多様化する国際教育の現場、わが子に最適な学びを選択するには

 国際教育評論家の村田学氏と、ローラスインターナショナルスクール学園長の日置麻実氏、東京インターナショナルスクールの坪谷良氏、ウィズダムアカデミー代表取締役の鈴木良和氏によるオンライン講演会の模様を紹介する。

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多様化する国際教育の現場、わが子に最適な学びを選択するには
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 インターナショナルスクールや国際教育に積極的に取り組んでいる小学校、バイリンガル幼稚園・保育園、語学教育・サービス等、最新の国際教育情報に触れられる「国際教育フェスタ~幼稚園・保育園・小学校」が2023年2月18日に二子玉川ライズで開催される。

 フェスタには、ウィズダムアカデミーPrime、キッズ大陸 フロンタウン生田園、QQキッズ、Crimson Global Academy、Global Learner's Institute武蔵小杉校、昭和女子大学附属昭和小学校、神石インターナショナルスクール、セブンシーズインターナショナルスクール、東京インターナショナルスクールキンダーガーテン/アフタースクール、ローラスインターナショナルスクール、おうちインター(資料参加)の11の学校と企業が参加し、子供の学び体験や情報、先生と保護者の対話の機会を提供する。参加は無料で、事前予約が必要。

イベント詳細・事前予約(進学相談.com)

 これに先立ち2023年1月21日、国際教育評論家の村田学氏と、各々フェスタ出展校であるローラスインターナショナルスクール学園長の日置麻実氏、東京インターナショナルスクール副理事で東京インターナショナルスクールグループCOOの坪谷良氏、ウィズダムアカデミー代表取締役の鈴木良和氏によるオンライン講演会が開催された。

日本における国際教育の現状

 第1部では国際教育評論家の村田学氏が「日本における国際教育の現状」と題し、インターナショナルスクールの開校状況や、国際教育に注力する学校の現状と日本の学校との違いについて紹介した。

 本格的な国際教育をわが子に受けさせたいという保護者のニーズを受け、国際教育系の学校の開校が相次いでいる。

 村田氏は、インターナショナルスクールが、大きく3つに分類されていることを説明。ケンブリッジ国際認定校、国際バカロレア(IB)指定校、さらにアメリカやカナダ、フランス等の国ごとの学校だ。国ごとの学校としては、ここ数年は英国式のインターナショナルスクールの開校が増えている。

 国際バカロレア指定校は、政府が200校以上の開校を目指しており、公立学校も認定されている。文部科学省によると2022年12月31日時点で認定校および候補校は191校で、うち学校教育法第1条に規定されているいわゆる一条校は72校。

 従来、私立学校が日本語で教えていた内容を英語で教えるような取組みも増えており、授業のほとんどが英語で行われる国際高等専門学校(ICT)のような変化も増えている。

 日本の学校とインターナショナルスクールとの違いについて村田氏は、「先生の立ち位置が異なります。日本の学校では、先生は生徒の前に立ち、知恵や知識を授ける存在であることが多いですが、インターナショナルスクールの場合は先生と生徒の距離感が近く、円を描くように学びをファシリテーションするスタイルが一般的です。日本の学校が知識をつける場だとすると、インターナショナルスクールの場合は情報を知識に変えることこそ学びだと考えていると言えると思います。どちらが良いという話ではありませんが、日本の学校でも、インターナショナルスクールのように先生がファシリテーターとなり、議論しながら進めるような授業が増えていくのではないでしょうか」と話す。

プリスクール選択のポイント

 本格的な国際教育をわが子に受けさせたいと考える保護者にとって、いつから、どのようにスタートさせるかは大きな悩みだろう。

 幼少期であればプリスクール、小学校からはインターナショナルスクールの他、放課後の時間に英語に触れられるアフタースクールも選択肢に入るだろう。中学、高校くらいからは留学も選択肢となる。

 保護者の希望で国際教育を受けさせる場合、最初に検討されるのはプリスクールだ。「プリスクールやインターナショナルスクールへの入園・入学準備については、スクールで過ごす時間や学費といったスペックよりも、保護者自身が理念に共感できるかどうかがもっとも重要です。語学力をはじめ、生活力等、子供のスキルをどこまで伸ばせば入園・入学基準に到達するのかということに目が行きがちですが、子供をどう育てたいか、どんな教育を受けさせたいかという各家庭の子育て方針と合致しているスクールを見つけることを優先させていただきたいですね」と村田氏は語る。

