甲南大学の理系学部が進化「理学・工学の融合」で未来を拓く人材を育成する手厚いサポート

 1951年の開学以来、理系教育に力を注いできた甲南大学。世界が抱えるさまざまな課題に取り組む人材の育成を目指し、2026年4月に理工学部の学科の新設・改組を実施。2027年には新理系棟の竣工も予定する。「融合」をキーワードに展開される同大学の「進化型理系構想」に迫る。

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甲南大学の理系学部が進化「理学・工学の融合」で未来を拓く人材を育成する手厚いサポート
  • 甲南大学の理系学部が進化「理学・工学の融合」で未来を拓く人材を育成する手厚いサポート
  • 左から、大学院 自然科学研究科 化学専攻 修士課程2年生の加藤さん、理工学部 機能分子化学科4年生の氏家さん、池田茂教授
  • 甲南大学 理工学部 機能分子化学科(2026年度の学科再編に伴い、新設される環境・エネルギー工学科に所属予定)池田茂教授
  • 甲南大学 大学院 自然科学研究科 化学専攻 修士課程2年生加藤昂太さん
  • 甲南大学 理工学部 機能分子化学科4年生の氏家楓麻さん
  • 甲南大学 理工学部 機能分子化学科(2026年度の学科再編に伴い、新設される環境・エネルギー工学科に所属予定)池田茂教授
  • 加藤さんと氏家さんが案内してくれた研究室のようす
  • 加藤さんと氏家さんが案内してくれた研究室のようす

 約9,000人の学生を擁し、「関西一面倒見の良い総合大学」を目指している甲南大学。メインキャンパスである岡本キャンパス(兵庫県神戸市)は、最寄り駅から徒歩約10分とアクセスが良く、大阪・梅田から約30分、神戸・三宮から約20分で通える利便性を誇る。

 1951年の開学以来、理系教育に力を注いできた同大学で、現在進行中なのが「進化型理系構想」だ。2026年4月に理工学部の学科の新設・改組を行い、新体制のもとで環境・エネルギーや宇宙理学・量子物理工学、物質化学、生物、情報科学、生命化学など、多様な分野を融合させた先進的な学びを展開する。

 本記事では、2026年に新設される理工学部 環境・エネルギー工学科で教育・研究を担う池田茂教授と、2人の学生へのインタビューを通じて、甲南大学の理系学部が目指す教育の魅力や強み、そしてそこで育まれた人材が活躍の場を広げる分野を明らかにしていく。

左から、大学院 自然科学研究科 化学専攻 修士課程2年生の加藤さん、理工学部 機能分子化学科4年生の氏家さん、池田茂教授

池田茂教授 …理工学部 機能分子化学科*
加藤昂太(こうた)さん …大学院 自然科学研究科 化学専攻 修士課程2年生
氏家楓麻(ふうま)さん …理工学部 機能分子化学科4年生
*池田茂教授は現在、理工学部機能分子化学科に所属しており、2026年度の学科再編に伴い、新設される環境・エネルギー工学科に所属予定


多様な分野を新たな形で融合させ、理系教育をアップデート

--甲南大学理工学部の教育理念と特徴について教えてください

池田教授:理学とは真理を探究し、自然現象の原理原則を理解するための学問で、工学とは理学で得た知識を実社会でどう生かすかに重きを置く学問です。甲南大学理工学部では、その2つの融合を大切に、思考力と応用力をもつ人材の育成を教育理念に据えています。

 こうした理念を支えているのが、甲南大学の小規模で密度の濃い教育環境です。特に理工系学部は教員1名が担当する学生数が非常に少なく、研究室配属後は1教員につき各学年5名ほどという家族のような規模感です。学生同士、教員からもひとりひとりの顔が見える関係性を築ける点は大きな特徴でしょう。授業も最大で60名ほどですが、2026年度の改組後は最大45名程度とし、より丁寧に指導する体制をつくっていく予定です。

--今回の「進化型理系構想」導入の背景を教えてください。

池田教授:甲南大学の初代学長で、日本を代表する原子核物理学者・荒勝文策先生(京都大学名誉教授)は、科学技術の進展と社会の変化の中で生じる新たな課題に対して、創造性をもって挑む人材の育成を理念として掲げていました。この精神が、今回の改組の背景にあります。

