「フロントランナーとして道を切り拓け」共学化1期生たちが語る、明大世田谷での日々

 140年以上の歴史をもつ男子校・日本学園が2026年4月より共学化し、「明治大学付属世田谷中学校・高等学校」として新たなスタートを切った。学校づくりの最前線に立つ高校1年生学年主任・国語科教諭の伊藤悟史先生と、中学・高校それぞれの1期生たちに話を聞いた。

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高校1年生学年主任で国語科教諭の伊藤悟史先生と、中学・高校それぞれの1期生たち
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 140年以上の歴史をもつ男子校・日本学園が2026年4月より共学化し、「明治大学付属世田谷中学校・高等学校」として新たなスタートを切った。共学化初年度、そして付属校としての1期生を迎えたキャンパスでは、どのような変化が起きているのだろうか。

 学校づくりの最前線に立つ高校1年生学年主任・国語科教諭の伊藤悟史先生と、中学・高校それぞれの1期生たちに、新しい「明大世田谷」の今を聞いた。

【インタビュイー】
伊藤悟史先生:国語科教諭、高校1年生学年主任
Kさん:明治大学付属世田谷中学校1年生
Aさん:明治大学付属世田谷中学校1年生
Tさん:明治大学付属世田谷高校1年生
Nさん:明治大学付属世田谷高校1年生

道なき道を行く「フロントランナーたれ」

--4月から明治大学付属世田谷中学校・高等学校としてスタートされました。共学化にあたりどのような取組みをされたのでしょうか。

伊藤先生:本校は1885(明治18)年の創立以来、男子校として歩んできた学校です。共学化という大きな転換を迎えるにあたり、私たちも大きな緊張や不安がありました。その中で学校が最優先事項として取り組んだのが、「生命(いのち)の安全教育」です。性別の異なる生徒たちが同じ空間で学び、生活する共学校だからこそ、お互いを尊重し、多様な価値観を認め合う土台づくりが欠かせません。単に「仲良くしましょう」と呼びかけるのではなく、その根本となる考え方を丁寧に伝えました。

 具体的には、助産師による生命や性に関する講話、弁護士からの人権・法的責任についての指導、スクールカウンセラーによる心身の距離感についての学びを、中1から高校生まで共有しました。こうした取組みを通じて、互いを尊重し、新しい学校をつくっていこうという雰囲気が生まれています。

高校1年生学年主任で国語科教諭の伊藤悟史先生

--付属校としての生徒の意識の変化など、感じていることをお聞かせください。

伊藤先生:今年の新入生たちは、明大世田谷の1期生であり、明治大学への内部推薦制度のもとで学ぶ最初の世代でもあります。学校そのものが大きな変革期を迎えるなかで、生徒たちには「フロントランナー(先駆者)」という言葉を繰り返し伝えています。これから先、男子校時代には想定していなかったような出来事や課題に直面することがあるかもしれません。だからこそ、生徒たちには「新しい明大世田谷を創る当事者」であってほしい。

 その意識は、すでに学校生活のさまざまな場面に表れ始めています。象徴的なのが文化祭です。日本学園時代には『男祭』として親しまれてきた文化祭ですが、共学化初年度となる今年は『誕生』をテーマに、生徒たち自身が新しい名称や企画づくりに動き出しているところです。

興味を深堀りし、自らの学びを作る「創発学」

--そのような主体性を育む教育の核となっているのが、日本学園時代から続く独自プログラム「創発学」だと思いますが、どのように継承していくのでしょうか。

伊藤先生:「創発学」とは、生徒が興味関心をもつテーマを設定する「課題発見力」や、調査した内容をまとめ、発表するなかで他者と協働できる総合的な「問題解決力」などを養う本校独自のプログラムです。

 現在の高校1年生は、中学から内部進学した生徒、高校から入学した男子生徒、女子生徒という3つの異なる集団で構成されています。中学ですでに創発学を3年間経験してきた内部進学生は、自分の体を使って五感で体験し、そこで発見し創りあげたものを他者へ発信する力に長けています。一方、高倍率の高校入試を突破してきた生徒たちは、粘り強く学習に取り組む力をもちます。異なる強みをもった生徒同士が刺激し合い、新たな学びの相乗効果が生まれ始めています。

--「創発学」のプログラムでは、具体的にどのようなことに取り組むのでしょうか。

伊藤先生:自ら問いを立て、現場に足を運び、データを集めて考察する創発学のプロセスは、大学での研究活動にも通じるものです。たとえば、コミュニケーションを学ぶカードゲームを体験した後、「成功率を上げるためにはどのような条件が必要か」という問いを立て、実際にデータを集めながら検証を進めます。11月に実施する高1の「1DAY創発」では、生徒全員が自分の興味・関心からテーマを設定し、1人で現地調査に出向きます。

 過去には「六本木を走る車はどこのナンバーがもっとも多いのか」を街頭調査でまとめて発表した生徒もいました。生徒たちは3学期まで研究を深め、その集大成として3月の「創発フェスタ」で成果を発表します。

