大学受験が終われば、そこには成功か失敗かの二択しか残らない。合格した者は笑みをこぼし、不合格に終わったものは涙に暮れる。興味深いのは、たとえ合格を勝ち取っても不満を漏らすものもいることだ。
結果に不満をもち、さらに1年を努力に費やしたい人は、さらなる高みを目指し、浪人生活へ突入していく。では、浪人生はどのような生活を送るべきだろうか。今回は、浪人生活で取り得る選択肢と、それぞれの向き不向きなどについて解説する。
「浪人」の選択肢
浪人の際には、大きく分けて「予備校通い」と「宅浪」の2つの選択肢がある。それぞれについて解説する。
予備校とは、大学受験入試に特化した受験戦略構築や教育システムに定評がある塾を指す。予備校に通う浪人生は多いだろう。システムによって受験生活を管理してくれるためだ。
予備校に通う場合には、「河合塾」「駿台予備学校」「代々木ゼミナール」といった大手がメジャーな選択肢だろう。どれに通っても、おおよそ年間100万円~150万円程度の出費が必要になる代わりに、高校までと同じように、日中に授業カリキュラムが組まれる。そのため、予備校に通えば自動的に勉強できる仕組みが確立しているほか、授業に合わせて生活すれば生活リズムが崩れにくくなったり、成績推移を基にコーチングをしてくれたり、出願手続きなどの時期を教えてくれたりと、さまざまなサポートを受けられる。また、同じ学び舎の中に同じ大学を志望する学生が集まるため、うまくいけば、互いに切磋琢磨しながら実力を磨きあう関係性を構築できるかもしれない。
「宅浪」の選択肢
逆に、予備校に通わない選択肢を「宅浪」と呼ぶ。自宅で浪人する場合には、費用がまるまる浮く代わりに、勉強計画や受験戦略の立案から日々の生活リズムの安定策まで、さまざまなことを自分でやらなければならない。
浪人生の敗因は「勉強に集中できなかったこと」がトップだ。実際に、予備校に通っている浪人生であっても、失敗した人の多くが「浪人したけれども、結局遊んでしまった」ことを敗因としてあげている。つまり、「浪人の選択をする」ことと「1年間勉強だけに打ち込み続ける覚悟ができる」ことは別なのだ。そして、大半の人は、浪人中のどこかで誘惑に負けて、勉強が手につかなくなってしまう。
「勉強を習慣化させるシステム」である予備校に通っていても、習慣化に失敗し勉強から離脱する人が少なくない。そのシステムがない宅浪の選択肢を取るのであれば、予備校通いよりも数段高いレベルでの自律を求められる。確かに100万円以上のお金が節約できるが、それ以上に越えなくてはならないハードルは高くそびえたつ。精神力に相当な自信がある、もしくは授業カリキュラムによる管理された環境に著しい抵抗感があるなど特別な事情がない限りは、安易にはお勧めできない選択肢だ。
宅浪の際に気を付けるべきは、各種模試や入試の受験日時、出願期限などの管理だ。筆者は毎年必ず「共通テストに出願し忘れてもう1年浪人が確定」といったニュースを耳にする。どれだけ勉強ができても、戦う機会がなければ実力は発揮できない。そして、予備校に通っていれば誰かが教えてくれる事務手続きの諸々は、宅浪の場合誰も教えてくれないし、間違えても誰のせいにもできない。総合して、予備校通いよりも、数段高いレベルでの自律、情報収集能力などが求められるだろう。
予備校と宅浪、どっちを選ぶべき?
何か特別な事情がない限りは、予備校通いがお勧めだ。先述の通り、予備校に通えば、生活リズムの安定化から予備校での友人づくりなど人間関係の構築による精神安定、各種事務手続きのリマインド並びに第三者の確認を得られるなど、各種効果が期待できる。もちろん勉強面でも、各種大学の入試を過去数十年分に遡って研究している人々の知恵の結晶のような教えを享受することで、自宅でひとり浪人するよりも「受かるための知識」をピンポイントに得られる可能性が高い。
確かに100万円といったお金は大金だが、100万円を投資した結果、大学合格の確率は著しくアップするだろう。100万円で合格を買えると考えるか、そこのお金を節約したいと考えるかは、各自の判断に委ねたいが、私は予備校通いをお勧めする。
一方で、予備校に合わない人間がいるのも事実だ。授業に対して価値を見出せず、ひとりで黙々と勉強を進められるタイプの受験生も一定数おり、そういった受験生には、宝の持ち腐れに終わってしまう可能性がある。ただ、その場合でも、自習室の無制限利用などの恩恵を享受できるから、契約内容を絞っての予備校通いを考えても良いかもしれない。
予備校か宅浪かの前に考えてほしいたったひとつのこと
浪人は、厳しい選択肢である。かつての同級生たちは、4月の新入生歓迎会を経て新しい仲間を作り、長期休みには友達と遊びに行くようすをSNSにアップする。勉強面でも、一向にはかどらない勉強に、すいすいと自分の解けない問題を解き進めるライバルの存在など、心を揺さぶる要素に囲まれている。そんな状況下でも、正気を保って、ただ「志望校合格」のためにひたすらに実るかわからない努力をし続ける胆力が求められる。
「楽しい生活」なんてものを期待してはならない。ただ努力に明け暮れる1年間を過ごす覚悟があるかどうか。勉強をサボれば、力を落としてしまう可能性すらある。それでも、1年間を勉強に打ち込み続ければ、今年は得られなかったさらなる栄冠を手にできるかもしれない。すべては自分の精神力にかかっている。だから、予備校か宅浪かを考える前に、「そもそも浪人して自分の精神が耐え得るか」を考えてほしい。