スタンフォード大・佐々木麟太郎に続け 幼少期からの海外進学準備

 2024年2月18日に開催された「国際教育フェスタ~幼稚園・保育園・小学校」にて、Crimson Education / Crimson Global Academy 日本代表 松田悠介氏とリセマム編集長の加藤紀子による「国際教育スペシャリスト対談」が実現。国際教育の最前線をレポートする。

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 「国際教育フェスタ~幼稚園・保育園・小学校」が2024年2月18日に二子玉川ライズ スタジオ & ホールで開催された。本イベントは幼児・小学生とその保護者を対象に、インターナショナルスクールや国際教育に積極的に取り組んでいる小学校、アフタースクール、親子留学、語学教育・サービス等を提供する14の学校と企業が参加。学校や企業の担当者と直接対話したり体験したりできるブースを展開。子供の学び体験や情報、先生と保護者の対話の機会が提供され、国際教育に関心のある多くの家族連れが参加した。

 フェスタの目玉となったのは、国際教育の第一人者と、リセマム編集長の加藤紀子が国内最先端の情報を伝える「国際教育スペシャリスト対談」。「海外トップ大進学につながる幼少期からのグローバル教育」と題し、グローバル人材育成のスペシャリストであり、オンラインの無学年制インターナショナルスクール Crimson Global Academy日本代表を務める松田悠介氏を招いて特別対談が開催された。

佐々木麟太郎選手はなぜスタンフォード大学を選んだのか

 岩手・花巻東高校の佐々木麟太郎選手のスタンフォード大学への進学が話題だ。佐々木選手は日本の高校野球史上最多となる140本塁打の記録をもつ最強スラッガーだ。日本を代表する野球界のルーキーであることは間違いないが、それでも世界大学ランキングのトップクラスに君臨するスタンフォード大学への入学には、多くの人が驚きをもって受け止めたのではないだろうか。

 これまで数多くの海外大学進学支援に携わってきた、オンラインの無学年制インターナショナルスクール Crimson Global Academy日本代表を務める松田悠介氏は、日本の大学におけるスポーツ推薦との違いに触れ、「アメリカの場合は、スポーツだけやっていれば良いというわけではなく、文武両道が求められる」という。スタンフォードのような名門大学では、スポーツでの実績はもちろん、留学生であれば英語力を含めた高い学力も同時に求められるというのだ。アスリート枠で合格しても、入学後は他の学生と同様に授業を履修し、単位が取れなければ容赦無く落第させられ、競技は続けられなくなる。つまり佐々木選手は、野球についてはいうまでもないが、学校の成績も英語力も、スタンフォードが入学を認めるだけの十分な文武両道の実力を伴っていたということになる。「昨年、海外進学塾 Crimson Educationからも、サッカーでハーバード大学に入学した生徒がいますが、やはり彼もサッカーと学業をしっかりと両立させていました」と松田氏は語る。

2024年2月18日に開催された「国際教育フェスタ~幼稚園・保育園・小学校」での国際教育スペシャル対談「海外トップ大進学につながる幼少期からのグローバル教育」

 「アスリートは現役で活躍できる期間が限られており、引退後のセカンドキャリアが日本でも課題となっています。佐々木選手も、スタンフォードを選んだ理由の1つとして、その点にも触れていました。スポーツの第一線で頑張っている子であれば、その才能を伸ばす大望でなく、引退後のセカンドキャリアの幅の広さから、今後は海外大学への進学を視野に入れるケースが増えてくるのではないでしょうか」

得意なことや好奇心の掛け算でスペシャルな存在に

 佐々木選手のように1つのものに突出した才能がなくても、「自分の好きなこと、得意なこと、好奇心などを掛け合わせることで、自分にしかないユニークさが発揮できるはず」と松田氏はいう。そのために保護者は、子供の好奇心の「芽」を摘まないでほしいと訴える。

 「ゲームのキャラクターが好き、YouTuberになりたい、どれも最高です。大人はついつい『そんなものは時間の無駄だからやめなさい』などと言いがちですが、まずは没頭し、探究することに付き合ってあげてほしい。たとえばYouTuberになりたいなら、企画や構成案を練ったり、撮影や音響について学んだりするなど、実際に一緒に作ってみるといった体験こそが、没頭と探究の楽しさを知る大切な原体験になります」

 その際、それが将来、本当にYouTuberとして自立できるかどうかは重要ではないと松田氏は強調する。

 「自分の夢や目標に向かうことに対し、誰にも邪魔されず、安心して没頭できること。応援してくれる人が身近にいること。そんな中で自分が主体となって計画を作り、成功を目指して必要なスキルを身に付けていく。そうした環境こそが、子供の未来を飛躍させるエンジンを育むのです」

過渡期を迎える日本の教育

 親世代が受けてきた、年齢で教育の内容が決められ、チャイムで時間を区切り、先生が前に立って教えることを静かに座って聞ける、先生の教えを忠実に守れる子を育てる教育は、時代に合わなくなっているのは間違いないだろう。工業化時代にベストフィットしたのは、そうやってマニュアル通り従順にやるというスキルだが、今はゼロからイチを生み出せる力が求められていると松田氏はいう。