「学校と一緒に新しい一歩を踏み出したい」中学1期生が語る明大世田谷の魅力

--入学を決めた理由を教えてください。

Kさん:共学化し、大学付属校として新しく生まれ変わる学校だと知り、学校と一緒に自分も新しい一歩を踏み出してみたいと思ったことが入学の決め手になりました。

Aさん:一番惹かれたのは生徒の自主性を大事にしてくれるところです。人から言われて動くのではなく、主体的に行動することを大切にする考え方が自分にぴったりだと感じました。

共学化1期生の中学1年生のおふたり

--中学生活はいかがですか。

Kさん:楽しいです。先日初めての中間テストが終わったばかりですが、テスト前には部活も決まり、テスト1週間前まで部活がありました。

Aさん:大学と連携していることもあって、明治大学の野球の応援に行ったり大学図書館の書籍を借りられたりと、これまでにない世界が広がりました。

Aさんは中学入学で新たな世界が広がったと楽しそうに語ってくれた

--6月から本格始動した自学自習施設SLC(セルフラーニングセンター)は、どのような施設ですか。

伊藤先生:2026年6月に本格始動した自学自習支援システムで、放課後や長期休業中に利用できます。私語厳禁で集中して学習に取り組む「サイレント自習室」と、明治大学などの大学生メンターが常駐し学習計画の立て方や勉強法のアドバイスを行う「メンタールーム」の2種類があり、授業でのインプットを自学自習によるアウトプットへとつなげる明大世田谷独自の学習サポートの場です。SLC担当の教員もおりますので、メンターと相互に連携を取りながらサポートをしていきます。

--おふたりはSLCを使ってみましたか。

Kさん:先日、初めてサイレント自習室を利用しましたが、本当に静かで集中できる環境でした。メンタールームのほうは、大学生メンターさんに気軽に質問できそうなとても温かい雰囲気でした。

Aさん:僕はまだ利用していませんが、友達の話を聞いて興味をもっています。次回のテストに向けてサイレント自習室を活用してみたいと思っています。

SLCについての感想をはきはきとした口調で聞かせてくれたKさん

伊藤先生:なお、定期テストの結果が振るわなかった生徒に関して、本校では補習を実施していません。学びの質か、量か、あるいはその双方が足りていないのかといった個別の事情を見極めたうえで自学自習のサイクルを構築できるよう、今後はSLCでアドバイスを受けながら授業と連携して学習を進めることを促していく考えです。

「自分たちで学校をつくる面白さがある」高校1年生が語る明大世田谷での日々

--明治大学付属世田谷高校のどこに魅力を感じて入学しましたか。また、入学後に印象の変化はありましたか。

Nさん:学校が都心にあり通いやすいことに加え、新しくなった校舎にも魅力を感じました。入学前は、男子校時代からいる生徒たちと馴染めるか少し不安もありました。でも入学してみたら親しみやすい人ばかりで、わからないことがあれば教えてくれ、頼りになる存在です。

Tさん:私は「共学化1期生」という点に大きな魅力を感じました。これから学校の新しい歴史が始まる中で、自分たちもその一員として関われることが楽しそうだなと。入学前は「やりたいことは何でも実現できるかも」と楽観的に考えていましたが、新しいことを実現させるためには交渉が必要だったり、決まり事との兼ね合いがあったりと、相応の苦労が伴うものだということを実感しました。それでも仲間と協力しながら1つずつ形にしていく過程がとても楽しいと感じられました。

共学化1期生の高校1年生のおふたり

--入学後には、6月に共学化して初めての体育祭が行われたそうですね。学校が大切にしている「創発」という考え方について、実感する場面はありましたか。

Tさん:練習の段階からクラス全体が盛り上がりました。朝練や隙間時間を使って練習や話し合いを重ね、仲間と協力して目標に向かう中で、自ら行動することの大切さを改めて感じました。「まずはやってみる」ことの重要性を感じる場面が多くあり、目標に向かって動いた時間は充実していました。

Nさん:体育祭の準備では、先生やインターネットに頼るのではなく、自分たちで考え、話しあいながらさまざまなことを決めたり改善したりを繰り返しました。当日は二人三脚リレーやいかだ競争、大縄跳びなどチームワークを求められる種目が多く、クラス全員で協力して取り組み、結果的に9クラス中1位になることができました。振り返ってみても、とても充実した体育祭で、とことん話しあえたことが結果につながったと感じています。

Tさんの言葉は、日本学園時代から学校が大切にしている「創発」の考えがすでに生徒たちの心に芽吹いていることをうかがわせた

明治大学はゴールではない。“ハイブリッド校”が育てる未来

--共学化初年度の入試問題、中学・高校ともにどのような出題をされたのでしょうか。

伊藤先生:私が作問を担当した国語では、文章の読み応えを高めるとともに問題数を増やし、限られた時間内で適切に処理する力を測る構成を意識しました。

 また、数学・算数については、本校が力を入れる理数教育の方向性を反映し、例年、解きごたえのある問題構成となっています。ただし、それは一部の受験生だけが解けるような難問や奇問を求めるものではありません。算数・数学では基本的な考え方や計算力といった、「幅広い基礎学力を地道に積み重ねてきたかどうか」を、国語では読解だけでなく文法や文学史も含めた「受験生として努力してきたプロセス」をみています。

