理系進路に迷う女子高生へ、先輩女性たちが語るリアルなキャリア「第5回理系ブロッサム」

 三菱みらい育成財団は2026年7月11日、全国の女子高校生を対象としたオンラインセミナー「第5回理系ブロッサム」を開催した。イベントとその後に行われた取材のようすをお伝えする。

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  • 第1部トークセッションに登壇した忠犬立ハチ高のおふたり(ノムラフッソ氏/左と王坂氏/右)と、教育系YouTuber『とある男が授業をしてみた』の葉一氏
  • 今回の参加者(一部)
  • ファシリテーターのお三方。上段が木原白桃さん(カリフォルニア大1年)、下段右が佐々木あゆさん(岩手医科大6年)、左が前田志帆さん(早稲田大4年)
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 三菱みらい育成財団は2026年7月11日、全国の女子高校生を対象としたオンラインセミナー「第5回理系ブロッサム」を開催した。これは、女子高校生が普段接することの少ない理系の女子大学生・大学院生や、三菱グループで働く理系女性社員と進路や職業について対話をすることで、理系の価値や魅力を再発見し、進路選択や将来に役立つ情報が得られる毎年夏の恒例イベントだ。

 5回目を迎えた今回は、理系に関心のある全国の女子高生約70人、理系女子大生・大学院生のファシリテーターと三菱グループで働く理系女性社員それぞれ26人が参加。女子大生の進路選択と勉強方法や、女性社員が歩んできたキャリアなどが紹介され、女子高生の悩みや質問に答えながら理系の進路について語り合った。

理工系分野のジェンダーギャップ解消に向けて

 内閣府が7月10日に公表した「令和8年版男女共同参画白書」によると、日本における大学などの高等教育機関のいわゆるSTEM(科学・技術・工学・数学)分野の学生に占める女性の割合は、「自然科学・数学・統計学」の分野で27%、「工学・製造・建築」で16%と、いずれも比較可能な36か国で最下位となっている(経済協力開発機構の2021年調査)。一方で経済産業省は、2040年には職種間で需給ミスマッチが生じるリスクがあり、事務職では約440万人の余剰をはらむ一方、AI・ロボット等利活用人材を含む専門職や現場人材は不足する可能性があるとの推計を公表。理系の大学・大学院修了の人材が約120万人不足する見込みであり、理工系人材の確保ならびに、理工系分野のジェンダーギャップ解消が課題となっている。

 三菱みらい育成財団は毎年、女子生徒が自ら理系選択を行うべく、不安を取り除き、背中を押す取組みとしてオンラインセミナー「理系ブロッサム」を開催。進路やキャリアについて、三菱グループの企業で働く理系女性社員や理系女子大学生との気軽な対話を通じて、ロールモデルと出会える機会を提供している。「理系は男子向き」というジェンダーステレオタイプや、周囲からの無意識の働きかけといった、社会的・環境的要因によってもたらされている「無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)」を払拭し、女子高校生による理系選択を後押しする内容となっている。

 第5回理系ブロッサムは、「進路選択の可能性を広げるヒントをもち帰る」がテーマ。第1部トークセッションでは、人気の高学歴女性お笑いコンビ・忠犬立ハチ高の2人と、モデレーターとしてYouTubeチャンネル「とある男が授業をしてみた」を運営する葉一氏が登壇した。

 忠犬立ハチ高の2名は岩手県出身で、高校で出会い、2014年にコンビを結成した。ノムラフッソ氏は山梨大学医学部卒で医師免許を保有、王坂氏は上智大学文学部卒という経歴をもつ。トークセッションでは、2人の勉強法や気分転換、進路の選び方などについて意見交換。女子高生が理系を選択することについては、「『これが好き』と見つかっているだけでもすごいこと。社会に出たら性別比はあまり関係なくなる」としたうえで、「受験でその後の人生が決まるわけではなく、その先は自分次第でどうとでもなる」「性別関係なく興味のある道に突き進んでほしい」「やりたいことは全部やろう。一生懸命やればなんとかなる」などとエールを贈った。

第1部トークセッションに登壇した忠犬立ハチ高のおふたり(ノムラフッソ氏/左と王坂氏/右)と、教育系YouTuber『とある男が授業をしてみた』の葉一氏

進学・キャリア形成のロールモデルを描く

 第2部のワークショップでは、理系女性社員の講師1名、理系女子大学生のファシリテーター1名、参加者数名で構成される少人数のブレイクアウトルームに分かれ、計3回のセッションを実施した。各セッションでは、講師が自身のキャリアを振り返りながら進路選択の経緯や現在の業務内容などを紹介し、その後ファシリテーターや参加者を交えた自由な対話へと展開した。