 プリスクールに通わせる場合、その先の進路も含めて考える必要がある。幼児期に身に付けた英語力をどのように維持し、伸ばしていくかということを考えることも重要だ。「プリスクールから日本の小学校に進学する場合は、英語教育が充実しているアフタースクールを利用する等、英語に触れられる環境を維持することが大事です。子供の英語力は、放っておくと想像以上の短期間で低下していきます。英語に早くから触れさせることは、その後もずっと続けていかなければならないということだと考えていただくと良いと思います」と村田氏は付け加えた。

スクールの代表が語る真の国際教育

 第2部では「国際教育クロストーク」と題し、村田氏をモデレーターに、国際教育の担い手として第一線で活躍する3名とともに、日本における国際教育の現状とポイントについて、セッションが行われた。

ローラスインターナショナルスクール

 ローラスインターナショナルスクールはケンブリッジ認定を受けているインターナショナルスクールだ。プリスクールから小・中等部およびアフタースクールやサタデースクールコース等幅広く、国際教育を受けたいと願う子供たちをさまざまなコースで迎え入れている。「世界をより良く変える未来のイノベーターを育てるという理念のもと、STEM教育、サイエンス教育、プログラミング教育、起業家教育等に力を入れています」とローラスインターナショナルスクールの日置麻実学園長は説明する。

東京インターナショナルスクール

 学校法人東京インターナショナルスクールは世界的な学習プログラムとして有名な国際バカロレア認定を受けている、外国人を対象としたインターナショナルスクール。国際バカロレアのカリキュラムを採用し、探究型のカリキュラムを展開している。

 また、上記学校法人東京インターナショナルスクールとは別事業として、プリスクールとアフタースクールを運営しており、こちらでは日本語を母国語とするお子さんを中心に受け入れている。「プリスクールとアフタースクールでは、日本の教育システムと連動しながら、探究型の学びを行いたい日本の家庭をおもな対象として受け入れています。授業はすべて英語で行われ、英語を学ぶのではなく英語で学ぶ学校です」と東京インターナショナルスクール副理事兼東京インターナショナルスクールグループCOOの坪谷良氏は説明する。

ウィズダムアカデミーPRIME

 プリスクールとアフタースクールを運営しているウィズダムアカデミーは、2023年に英語特化型のアフタースクール「ウィズダムアカデミーPRIME」を新たに6校開校し全7校(Prime世田谷深沢校・Prime市ヶ谷飯田橋校・Prime自由が丘校・Prime杉並阿佐ヶ谷校・Prime有明豊洲校・Prime千葉幕張校・Prime横浜馬車道校)とする予定だ。共働き世帯が珍しくない昨今、放課後の時間をただ“過ごす”だけでなく、英語を含む習い事や学習環境のある学童で子供を過ごさせたい親のニーズは高まっている。ウィズダムアカデミー代表取締役の鈴木良和氏は「“放課後ホームステイ”をコンセプトに、家にいるようなアットホームな環境を用意しています。普段の生活の中で英語に慣れ親しんでほしいですね」と語る。

英語学習の頻度と家庭での取組み

 クロストーク後半は、インターナショナルスクールやプリスクール運営の経験を通じ、子供に国際教育を受けさせたいと願う保護者の悩みに答えるかたちで進行した。

 アフタースクールを検討している保護者からの「週2日、4時間~6時間ほど英語に触れるだけではあまり意味がないか」という質問に対して、坪谷氏は「英語学習を考えるときのポイントは、長期的に考えることです」と回答。「たとえば18歳までに、英語力をどのくらい伸ばしたいのかということを考えることが大切です。幼児期に一時期だけ英語をしっかり学んでも、そのあと続けなければ意味がありません。週に2日程度であっても、継続していくことが大切です」と継続の必要性を強調した。

 日置氏は、坪谷氏の意見に「どのような方法でも良いから、毎日何かしら英語に触れることができる環境があればベストです。そのためにはご家庭で英語を使う等の工夫もお勧めです。さらに、夏や冬等の長期休みには、シーズナルなイベントがアフタースクール等で開催されます。それらをうまく活用したり、ご家族で海外旅行に行ったりするのも良いですね」と付け加えた。

