医学部入試最前線を駿台が解説「面接が合否を分ける、総合型選抜は新たなチャンス」

 今まさに渦中の2025年度医学部入試の動向、さらにはひと足早く終了した総合型選抜入試の結果の速報から、医学部入試の最前線について市谷校舎の副校舎責任者・細谷一史氏に解説してもらった。

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駿台予備学校市谷校舎の副校舎責任者・細谷一史氏
  • 駿台予備学校市谷校舎の副校舎責任者・細谷一史氏
  • 市谷校舎の副校舎責任者・細谷一史氏
  • 「総合型選抜は、同じ大学でさらにもう1回受験機会を得られるチャンス」と細谷氏
  • 「自分なりの答え」を用意できた生徒は、自分の中にぶれない軸をもっているため面接で圧倒的に強いという

 医学部受験専門の駿台予備学校・市谷校舎。近年増えつつある総合型選抜入試にも対応し、合格実績を上げている。

 そこで、今まさに渦中にある2025年度医学部入試の最新動向とともに、総合型選抜入試の速報から、医学部入試の最前線について市谷校舎の副校舎責任者・細谷一史氏に解説してもらった。

私大専願者は増加傾向に

--大学入学共通テスト(以下、共通テスト)が終わり、医学部入試は私大の1次と2次、さらに国公立大の2次試験が続きます。今年の出願動向について特徴的な動きがあれば教えてください。

 共通テストでは、2025年度の志願者数は49万5,171人で、前年比で3,257人(0.7%)増えており、7年ぶりの増加となりました。ところが、医学部の志願者を見ると、昨年と比較して減少しています。

 これは、高校が2025年度(令和7年度)から新学習指導要領に対応しているため、共通テストで旧課程履修者に新科目「情報I」が課されるなど、新課程への切り替えに伴う負担を回避する傾向があったからだと考えられます。このため、昨年に限って言えば、医学部に関しては、例年なら1年浪人してでも難関の医学部を狙いにいく学力のある受験生が、中堅レベルの大学や医学部以外の学部に進学を決めるという安全志向が強く見られた年でした。 

 ですから、今年度は減少しているといっても、昨年が「新課程を避けたいから、とにかく今年度中にどこか合格を決めたい」と願う受験生が、例年よりも多くの大学に出願していた特殊な状況からの反動にすぎません。たとえば今年度、私立医学部の入試で先陣を切った愛知医科大学では受験者数が昨年比89%と減少していますが、これは「減った」というより「落ち着いた」と見るべきでしょう。

--新課程への切り替わりを回避せず、医学部合格を目指して浪人を選んだ既卒生にとってはどのような状況でしたか。

 今年は旧課程履修者に対しての経過措置が取られていたため、こと共通テストに関していえば、既卒生は昨年と比較するとむしろチャンスの年だったといえるかもしれません。市谷校舎でも高卒クラスの得点は上々で、リスクを避けず、初志貫徹で浪人を選んだ生徒にとって、今年度の共通テストでの経過措置は追い風になったと言えそうです。

--昨年度は安全志向が強まったとのことですが、今年度から新課程になって科目が追加されるだけでなく、問題数が増えたり試験時間が長くなったりと、共通テストへの負担がさらに増えていますね

 そうですね。センター試験から共通テストに変わったタイミングあたりから、そうした負担を避けるべく、医学部でも私大専願の受験生が増加傾向にあると感じています。センター試験までは、その対策が私大の医学部の入試にも役立つことが多かったのですが、共通テストになって以降はこのセオリーが当てはまらなくなっています。

--つまり、共通テストにも独自の対策が必要となり、共通テストと私大医学部の対策を並行して行うことは決して効率が良いとは言えないと。

 おっしゃる通りです。私大医学部でも共通テストを受けておけば、共通テスト利用入試も受けられる。だからチャンスが広がると考えがちですが、実態として定員はきわめて少数で、概ね9割近く取れていないと合格には届きません。同じ大学で、共通テスト利用入試では不合格だったのに、一般入試で合格するケースは毎年非常に多い。そのうえ、国公立大は前期後期に各1校ずつしか出願できず、さらに後期を実施する大学は減少しており、もはや前期試験一発勝負になりつつあります。