 「そのためには子供が自分で自分のやることを決める経験が大事。人から決められてやったことは、失敗した時にその人のせいにできるけれど、自分で決めたことは誰のせいにもできません。留学経験のある人の多くが後悔しないのは、自分で決めて行ったから。語学の壁もあって勉強のハードルが高くなる上にお金もない。そんな苦労ばかりでも最高の経験になるのは、自分で決めたことだからではないでしょうか。だからこそ、小学校時代から子供に自己決定権をもたせてほしい」という松田氏の言葉には、会場にいた保護者の多くが大きく頷いていた。

Crimson Global Academy日本代表 松田悠介氏

海外進学を見据え、幼少期からできることとは

 海外進学を見据えた時、好きなことや得意なことへの没頭体験以外に、幼少期からできることはあるのだろうか。まずは英語だ。

 「幼少期に耳が育つため、できるなら早めに英語学習はスタートしたほうが良いですね」という加藤の言葉に付け加えるように、「毎日30分ずつでも良いから、今日から始めてほしいですね」と松田氏。意外だったのは、子供がインターナショナルスクールに通う場合でも、「決して『うちの子は英語は大丈夫』と思わないでほしい」と強調したことだ。

 「私たちが日本語で何不自由なく生活できても、小論文や現代文を読み解く時には苦労するように、英語で日常会話ができるからといって、英語で思考し、文脈を理解し、まとまった文章を書いたり、ディスカッションしたりできるレベルまでアウトプットの質を高められていないケースが多い。インターナショナルスクールに通っているから英語は問題なしと思うのではなく、英語も継続して勉強しなければいけないのです」

 トップレベルの海外大学に出願するなら、推奨最低スコアはTOEFL100点以上。TOEICならほぼ満点、英検なら1級を優に超えるレベルだ。一朝一夕でできるようにならないだけに、「アカデミックで通用する英語力を意識して目指してほしい」と松田氏は訴えた。

リセマム編集長 加藤紀子

 また、数的処理能力も重要だという。「日本では文系・理系に分かれ、文系の場合は数学の勉強を避ける傾向が根強いですが、実は数学はすべての教科の基礎になります。ビジネスや経済、心理学をはじめ、日本では文系に括られる学問でも、数字に強くなければ太刀打ちできません。テクノロジーが加速度的に発展し続けている今、数的処理能力はますます重要になるので、早い段階で身に付けておきたいところです」

 上記を踏まえ、松田氏は、英語と算数(数学)は、子供の進度に合わせつつ、先取り学習をすることを提案している。松田氏が運営しているオンラインスクールでは、オンラインでのメリットを生かし、世界中のスペシャリストから個別最適な授業を受けることができる。

 「これからの時代、年齢や学年に関係なく、理解度に合わせて進められる個別オンライン学習をうまく組み入れることがカギ。その子にもっともフィットする形で学びのパフォーマンスを最大化できれば、アカデミック面でも大いに差別化することができるでしょう」

挑戦し続けられる子に育てる 親の関わり方の基本

 佐々木選手のように、成長したいと積極的に挑むことができる子供と、挑戦を怖がる子では、どのような違いがあるのだろうか。

 松田氏は、「成長マインドセットをもっているかどうかが大きな差になる」という。成長マインドセットとは、失敗を恐れず、新しいことに挑戦したいと思える心を指す。成長マインドセットをもっていれば、高い目標を掲げて努力でき、批判や失敗があっても挫けず、むしろそれを糧にして、さらなる成長を目指せる。一方で、失敗したくないからチャレンジしない、これ以上は無理だと思い込んでしまうのが固定マインドセットだ。では一体、どうすれば、成長マインドセットをもつ子供が育つのだろう。

 その秘訣は、「結果ではなく、プロセスを褒めること」だと松田氏は強調する。

 たとえば、100点のテストをとった時、子供に「100点取れてすごいね」と褒めたとする。このように結果を褒められた子供は、「100点を取れないと褒めてもらえない」と不安になり、失敗を恐れてより高いハードルに挑戦しなくなったり、カンニングをしてでも100点を取ろうとしたりすることが研究によって明らかになっていると松田氏はいう。

 「成長マインドセットを育てるには、『毎日コツコツ頑張っていたね』『繰り返し解き直して、しっかり復習していた成果だね』など、頑張っていたプロセスを褒めることが大切なのです。残念ながら、日本の教育ではいまだに点数で評価されがちなので、固定マインドセットになってしまう子供が少なくありません。だからこそ家庭では、プロセスにフォーカスした声掛けをし、成長マインドセットを育ててあげてほしいと思います」

 最後に松田氏は、保護者へのメッセージとして、「海外で学ぶことは、人生を変えるパワーとチャンスを秘めている」とし、「これならわが家でもできそうだと思えることから少しずつでも始めてほしい」とエールを送った。講演後も松田氏に個別のアドバイスを求める保護者が長蛇の列となり、海外進学への関心の高さが伺えた。

《田中真穂》

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