 対話の中では、「理系を選ぶにあたり、どのような姿勢が大切か」という質問に対し、講師から「理系だからといって特別に構える必要はない。理系・文系を問わず、多くのことを『できるようになろうとする』姿勢こそが大切」との助言があった。また、「理系の勉強に自信が持てない」という悩みには、ファシリテーターの学生が「尊敬する塾の先生に定期的に進捗を共有し、先生との約束を励みに勉強を続けた」という自身の体験を紹介するなど、具体的で実感のこもったやりとりが和やかに繰り広げられた。

 セッション後には、講師のみのグループとファシリテーター・参加者のグループに分かれて振り返りの時間を設け、感想を共有した。参加者からは、「やりたい方向へ進もうという強い意志を持っていることに感銘を受けた」「進路は後からいくらでも変えられると聞いて安心した」「納得のいく選択のために、さまざまな大学を訪問したり多様な人の話を聞いたりすることが大切だと知り、参考になった」といった声が寄せられ、理系の進路選択を前向きにとらえる感想が多く聞かれた

今回の参加者(一部)

何が理系を選ぶきっかけになったのか

 会終了後、ファシリテーターとして参加した木原白桃さん(カリフォルニア大サンディエゴ校1年)、前田志帆さん(早稲田大4年)、佐々木あゆさん(岩手医科大6年)の3名の大学生に、今回の理系ブロッサムの感想を中心にオンラインで語ってもらった。

--ファシリテーターを引き受けた理由をお聞かせください。

木原さん:高校生のころ、科学技術振興機構(JST)グローバルサイエンスキャンパス(GSC)の支援による「ROOTプログラム」(神戸大学、兵庫県立大学、関西学院大学、甲南大学の共催)に参加しました。今回の機会は、その際にお世話になった先生からお声がけいただいたことがきっかけです。私も多くの先生方に支えていただいたので、今度は自分が理系に挑戦しようと考えている高校生を少しでも後押しできればと思いました

前田さん:私も高校時代に東北大学主催の「科学者の卵養成講座」に参加して、それが進路を考えるうえで非常に有意義な経験になりました。高校時代を振り返ると、大学での研究や、理系としてのキャリアは全然想像がつかなかったので、当時の私と同じように見えない将来や文理選択で悩む高校生に、今度は私が自身の経験を還元できたらと思いました。

佐々木さん:前田さんと同じく、私も高校生の時に「科学者の卵養成講座」や、NPOの「数理の翼」が開催しているイベントに参加し、理系進学を目指す高校生同士で交流した経験が理系進学のきっかけになりました。この経験を後進のために役立てたいという思いに加え、企業の取組みや研究、異なる分野で活躍する人の考え方に触れてみたいという好奇心もあって、理系ブロッサムに参加しています。

 ファシリテーターは2回目ですが、1回目での参加者からの反応が嬉しく、「やった甲斐があった」という喜びが今回の参加につながりました。

取材にご協力いただいたファシリテーターのお三方。上段が木原白桃さん(カリフォルニア大サンディエゴ校1年)、下段右が佐々木あゆさん(岩手医科大6年)、左が前田志帆さん(早稲田大4年)

理系の先輩・先生からのアドバイスで悩み解決に

--高校生時代を振り返り、進路選択において抱いていた悩みはどういったものでしたか。またその解決のために相談した人やロールモデルにした人物について教えてください。

木原さん:国内のインターナショナルスクールで国際バカロレア(IB)のディプロマ・プログラム(DP)へ進む際、選択科目を化学・ビジネス・美術のどれにするか悩みました。化学の先生に相談したところ、「理系進学はやりたいことの選択肢を広げてくれる」と助言され、理系へ進むことに決めました。さらに、「ROOTプログラム」を通じて、関西学院大学工学部の長田典子教授にメンターとしてご指導いただいた際、二児の母として研究を続けながら第一線で活躍される長田先生から、「あなたはどのような考えで問題解決に取り組みたいのか」と問いかけられました。その問いをきっかけに、自分自身の研究に対する姿勢や問題解決のアプローチを深く見つめ直すことができ、理系進学への意志がより強く固まりました。