 家庭の事情が許し、医学部なら私立でも良いというなら、共通テストのためだけに無理をして国語や社会の勉強をするよりも、私立向けの主要教科に専念することは合理的な選択だと思います。

--私立医学部は国公立に比べ複数校受験できるため、医師へのスタートラインに立てる可能性が高くなりますね。けれども、私立の学費は安くなるほど偏差値が高くなるので、経済的に厳しい大学が多いと感じているご家庭は少なくありません。それでも実は私立に通える秘策があればぜひ具体的に教えてください。

 ひとつは入試で設けられている地域枠。そしてもうひとつは奨学金です。国や大学が用意している奨学金もありますし、地域枠以外にも都道府県、市区町村単位で設けている奨学金を使っている人も多いです。特に地方は医師が不足しているので、「将来ここで働いてくれるなら」という趣旨で、地域枠とは別に設定しているところも少なくありません。さらには、医療法人単位で設けている奨学金もあり、こうしたものはその系列病院で所定の期間働けば返済が免除されるケースもあります。インターネットで検索するだけでもさまざまな奨学金が見つかると思いますので、保護者の方はぜひ一度調べてみてください。

 現役医師の話によると、奨学金は本人が医師になれば十分に返せるとのことです。保護者の方は子供に負担をかけたくないと不安を感じるかもしれませんが、それで医学部を諦めさせるのは本末転倒ではないでしょうか。「6年間できるだけ工面はするけれど、足りない分は奨学金でカバーできるから医師になって自分で返してね」というコンセンサスが親子で取れていれば、こうした奨学金を活用して私立への進学という道を広げることは十分可能だと思います。

市谷校舎の副校舎責任者・細谷一史氏

総合型選抜は「受験機会の創出」に他ならない

--今年もすでに私大医学部には多くの合格が出ているとのことですが、合格者にはどのような共通点がありますか。

 毎年多くの合格者を見てきて感じるのは、やはり過去問の演習に十分な時間を割き、その大学の傾向を理解してしっかりと対策できた生徒が圧倒的に強いですね。特に私大医学部の入試は大学によって試験の傾向が大きく異なりますので、自分の志望する大学の過去問にいち早く着手することが重要です。

 今年は共通テストの実施時期が例年より1週間程度遅かったため、多くの受験生が例年以上に共通テスト対策に時間をかけてしまったことが想定されます。そうなると、私大医学部の過去問演習に割く時間がどうしても削られてしまうので、特に今年に関しては、過去問をどれくらいやり込めたどうかが合否の分かれ目になったのではないでしょうか。医学部は他の学部と違い、共通テストが終わるとすぐに入試がスタートし、2次試験もあるためスケジュールが非常にタイトで、1月2月に落ち着いて過去問に取り組むというのは現実的ではありません。私立を複数校受験するなら、共通テストの対策以前から、いつどの大学の過去問をやるのか、そして、ただ解くだけではなく、そこで見つかった弱点の補強と復習に要する時間を含めて、具体的な計画を立てておく必要があります。

--最近は総合型選抜の割合も増えつつあります。医学部の入試もすでに9月から始まっていますが、医学部の総合型選抜の現況を教えてください。

 実は今、医学部でも定員全体の2割が総合型選抜によって決まります。定員9,420名の2割なので、約2,000人がこの選抜で入学することになります。ちなみに、保護者世代に馴染みのある推薦入試は学校推薦型選抜と呼ばれるものですが、これは1つの医学部で5人程度ですから、実施している大学をすべて合わせても数百人程度の枠です。これに比べると総合型選抜は約2,000人と数も多く、この枠を狙うのは合理的だといえるでしょう。