 さらに、現代社会では、環境・エネルギー分野の重要性がかつてないほど高まっています。企業側も世界的な施策を受けて持続可能なものづくりへと舵を切る中、大学にはこうした変化を主体的に担う人材を育てる責務があります。今回の進化型理系構想は、こうした社会的ニーズを正面から捉え、環境・エネルギーからAI、量子、生命科学まで、多様な分野を新たな形で融合させることで、理系教育自体をアップデートする試みです。

甲南大学 理工学部 機能分子化学科(2026年度の学科再編に伴い、新設される環境・エネルギー工学科に所属予定)池田茂教授

--進化型理系構想により、具体的にはどのような変化があるのでしょうか。

 甲南大学には現在、理工学部、知能情報学部、フロンティアサイエンス学部という3つの理系学部がありますが、この進化型理系構想でもっとも大きく変わるのは理工学部です。現行の物理学科・機能分子化学科・生物学科のうち、物理学科は「宇宙理学・量子物理工学科」に、機能分子化学科は「物質化学科」へと改組。さらに「環境・エネルギー工学科」が新設され、既存の「生物学科」と合わせて4学科体制になります。

--2026年4月より池田教授が所属する「環境・エネルギー工学科」とはどのような学科でしょうか。

池田教授:環境やエネルギーの問題に対して、マテリアルサイエンス(材料科学)の力で向き合える人材を育てる学科です。マテリアルサイエンスは、物理学・化学・数学を基盤として、物質の性質を原子・電子レベルで理解し、エネルギー変換やデバイス開発に役立つ新材料を設計する学問分野です。

 そのため本学科では、この学問を環境・エネルギー分野の課題に対し、実社会で解決策として生かせる力へとつなげる教育を重視しています。

 化学・物理・地学・数学・情報工学といった基礎をしっかり身に付けたうえで、「つくる」「はかる」「つかう」「考える」の4本柱で教育を展開し、環境にやさしい材料やエネルギー関連材料について、専門的な知識と技術を深く学べるのが特徴です。企業と連携したPBL(課題解決型学習)も取り入れており、実践力も鍛えられます。

異分野の融合をもたらす新理系棟、西・北校地(サイエンスゾーン)での学び

--新体制となる理工学部にはどのような強みがあるとお考えですか。

池田教授:新しい理工学部のいちばんの強みは、異分野が自然と交わる融合の環境をつくっていることです。その象徴が、2027年春に完成予定の新理系棟です。

 1・2階には、理工学部と知能情報学部が一緒に使う共用スペースを設け、研究展示や実証実験を公開するなど、お互いの研究内容に日常的に触れられる機会をあちこちに仕掛けていく予定です。また、高校生や地域の方にも公開し、社会に理系の価値を伝える拠点としても機能させていきたいと考えています。

 3・4階は、環境・エネルギー工学科の研究室フロアとなり、ここでも融合を促す工夫を随所に施します。研究室ごとのデスクワーク部屋をあえて作らず、大きな共有のオープンスペースを設け、さまざまな研究室の学生が混ざり合って活動できるようにします。実験室もガラス張りで、中のようすが見え、隣の研究室で何をしているのか自然とわかるようにします。

 研究では専門分野を深めることがとても大事ですが、社会に出れば、自分の専門とは違う分野で仕事をすることも珍しくありません。だからこそ、学生のうちから視野を広げておく経験が必要で、これは人と協働する力にも直結します。オープンスペース化は、社会での応用力を育てるための挑戦でもあります。こうした融合の取り組みが実現できるのは、甲南大学の教員同士に上下関係の意識がなく、分野を越えた連携が非常にしやすい学風のおかげです。

 閉じた研究室にこもるのではなく、視野を外に開き、他者とつながることで学びの質を高める。縦にも横にも広がるつながりを、既存の西・北校地のサイエンスゾーンともつながり、分野を超えて学びを高め合える「SCIENCE JUNCTION(多彩な個性が触発しあう学びの交差点)」を通して育てていきたいと考えています。

--大学院も進化するそうですね。

池田教授:はい。環境・エネルギー工学科の新設に合わせて、大学院自然科学研究科には新たに「環境・エネルギー工学専攻」を開設する予定です。大学院で取り組む研究課題は、原則として、先生も含めて誰も正解を知らない問いばかりです。その中で、思い通りの結果が得られなかったり、仮説を見直したりする場面もありますが、そうした試行錯誤の積み重ねこそが、社会に出たときに大きな力になります。ぜひ大学院進学も視野に入れ、長期的に専門性を伸ばしてほしいですね。