前田さん:小中学生のころから理科に興味があり、理系志望は早くから固まっていたものの、大学での勉強や研究内容が想像できず、学部学科選びに悩みました。転機となったのは「科学者の卵養成講座」への参加です。大学の先生の講義を受けたり、大学生のファシリテーターと話したりしたことで、具体的なイメージが湧き、進路を考える大きな助けになりました。加えて、オープンキャンパスで学科の違いについて質問するなど、さまざまな人から話を聞いて進路を整理していきました。

佐々木さん:私も早い段階から理系志望でしたが、医学部が本当に自分に合っているのかという点で悩みました。決め手になったのは、通っていた塾のチューターに医学部生がいて、授業や学校生活について具体的に教えてもらえたことです。さらに、科学者の卵講座で医学部以外の理系学部の先生から話を聞く機会も多く、将来像を整理するうえで役立ちました。やはり、多様な経験を経て進路を選んだ人の話を聞くことは非常に重要だと感じます。

進路の選択が「将来の選択肢」を狭めることはない

--印象的だった高校生、または高校生からのコメントや質問を、印象に残った理由とあわせて教えてください。

木原さん:一番印象に残っているのは、文理選択に悩んでいる高校生が「理系を選ぶと将来の進路が狭まってしまうのではないか」と心配していたことです。私自身も文理選択に非常に悩んだ経験があるため、その悩みは多くの高校生が一度は通る道なのだと改めて実感しました。

佐々木さん:私も、選択肢が絞られるという点で、医学部もまるで職業が決定するかのように思われていると感じていました。実際には医学部であっても、私は一般教養科目の先生のもとで6年間、生物学の研究を続けることができており、そのような研究の道など医師以外の選択肢があるということを高校生のうちに知ってもらいたいと思いました。

前田さん:私の印象に残ったのは、「アプリゲームやCG制作への興味を将来の仕事に結びつけたい」といった、自分が楽しんでいること、やりがいを感じていることを仕事にしたいと考える高校生がいた一方で、「好きなことと仕事は切り離して考えたい」という対照的な意見をもつ高校生もいたことです。正反対ともいえる価値観が、「理系ブロッサム」というひとつの場から生まれてきたのが非常に興味深く、印象的でした。

理科をベースに新しい分野にチャレンジ可能

--理系ブロッサムの今後に期待することは。

木原さん: 理系進学や女性のキャリアに対するステレオタイプを変えるきっかけになればと思っています。大学で認知科学を学ぶなかで、理系分野に女性が少ない背景について考える機会がありました。「理系に向いている人」に対する固定観念や、女性の能力に対する否定的な思い込み、身近なロールモデルの不在などが複合的に絡み合うことで「この分野に自分の居場所はない」という認識につながってしまうことがあります。だからこそ、三菱グループのような社会的影響力の大きな企業がこうした固定観念を変える発信を続け、多様なロールモデルを積極的に紹介していくことには大きな意義があると考えています。1人でも多くの高校生にとって「自分にも挑戦できるかもしれない」と思えるきっかけや場になってほしいと願っています。

前田さん:高校生はもちろん、小中学生にも科学の楽しさを知ってほしいという思いがあります。理系の世界に触れて「面白い」「ワクワクする」と感じるポジティブな体験を大切にしてほしいです。理系ブロッサムという名前の通り、未来に沢山の花が咲くように、若い世代が一歩を踏み出すきっかけの場として長く続いていくことを願っています

佐々木さん:大学では特定の分野しか学べないと思われがちですが、実際には専門の枠を超えて新しいことに挑戦できる機会が数多くあります。「理系的な考え方」という共通の土台が、多様な分野への入口になっていることをぜひ知ってほしいと思います。また、このイベントが理系女性同士の継続的なコミュニティへと発展すれば、高校生にとってさらに心強い存在になるはずです。そうした場が育っていくことを期待しています。

--ありがとうございました。

自身の体験を後輩へつないでいく

 今回はファシリテーターに取材をすることで、参加者にとって身近で近い将来の姿でもある「理系女子大学生」にスポットをあてた。

 彼女らのコメントから見えてきたのは、理系の先輩・仲間たちと交流できるイベントに参加し、先行事例を聞いたり、アドバイスをもらったりした体験が、理系選択の後押しになったということだ。理系ブロッサムは、進路選択に迷う女子高校生にとって、新たな道を切り開き、理系に進む勇気が湧くライフチェンジングな体験になったのではないだろうか。

第5回「理系ブロッサム開催レポート」
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三菱みらい育成財団「理系ブロッサム」
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《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

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