赤ちゃんの匿名預かり窓口「こうのとりのゆりかご」、安易な利用に警鐘

 熊本市は3月29日、同市内の医療法人聖粒会 慈恵病院が設置している匿名で子どもを預かる施設「こうのとりのゆりかご」(通称「赤ちゃんポスト」)の運用状況をまとめた報告書を公開した。

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子どもの性別と年齢
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  • 母親の状況
  • ゆりかごに預け入れた理由
  • 預け入れられた子どもの身元判明の状況
  • 身元判明の事例における養育状況の推移
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 熊本市は3月29日、同市内の医療法人聖粒会 慈恵病院が設置している匿名で子どもを預かる施設「こうのとりのゆりかご」の運用状況をまとめた報告書を公開した。

 同施設は、遺棄されて命を落とす新生児や人工妊娠中絶で失われていく命を救いたいとの思いから、ドイツでの先例を参考に慈恵病院が施設内の一角に設置したもの。平成17年5月10日より運用が開始されており、一部報道で「赤ちゃんポスト」などと称され、賛否両論さまざまに話題となっている。

 今回、熊本市要保護児童対策地域協議会こうのとりのゆりかご専門部会が提出した報告書では、主に同施設の平成21年10月1日から平成23年9月30日の2年間の状況についてまとめている。

 報告書によると、2年間で預け入れがあったのは合計30人。多い月では1か月5人という例もあったという。子どもの年齢は、生後1か月未満の「新生児」が21人と70%を占めており、中には生後1日以内という事例も7件あったという。その他、生後1か月〜1年未満の「乳児」が5人(16.7%)、生後1年〜就学前の「幼児」が4人(13.3%)となっている。

 慈恵病院では、同施設の正式名称を「新生児相談室」としており、子どもを預け入れる前に相談をしてもらうことが第一の目的だとしている。実際に預けられた場合でも、病院がゆりかご内に設置した手紙を持ち帰った親から連絡があったり、一旦は預け入れたものの親が思い直して連絡を入れてくることで、子どもの身元の判明につながっているケースもあるという。

 2年間の預け入れ事例30件のうち親の身元が判明しているのは26件。母親の年齢は、10代が4人、20代が13人、30代が8人、40代が1人となっている。また婚姻状況は、既婚が12件、離婚が3件、未婚が11件。親の居住地は、熊本県内が6件、九州(熊本県以外)と関東が7件、近畿が4件、中部と中国がそれぞれ1件となっている。

 預け入れた理由については(複数回答)、「生活困窮」と「未婚」がもっとも多く9件。次いで「世間体・戸籍(に入れたくない)」と「パートナーの問題」が6件、「不倫」が4件、「養育拒否」と「親(祖父母)等の反対」が2件だった。

 なお、子どもの身元が判明した場合は、親の居住地の児童相談所に移管され、通常の要保護児童と同様に社会調査などの後、援助を行うことなる。平成19年5月以降こうのとりのゆりかごに預けられ、その後身元が判明した子どもは、乳児院で養育されているケースが24件、里親のもとで養育されているのが17件、家庭に引取られた例が13件、特別養子縁組が成立した事例が9件あるという。

 このほか報告書では、妊娠・出産にかかわる慈恵病院および熊本県・熊本市における対応の状況をまとめており、こうのとりのゆりかごの利用状況やその評価と合わせ、一連の課題をまとめている。そのうえで、施設を運営する慈恵病院をはじめ、国や行政、関係機関などへ、今後の対応策についての要望をまとめている。

 また、子育てに困難を要する当事者に向け、相談窓口や里親制度への理解を促すとともに、同施設の安易な利用を避けるよう呼びかけている。
《田崎 恭子》

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