 今日取材に参加してくれている2名の学生は今、私の研究室で一緒に研究をしています。

理工学部の魅力「1年生から実験演習が充実している」

--学生のお二人にお伺いします。なぜ甲南大学の理工学部を選んだのでしょうか。

加藤さん:小さいころから理科が大好きで、高校は神戸市立科学技術高等学校へ進学しました。実験中心の環境で学びながら、理系進学を漠然と考えていたころ、甲南大学の一日科学体験プログラムに参加しました。体験のあと、池田先生と話をすることができ、特別に研究室で実験をさせてもらい、研究内容も丁寧に紹介していただきました。個人授業のような体験で、面倒見の良い大学だと実感したこと、そして研究内容への純粋なワクワク感が決め手となり、進学を決めました。

氏家さん:僕は総合学科の兵庫県立有馬高等学校で、「将来は研究を通して社会に貢献ができる研究者になりたい」と思っていました。そうした中、高校の化学の授業で触媒の働きについて習い、「これを応用すればエネルギー問題の解決に貢献できるのでは」と興味をもつようになり、甲南大学の池田研究室が光触媒を使って水を分解して水素をつくる研究をしていることを知って進学を決めました。

甲南大学 大学院 自然科学研究科 化学専攻 修士課程2年生加藤昂太さん 

--面白いと感じた学科の授業やカリキュラムについて教えてください。

加藤さん:甲南大学を選んだ理由の1つでもあるのですが、甲南大学では1年生後期から実験の授業がスタートします。最初は器具の使い方など基礎的な内容で、だんだんと視覚的な面白さを感じられる実験も増えていきます。中でも面白かったのは、2年生前期の「金属イオンの分離実験」です。さまざまな金属イオンが混ざった溶液を、性質の違いを利用して沈殿させたり、溶かしたりしながら分離し、何の金属かを探っていきます。何が入っているかわからない溶液の金属イオンを当てる試験もあり、実力を試せたのも面白かったです。

氏家さん:僕も「金属イオンの分離実験」は印象に残っています。3年生で行った「凝固点降下実験」も興味深かったです。水を凍らせるときに、塩などを加えると0℃よりも低い温度で凍ることを証明する実験です。小学生の自由研究でもよく取り上げられるテーマですが、大学では数学的な解析を使って検証します。時間はかかりましたが、仕組みを深く理解できて楽しかったですね。

甲南大学 理工学部 機能分子化学科4年生の氏家楓麻さん

池田教授:どちらも高校までの化学で勉強する内容ですが、高校には実験設備がないので教科書を読むだけの人がほとんどです。大学では実際に手を動かして体験でき、化学反応が本当に起きるんだという実感をもてるのが実験の醍醐味です。学年が上がるとより専門的になり、時間で区切らず、結果が出るまでやるという世界になっていきますが、学生たちを見ていると、甲南大生はごまかさずにやり遂げたいという真面目な気質があると感じます。

エネルギー・環境問題の解決につながる光触媒の研究に取り組む

--池田研究室で研究していることを教えてください。

加藤さん:僕たちが所属する光触媒材料研究室では、社会が抱える大きな課題であるエネルギー問題・環境問題の解決につながる“魔法の粉”の研究に取り組んでいます。“魔法の粉”とは光触媒のことで、一見ただの白い粉ですが、水に混ぜて太陽光を当てるだけで水を分解し、水素をつくることができます。

氏家さん:既存の光触媒はまだ水分解効率が十分とは言えません。そこで、僕は今まで光触媒として使われてこなかった材料を使って、より高効率で水素を生成できる光触媒の開発に取り組んでいます。

池田教授:水素は今 、新しいエネルギーとして強く注目されています。しかし水素そのものは自然界に豊富に存在しているわけではなく、人間が「つくる」必要があるものです。現在、工業的に水素を製造する方法の多くは化石資源から取り出す手法です。この場合、二酸化炭素を排出しながら水素をつくることになり、クリーンエネルギーとして本末転倒な側面があります。そこで重要になるのが、水と太陽光から水素をつくる技術です。化石資源を使わずに水素を得られる、理想的な脱炭素型プロセスと言えます。彼らが実験している光触媒法は、まさにその有力な候補です。