 市谷校舎では総合型選抜での合格者数も多く、一部の生徒は年内に入学手続きを済ませ、すでに受験を終了しています。

--一般入試が主流だった保護者にとって、一般入試以外での受験も視野に入れるのは「二兎を追う」ようなイメージがあります。「二兎を追う者は一兎も得ず」にはならないのでしょうか。

 保護者世代のイメージだと、推薦=優等生で、学校の勉強が抜群に良い生徒が選ばれると思われている方が多いかもしれません。実は総合型選抜は、医学部でも大学によっては評定平均が3.5程度でも受験可能なケースもあり、必ずしも抜群に良い成績が求められるというわけではないのです。また、この選抜では必ず学科試験が課され、学校の評定が高い方が合格するわけでもありません。

 また、一般入試に比べて面接や小論文の比率が高いのも特徴です。しかし、医学部受験生は一般入試でも小論文や面接の対策は必ず必要なので、総合型選抜は一見入り口がまったく異なり「二兎を追う」ように見えるものの、実は一般入試とほぼ同様の対策で新たな受験機会を創出できるのです。

--医学部入試に関しては、「二兎を追う」のではなく、受験のチャンスが「増える」ということですね。

 はい。現役生のみならず、浪人生でも挑戦できますし、同じ大学でさらにもう1回受験機会を得られるわけですから、トライしない手はないと思います。

--とはいえ、総合型選抜というチャンスを有効活用するには、学校の成績もキープしつつ、一般入試より早く実施される学科試験や小論文、面接にも備えなければいけない。となると、高校入学直後からの長期的な取組みが求められますね。

 医学部を目指すのであれば、総合型入試に限らず一般入試でも、高校で部活を引退してから本格的に受験勉強を始めるようでは到底間に合いません。高校1年、あるいは中学生のころから、医学部受験という目標を念頭に置いて、日々コツコツと積み重ねる方が確実に有利です。早く準備をすればそれだけ受験機会が増えるということを考えると、総合型選抜のチャンスを活かせるのは「学校の勉強を毎日きちんと着実にこなせる」かどうかですね。

「総合型選抜は、同じ大学でさらにもう1回受験機会を得られるチャンス」と細谷氏

面接対策に特化した講座を新規開講

--最近医学部では面接が重視され、面接の得点次第で逆転合格が起きることもあると聞きます。駿台ではどのような対策をしているのでしょうか。

 一般入試に限らず、「学校推薦型選抜」「総合型選抜」のいずれでも十分に対応できる力をつけるべく、面接の練習はかなり早めにスタートしています。面接の対策というのは1、2回練習する程度では間に合いません。ところがこうした対策は、学校でもなかなか難しいのが現状のようで、「具体的にどんな対策をしたら良いかわからない」と悩んでおられる先生方の声も耳にします。

 面接の指導に携わっていると、受験生や保護者からも、「何と答えれば良いですか」という質問を受けることがよくあります。確かに、過去問やインターネットの情報を見れば、質問に対する模範解答は見つかります。しかし、誰かと同じ「正解もどき」を覚えて面接に臨んでも、面接官には簡単に見抜かれてしまいます。面接官はそういう受験生がいることをよくわかっているので、少し違う聞き方をしてきます。すると、たちまち頭が真っ白になって答えられなくなったり、自分が覚えてきた答えに何とか着地させようと強引な論理展開をしたりといった事態になってしまうのです。

 結局のところ、合格を勝ち取るのは「どんな医師になりたいか」を十分に考えて準備してきた人です。医学部の面接に向けては、正解がひとつではないような問題を、頭の中で繰り返し自分に問いかけ、一生懸命考えること、そんなもやもやとした時間を持つことこそが準備なのです。

 そのため、私たちは、1学期から医師に講演を依頼するなどさまざまな接点を用意し、「自分がどんな医師になりたいのか」をあらためてじっくりと考えてもらうようにしています。このような機会を通じて、きちんと「自分なりの答え」を用意できた生徒は、自分の中にぶれない軸をもっているため、どんな問い方をされたとしても臨機応変に対応でき、付け焼き刃の「正解もどき」とは違う、圧倒的な差をつけられるのです。

