラエル、イタリア、オランダ、ポーランド、スペイン、イギリス、ブラジル、カナダ、メキシコ、アメリカ、インド、タイ、オーストラリア、中国、日本、フィリピン、韓国、ベトナム)について、2019年第1週から2022年第45週までのCOVID-19およびインフルエンザの陽性例数を比較した。

 COVID-19およびインフルエンザの陽性例数について、解析した22か国すべてにおいてCOVID-19の陽性例数と比べてインフルエンザの陽性例数が極めて少ないことが明らかになった。COVID-19とインフルエンザの流行状況では、解析したすべての国においてCOVID-19の感染拡大後にインフルエンザの陽性例数が著しく減少していた。

 このうち、日本と韓国ではCOVID-19の流行下において終始インフルエンザの流行が低い状況が続いた。また、フランス、ドイツ、イタリア、イギリスを除くその他の国ではCOVID-19とインフルエンザの流行のピークに明らかな逆相関が見られた。

 ドイツではインフルエンザの陽性例数が非常に少なかった一方、フランスでは第13週、イタリアでは第12週、イギリスでは第15週にインフルエンザの流行のピークが認められた。さらにこれらの3か国内における流行状況を詳しく調べたところ、インフルエンザの流行はCOVID-19の流行とは異なる地域で増加していることが明らかになった。

 これらの研究により、COVID-19とインフルエンザが同じ地域において同じ時期に同じ規模では流行していないことが示された。北半球ではCOVID-19流行下で4度目のインフルエンザシーズンを迎え、日本国内におけるインフルエンザ定点当たり報告数も増加傾向にある。COVID-19とインフルエンザの同時流行を評価するために、引き続き流行状況を注視する必要があるとしている。

 研究結果は2022年12月25日、International Society for Influenza and other Respiratory Virus Diseases(インフルエンザおよびその他の呼吸器ウイルス疾患学会)が発行するオープンアクセス誌「Influenza and Other Respiratory Viruses」に掲載された。なお、検証についての各国の陽性例数のグラフはWebサイトで公開している。

《田中志実》

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