--池田研究室は、どのような雰囲気ですか。

加藤さん:学生が本当に主体的に動いていると感じます。池田先生に言われてやるのではなく、自分で論文を探してきて読んだり、学会に参加したりして、自ら課題を見つけて自由に研究に取り組めています。もちろん、池田先生にアドバイスをもらうことは多々ありますが、まず自分でやってみる習慣が付いたのは、池田研究室の環境のおかげだと思っています。

氏家さん:学生同士も、学生と先生も、すごくフラットに近い関係で過ごせる雰囲気です。また、設備面では、光触媒を作るための装置や、作ったあとの性能をチェックする機材など、専門的な機械も揃っています。授業で行う実験では人数の制約もあって、どうしても使える装置に限りがあるのですが、研究室に配属後は特殊な装置を自分たちで扱い、研究者として実験を進めることができるので、とても楽しいです。

加藤さん:研究室には光触媒が本当に反応しているかどうかや性能を確かめるための装置があります。中には池田先生手作りの装置もあったりするので、どのような構造になっていて、どのように気を付けて操作するかなど自分たちで考えて実験を行う必要があります。そういうメカニカルな部分も楽しみの1つです。

加藤さんと氏家さんが案内してくれた池田研究室のようす

-- お二人の充実した研究のようすが伝わってきます。将来は、どのような道に進みたいですか。

加藤さん:僕は来年から環境・エネルギー工学専攻の博士後期課程に進みたいと考えています。進学後は、光触媒の研究でしっかり結果を残すことが目標で、将来は大学で研究を続ける道に進めたら良いなと思っています。

氏家さん:僕は来年から環境・エネルギー工学専攻の修士課程に進学予定です。引き続きより効率的な光触媒を開発する研究に取り組み、将来的にはエネルギー関連の企業の研究職に就きたいと考えています。

自分のやりたいことが社会貢献につながる道を探してほしい

-- 理系進学を目指す高校生に向けて、高校生のうちにやっておいて良かったことなどアドバイスをお願いします。

加藤さん:普段から学校の勉強をしっかりやっておくと良いと思います。僕は協定校推薦という1名の枠で入学しましたが、受験直前だけ頑張るのではなく、普段の授業やテストを大事にしてきた結果だと思います。成績が良いほど推薦入試でも有利になり、選択肢が増える上に、学費優遇のチャンスもあります。

 才能は努力には勝てないし、努力は楽しんでいる人には勝てません。大学で4年間しっかり学び続けるには、興味や楽しさを感じられるかがカギだと思います。

氏家さん:僕も推薦で入学したので、日々コツコツ頑張って良かったです。僕たちのように化学系に進むとしても、数学や物理の知識が必要になることもあるので、幅広く学んでおくと入学後に役立ちます。また、進路を決める際には、どんな分野でも「自分のしたいことが社会にどう役立つか」を考えてみると良いと思います。

--最後にこれから進路を決める中高生と保護者にメッセージをお願いします。

池田教授:まず、理系進学を苦手科目のせいで諦めないでほしいと思います。甲南大学では1年生からリメディアル教育といって、大学の専門科目などを学ぶために必要な基礎学力や学習スキルを補うための補習が受けられるので、苦手意識があっても十分やっていけるサポート体制を整えています。

 私たちは科学を深く学び、自分の興味を追求できる人を育てたいと考えています。そのために、オープンな環境で考え、学び、社会につなげる力を身に付けてもらいたいと思っています。環境・エネルギー工学科は、カーボンニュートラルや再生可能エネルギーなど社会の大きな課題に科学で挑む学科です。このキャンパスで、未来のエネルギーや持続可能な社会に貢献する技術を一緒に創るチームになれればうれしいです。ぜひ一度、オープンキャンパスで、保護者の方もご一緒に、甲南大学の進化した理系教育を体験しに来てください。

--ありがとうございました。


 進化型理系構想を掲げ、大きく変わろうとしている甲南大学の理系教育。オープンキャンパスは、自分のやりたいことと、大学での学びをつなぐまたとない機会だ。多様な分野が交わる「融合」を重視する新しい学びを、オープンキャンパスでぜひ体感してほしい。自分で選んで決めた進路こそ、どんな困難でも乗り越えられる確かな原動力となるだろう。

甲南大学
進化型理系始動
甲南大学 新理系棟(新15号館)甲南大学 進化型理系リーフレット(PDF)甲南大学 環境・エネルギー工学科
《木村りこ》

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