地道に基礎を積み上げてきた「受験生として努力してきたプロセス」を入試では測るという

--入試を受けてみて、1期生の皆さんの印象はいかがでしたか。

Kさん:理科の問題が印象に残っています。最初は見たことのない内容で驚いたのですが、よく読むと必要な情報やヒントが問題文の中に書かれていて、落ち着いて考えれば解けるようになっていました。

Aさん:理科と社会は両科目とも30分で50問近くと問題数も多く、細かい知識を問われる問題もありましたが、勉強してきた内容がそのまま生かせる場面も多くありました。算数では、時間配分を考えながら最後まで解き切るのが大変でした。

Nさん:高校の入試は英語、国語、数学の3科目。全体的に基本的な問題が多く、解きながら「高得点勝負になるな」という印象でした。そのため、一問一問を丁寧に解くことを意識しました。

Tさん:受験勉強では日本学園時代の過去問しかなく、出題傾向が予想しにくい部分がありました。実際に初見の問題もありました。

伊藤先生:これから明治大学付属世田谷を目指す受験生の皆さんには、中学受験生、高校受験生ともに苦手分野を作らず、日々の学習をコツコツと積み上げて、広い視野をもって入試本番に挑んでほしいと願っています。

試験中に「高得点勝負になる」と感じたNさんは、その場で戦略を考え問題に向かったのだそう

--「明大世田谷」のカラーが見えてきたと思います。学校としてはどのような「生徒像」を求めているのでしょうか。

伊藤先生:中学・高校の6年間は、人生においてかけがえのない時間です。入学時の学力が、その後の人生をすべて決めるわけではありません。3年、6年あれば、子どもたちは大きく伸びます。

 私たちは本校を、付属校であり進学校でもある「ハイブリッド校」だと考えています。明治大学への進学に魅力を感じて入学する生徒は多いですが、学校が目指しているのはその先にある成長です。1期生たちに真っ先に伝えたのは「明治大学に入ることがゴールではない」ということ。明治大学という進路を土台にもちながら、国公立大学や医学部、海外の大学など、それぞれの夢に応じて可能性を広げていける学力と人間力を身に付けてほしいと考えています。

--受験を検討されているご家庭では併願校が気になるところかと思います。差し支えなければ教えていただけますか。

Kさん:私は明大世田谷のほかは、東京女学館や大妻中野などすべて女子校です。ただ結果的にそうなっただけで、共学・別学関係なく良いなと思った学校を受験しました。

Aさん:僕は立教池袋など、大学の付属校を中心に受験しました。

Nさん:慶應義塾高校と、桐蔭学園高校です。

Tさん:私は大学付属校を目指していたので、明大世田谷のほかは青山学院高等部と中央大学杉並高校を受験しています。

--多様な併願パターンとなっていますね。

伊藤先生:例年どおり、併願がもっとも多かったのは本校以外の明大付属校なのですが、2026年度入試では、中高ともにいわゆるMARCH付属校との併願が本当に多くなりました。特に中学入試においては、チャレンジ層が減り、倍率が示す以上の熾烈(しれつ)な入試になったと感じています。

--「明大世田谷」に関心をもたれている受験生の皆さん・保護者の方にメッセージをお願いします。

伊藤先生:スマートフォンやSNSが当たり前の今の時代だからこそ、中高大の時期にはあえてタイムパフォーマンスの悪いことに、とことん時間をかけて取り組んでほしいと思っています。自分の好きなことに、徹底的に「没入」する経験を積んでほしいのです。

 「人は得意な道で成長すればよい」というのが本校の教育理念です。しかし、その道を極めるためには愚直に努力するプロセスが不可欠です。ときにはひとりきりで机に向かう孤独な時間かもしれませんが、その経験こそが、その後の人生の芯を強く、深く作りあげます。本校には、その没入を支える環境があります。

 「自分の好きなことを、とことん突き詰めてみたい」「自分の力で新しい道を切り拓いてみたい」そんな熱い想いをもったお子さんに出会えることを、そして保護者の皆様と一緒にその成長を並走できることを、教職員一同、心から楽しみにしています。

--ありがとうございました。


 インタビューのなかで「若い子たちがもっているエネルギーを、自分たちの手で文化という形にしてほしい。それは男子でも女子でも変わりません」と語ってくれた伊藤先生。男子校時代から受け継がれてきた熱量と、新たに加わった多様な価値観。その融合が、共学元年ならではの新しい学校文化を生み出そうとしている姿がうかがえた。来春、新たな仲間として加わる受験生たちもまた、その歴史の1ページをともに刻む存在となるだろう。


<公式>明治大学付属 世田谷中学校・高等学校
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《吉野清美》

吉野清美

出版社、編集プロダクション勤務を経て、子育てとの両立を目指しフリーに。リセマムほかペット雑誌、不動産会報誌など幅広いジャンルで執筆中。受験や育児を通じて得る経験を記事に還元している。

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