デジカメ&Eye-Fiで実現する学びと気づき…筑波大学附属小学校

 デジカメにEye-Fiを組み合わせて、図画工作科の授業に活用しているのが、東京都文京区にある筑波大学附属小学校の北川智久教諭だ。5年生の授業を見学した。

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電子黒板で授業の説明を行う北川教諭
  • 電子黒板で授業の説明を行う北川教諭
  • アイデアの種を指で記入
  • Eye-Fiが挿入されたデジタルカメラが10台用意された
  • Eye-Fi
  • アヒルのサッカー選手
  • 食べ物の部屋でのアヒルの様子を表現
  • 屋外で協同作業
  • 写真の鑑賞会
 いまや現代人の必須アイテムとなったデジタルカメラ。このデジカメに、Wi-Fi内蔵メモリーカードEye-Fiを組み合わせて、図画工作科の授業に活用しているのが、東京都文京区にある筑波大学附属小学校の北川智久教諭だ。2月17日に公開された5年生の授業「ある日のアヒル ―借りぐらしのアヒルッティ―」を見学した。

◆アヒルの世界観を表現し鑑賞する

 クラスの構成は男子19名、女子20名の39名だが、この日は1名欠席のため38名で授業が行われた。「アヒルの秘密の世界を創造し、立体作品や画像などに表すこと」や「アヒルの世界観を共通認識しながら、表現したり鑑賞したりし合う中での学び合いや認め合いを大切すること」などを課題に授業は進められる。この日は、6時間扱いの「アヒルッティ」の1時間目が公開された。

 授業の前段階として、アヒルの人形たちの秘密の営みについての導入話と、参考となるアヒルの画像の紹介をしたうえで、児童ひとりひとりに、大小2匹のアヒルの人形を配り、1週間ほどアヒルと暮らしを共にさせたという。児童は、アヒルの人形と暮らすなかで、アヒルの世界観を表現するためのイメージを膨らませ、作品のための素材の準備を行い、各自持参した。

◆無線LAN利用で写真データを電子黒板に投影

 この授業では、パソコン、デジタルカメラ、Eye-Fi、電子黒板(IWB:インタラクティブホワイトボード)が利用された。Eye-Fiは、無線LAN(Wi-Fi)内蔵のSDHCメモリーカードで、通常のSDカードと同様にデジタルカメラに挿入して撮影すると、写真データをパソコンやオンライン写真サービスに自動保存することができる。この日は、児童が撮影した写真データが1台のパソコンに保存され、電子黒板に次々と投影されるという仕組みが活用された。

 授業の冒頭で北川教諭は、児童を教壇前に集め、電子黒板を使って授業の説明を行った。あらかじめ用意した資料を投影し、タッチパネル機能を利用して、指でアンダーラインや補足を書き加えた。北川教諭によると電子黒板は以前から使用していたが、数か月前よりタッチ対応にして、より便利になったのだという。子どもたちも先生の問いかけに応え、電子黒板に指で“アイデアの種”を慣れた手つきで書き込んでいた。書き込まれた情報は、デジタルデータとして保存し、次回以降の授業に活かすことができる。

◆作品や設定の準備

 児童の作業はまず、アヒルの世界観を表現するための作品や設定作りから始められた。一人でひたすら立体作品を制作する子、協同作業で一つの作品に取り組む子、友だち同士で協力し合って各々の準備を行う子とさまざまだ。グループで取り組めば、アヒルの数も増やすことができる。また、教室内の机で作業する子、屋外に飛び出す子など、個々の考えに従って行動する姿に、北川教諭が子どもの自由な発想を大切にしているようすが伺えた。

◆撮影と写真の共有

 準備が整うと次は撮影だ。児童は、教壇に用意されたEye-Fiが挿入された10台のデジタルカメラを交代で利用する。撮影データは教室中央の壁上部に設置されたアクセスポイントを介してパソコンに自動保存され、天井の吊り下げ式プロジェクターから電子黒板の大型スクリーンに投影される。

 ある男子のグループは、アヒルをサッカー選手に見立ててさまざまな角度から撮影、女子のグループはパンやお菓子や野菜など食べ物の部屋でのアヒルのようすを表現、屋外で風景をうまく取り入れて大きな動きのある作品に取り組む姿もあった。また、作業の手を休めて電子黒板で友だちの作品を確認し、作業に戻る児童の姿も見受けられた。

 北川教諭によると、パソコンに画像データが保存される際に、ファイル名で撮影したカメラがわかるよう設定しているという。たとえば、カメラ1は1000番台、カメラ2は2000番台のファイル名がつくという工夫だ。写真サイズは長辺1,024ピクセルに設定されているためファル容量が大きくなりすぎず、2Gや4Gのメモリーカードが授業中に満杯になる心配はない。また、この日の授業では使われなかったが、Bluetooth対応のワイヤレスキーボードやワイヤレスマウスも用意されていた。

◆お互いの作品を鑑賞し学び合う

 撮影が終わると、再び電子黒板の前に集合し、全写真の鑑賞会が行われた。200点近くに及ぶ作品が次々と切り替わると、笑いが起こったり、「スゴイ」「かわいい」などの歓声が飛び交った。「電子黒板の利用により、作品画像をその場で共有し、友だちの作品を鑑賞して交流をすることが可能になる」のだという。友だちの歓声(認め合い)で得られる喜びは作品作りへのモチベーションにつながり、友だちの反応からの学びがその後の学習に活かされていく。

 「ある日のアヒル ―借りぐらしのアヒルッティ―」の残り5時間では、写真をプリントして切り張り・編集したり、音を入れてスライドショーでアニメ仕立てにしたりと発展させていく。同じ作品をベースに継続しても、また違った作品に挑戦しても、それは児童の自由だという。

 ICTを授業に取り入れ有効活用している北川教論であるが、授業の目的は「カメラの使い方でも無線LANの仕組みを知ることでもない」、デジタル機器や機能は「表現や鑑賞を学ぶためのツールとして取り入れている」。またデジタルに偏ることなく「図画工作として手業の世界は大切にしていきたい」と説明した。
《田村麻里子》

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