--医学部入試で面接が重視されているのに十分な対策をする場がない。とりわけ、推薦や総合型入試となると試験の時期が早く、準備の時間が取りにくい。となると、こうした専門家による対策へのニーズはより高まっていくのではないでしょうか。

 我々もそれを強く感じているところです。勉強さえしていれば医学部に行けるというわけではありません。医師になりたい受験生が、きちんと医学部に合格できる土壌を作っていきたい。

 そんな思いから、駿台ではこのように授業内外で行ってきた対策をより強化し、2025年5月より新たに面接対策に特化した講座を開講することになりました。既卒生と高3生が受講可能で、まずは池袋、札幌、京都の3校舎で週1回ずつからスタートする予定です。

 一般的に面接では話す内容が大事と言われます。もちろん、面接だけでなく小論文にも役立つような専門知識の習得もサポートしますが、非言語的なコミュニケーションも軽視できるものではありません。医師になれば毎日、何人もの患者さんとやりとりすることになるわけですから、声の大きさ、イントネーションや目線、表情、相手の話を聞く態度など、非言語的な部分も十分に対策をしていきます。

 そのうえで、自分の思いをしっかりとプレゼンできるよう、私も含め複数の職員が伴走しながら指導します。面接では、他人から借りた模範解答ではなく、自分の思いや考えを伝えられる土壌を作ることが重要だと思っていますので、我々が壁打ちの相手をしながら、なぜ医師になりたいのか、どんな医師になりたいのか、その大学で何を学びたいのかといった根元的な問いに対して、最終的には各々が自分の言葉で伝えられるようになることを目指します。

--市谷校舎では一昨年から既卒生のクラスで志願理由書の指導を1学期から始めることで、合格実績が上がったそうですね。早く準備しておけば出願期に勉強に集中できるだけでなく、志望理由を解像度高く自分の言葉で言語化できていることが勉強へのモチベーションにつながっていると。この面接対策も同様に、5月から行えばモチベーションを高め、さらなる学力アップが期待できそうです。

 生徒たちを見ていると、本気で医師になりたいことが確認できれば、「もっと勉強しなければ合格できないぞ」という意識を強くもつようになります。そこでグッとスイッチが入る。医学部受験や医師になることについて本気で考え始めるタイミングが早いほど、合格するために勉強では自分に何が足りないのか、どこをどれだけ伸ばしていく必要があるのかといったことを自分でメタ認知する力が上がっていくのです。

「自分なりの答え」を用意できた生徒は、自分の中にぶれない軸をもっているため面接で圧倒的に強いという

--最後に、難関の医学部を目指す受験生に向けて、メッセージをお願いします。

 冒頭でお話ししたように、昨年は新課程への移行というリスクを避けた受験生が多かった年でしたが、そこであきらめずにもう1年頑張り、今年の共通テストで高得点を取って、国公立大医学部に王手をかけている受験生はたくさんいます。

 依然として医学部は難関ですが、こうしてリスクにもひるまず、高い志をもって地道に粘り強く勉強を積み重ねていれば、着実に合格へと近づいていけます。とにかく決してあきらめないこと。これを常に念頭に置いて、医師になるという目標に向けて頑張ってほしいです。

--ありがとうございました。


 面接や小論文の対策を早くからスタートすることで、医師になりたいという気持ちを改めて確認し、勉強へのモチベーションも上がっていくという話が印象的だった。本気で医師になりたいと考えている受験生には、一般入試に加えて総合型や学校推薦型入試もひとつの機会と捉え、医学部への道を掴んでほしい。駿台の新しい講座は、そのための重要なステップになりそうだ。ひとりでは対策が難しい部分のサポートを受けることで、それ以外の勉強に集中できるという効果も期待できるのではないだろうか。

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《中村真帆》

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