受験支援ソフト「Lime」で障害児の入試を公平、公正に…東大先端研とMS

 東京大学先端研究所センター(東大先端研)と日本マイクロソフトは、肢体不自由や学習障害の児童・生徒が入試において合理的な配慮を受けられるよう支援ソフトを共同開発。2月9日に無償公開を開始した。

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東大先端研、仲邑賢龍教授
  • 東大先端研、仲邑賢龍教授
  • 東大先端研、近藤武夫講師
  • 日本マイクロソフト最高技術責任者、加治佐俊一氏
  • 障害児を支える教育ICT
 東京大学先端研究所センター(東大先端研)と日本マイクロソフトは、肢体不自由や学習障害の児童・生徒が入試において合理的な配慮を受けられるよう支援ソフトを共同開発。2月9日に無償公開を開始した。

 障害のある児童・生徒が日々の学習ツールとしてパソコンを利用する頻度が増えているという。その一方で、入試においては、ほかの受験生との公平性が担保できないとの理由でパソコン利用の特別処置が認められないケースが多い。特に入試においての漢字テストは、パソコンに漢字変換機能があるため、不公平になる可能性があると学校側からは懸念されてきた。

 十分な学力はありながら、受験方法により進学の可能性が限られる学生が多い現状を踏まえ、両者は、ICT活用などの合理的配慮を認めたうえで学生の能力評価をすべきだと訴える。東大先端研にて講師を務める近藤武夫氏は、試験でワープロの利用が認められなかったためペイントソフトにてマウスで文字を書いた学生を例に、模試でA判定が出ていながら、書字の障害により進学できない生徒がいるのが現状だと説明する。

 さらに、日本における大学・大学院・専門学校に進む生徒の中で、障害学生の割合は0.27%。米国の全学部生に対する障害学生の割合が10.8%であるのを考えると、日本での社会参加機会には大きな格差が存在するという。

 両社が無償提供を開始した「Lime(ライム)」は、上述した問題を解決する画期的なソフトだという。同ソフトは、日本語入力時に変換候補として表示された漢字がすべて記録されるため、受験者がパソコンを適切に使用していたかどうか確認できる。学校側が求める公平性の担保を提供することで、筆記用具の使用が困難な潜在進学者に機会を与えることができるという。

 日本マイクロソフト最高技術責任者の加治佐俊一氏によると、同プロジェクトは、同社のビジョンである「世界中のすべての人々とビジネスの持つ可能性を最大限に引き出すための支援」の1つであるとし、今後もデジタル教科書などの活用に力を入れていくという。

 今後は、任意の漢字を変換候補に表示させない機能や、ほかの受験生のニーズにも対応する機能を追加していく予定だ。

◆Lime
入手方法:
Webサイト
動作環境:
・OS:Windows 7(32ビット版、64ビット版)、Windows Vista(32ビット版、64ビット版)、またはWindows XP(32ビット版のみ)
・IME:Microsoft IME(Windows XP、Windows Vista、またはWindows 7に含まれる標準のIME)、Microsoft Office IME 2010
《湯浅大資》

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