 鈴木氏は、「週に数時間であっても、英語に触れておくことは良いですね。最初は英語に抵抗を示すお子さんでも、取り組む時間が積み重なると、英語が好きになるケースがあります。スキルが伸びるタイミングは子供によって異なりますが、早めに英語に触れる環境を与えることで開花する場合もあると思います」と語った。

国際人としての素養を家庭で育むには

 グローバルで活躍できる人に育ってほしいと願う保護者は多い。イベント中、複数の保護者から家庭での過ごし方について質問があった。

 坪谷氏は「家庭の役割は、学校でできない体験をさせてあげることです。特に“生の体験”を意識してほしい。家族みんなで感動を分かちあう、旅行に行って土地の文化を感じるというようなことです。もっとも大切なのは、保護者が日本人としてのアイデンティティをもちつつ、物事をグローバルに考え、それを実行している姿をお子さんに見せることだと思います」と回答した。

 インターナショナルスクールに通い、異文化や英語でのコミュニケーションが日常となると、日本の文化や歴史等の意識や知識が少なくなりがちだ。「家庭では日本語でたくさんコミュニケーションをとり、日本語のドラマや映画を見るのも良いと思います」と日置氏。さらに「日本の価値観や文化に根差した、日本語での豊かなコミュニケーションを、親子でするようにしてほしい。日本のことを知ってから海外に出たほうが、対比する視点から物事を見ることができ、違いを感じることができるようになります」と言う。

 鈴木氏は「人間形成という広い視野で子供を見てほしい。特に幼少期はあれもこれもという視点ではなく、できるようになったことを認め、褒め、違いを楽しめる心を育てれば良いのではないでしょうか」と幼少期の国際教育の難しさを踏まえつつアドバイスした。

インターナショナルスクールへの入学基準

 インターナショナルスクールの初等部への入学を検討している保護者からは、必要な英語力に関する質問があがった。

 これに対して坪谷氏、日置氏両者ともに、英語でコミュニケーションが取れ、授業での英語の説明を理解できる程度の英語力は必要と回答した。補足として坪谷氏は、「学校により基準があるので、良く調べる必要があります。オールイングリッシュのインターナショナルスクールではコミュニケーションがすべて英語となるため、最低限の意思疎通ができ、集団行動ができることも必要。さらに、(プリスクールとアフタースクールを除く)東京インターナショナルスクールでは、学校からの事務連絡や緊急連絡もすべて英語のため、保護者の英語力も問われます」と説明した。

 日置氏が学園長を務めるローラスインターナショナルスクールの場合は、保護者の英語力は問わないといい、学校ごとにそれぞれ詳細を調べる必要性を伝えた。

 インターナショナルスクールの入学時の選考について、「プリスクールがあるインターナショナルスクールの場合はプリスクール生が優先されるのか」という質問もあった。

 これに対し、坪谷氏、日置氏ともに、インターナショナルスクールの選考に、系列のプリスクールに通っていたかどうかは関係しないと回答。ただし、系列のプリスクールに通っている場合、教育理念や価値観への理解の深さや、情報の共有が早くなるという意味では有利に働く場合もあり得ると補足した。

多様化する国際教育、理念に共感できる学校選びがポイント

 日本の国際教育の場は現在、インターナショナルスクールだけでなく、プリスクールやアフタースクール、そして私立・公立の国際バカロレア指定校、国際高専等幅広い選択肢がある。本イベントでは、各々タイプの異なる国際教育の現場からの生の声が届けられ、入園・入学後のイメージを具体化できたのではないだろうか。

 坪谷氏は「インターナショナルスクールと一口に言っても、その内容は実に多様化しています。そこで、学校ごとの特徴を良く理解し、わが子にあった学校選びをすることが重要になっていると感じています」として、今回のような機会に、さまざまなスクールの先生たちと直接会話してみることの重要性を説いた。

 インターナショナルスクールやプリスクール、英語特化のアフタースクール等、国際教育のスクールが一堂に会し、直接対話できる機会は少ない。2月18日、二子玉川ライズで開催される「国際教育フェスタ~幼稚園・保育園・小学校」へ足を運んでみてはいかがだろうか。

イベント詳細・事前予約(進学相談.com)

《田中真穂》

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