【韓国教育事情(前篇)】小1から週15時間英語で授業を受ける名門私立小

 私立小学校では、1年から英語ネイティブの先生が担任、韓国人の先生が副担任になり、全科目を英語で教える英語没入教育(immersion教育)を実施している学校がある。

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 毎日、学校が終わると塾3〜4か所をはしごして、やっと家に帰る韓国の小学生。公園で遊ぶ時間もない韓国の子どもたちは、友たちとおしゃべりしたくて塾に行くという。そんな韓国の英語教育熱が非常に高いことは、よく日本でも報道されている。

 韓国では、私立小学校の場合は1年生から、公立小学校では3年生から正規科目として英語を学んでいる。

 私立小学校では、1年から英語ネイティブの先生が担任、韓国人の先生が副担任になり、全科目を英語で教える英語没入教育(immersion教育)を実施している学校がある。英語没入教育とは文字通り、学校の中で英語を使わせることで英語が自然と身につくようにし、子どもを韓国語と英語のバイリンガルに育てる教育法のことをいう。

◆バイリンガル教育で有名な名門私立小

 バイリンガル教育で有名なのがソウル市にある名門私立のヨンフン小学校で、入試競争率は5倍ほどである。私立の中でも圧倒的に授業料が高く、課外活動を含めると年間100万円以上は軽くかかる。入試も厳しく、まず保護者を対象にした学校説明会とツアーを実施し、そこで保護者の面接を行う。2次審査で保護者と子どもと一緒に面接をする。学校側は、子どもを学校に任せっきりにしないか、保護者が常に子どもの勉強を見てあげられるか、学校の行事にも積極的に参加できるか、授業料はきちんと払えるか念を押す。

 ヨンフン小学校では、1年生が週15時間英語で授業を受ける。教科書も韓国の教科書に追加して、米国の小学校で使っているものを輸入して使う。他の私立小学校も、数学、社会、科学は米国の教科書を使って米国の小学校の教科課程に沿って英語で教えるところがほとんど。英語教育を3年生から行う公立小学校の児童と、私立小学校の児童とを比べると、英語能力に大きな差が開くことになる。そのため、公立小学校に通う子どもたちは1年生から英語塾に通い、私立小学校の子どもたちに負けないように頑張っている。

◆生まれる前から予約が必要な英語保育園・幼稚園

 私立小学校のバイリンガル教育が人気を集めると、英語しか使わない「英語保育園」や「英語幼稚園」も大人気で、生まれる前から予約しないと入園できないほど繁盛している。韓国の文部科学省にあたる教育科学部の調査によると、英語の語学研修のために海外に出国する人は年間2万5,000人を突破した(2010年末時点)。語学研修のために出国する人は大学生が多いが、小学生や中学生の割合もどんどん増えている。お母さんと子どもは海外留学し、お父さんは韓国で働いて仕送りを続ける家族は、もう珍しくもなんともない。韓国では、子どもの英語教育のための費用は惜しまない。

◆成長する子ども向け英語塾と人気の英語村

 韓国の国民銀行経営研究所が調査した「外国語学校の売上」を見ると、幼児・小中高校生を対象にした英語塾の売上は2006年の1,375億ウォン(約98億円)から2011年の3,786億ウォン(約265億円)に、5年間で3倍近く成長した。一方、大人用英語塾は2006年の1,704億ウォン(約120億円)から2011年の2,138億ウォン(約149億円)とそれほど伸びていない。

 2016年度の大学受験からは、修学能力試験(日本のセンター試験のような一斉テスト)の英語科目の試験が「国家英語能力評価試験」に変わる。現在の受験英語はリスニング、文法、読解のテストしか行わないが、「国家英語能力評価試験」ではこれに加えて「話す」「書く」能力も評価する。

 そのため韓国の教育ママたちは、「小学生の頃から英語で考え、英語で話し、英語ですらすら文章が書けるようにしなくては!」とさらに英語教育に熱を入れるようになった。外国まで行かなくても、英語で会話しないといけない環境を子どもに提供すれば英語が上達するのでは、という期待から人気を集めているのが「英語村」である。「英語村」は、英語が公用語のテーマパークのようなところで、英語版キッザニアともいう。1日体験から9泊10日の入所まで、さまざまなプログラムがある。

 後篇では、韓国に数ある英語村の中でも人気の高い、パジュ英語村とスユ英語村を紹介する。パジュ英語村は、韓国の英語村の中でもっとも規模が大きい。京畿道(キョンギド)という、日本でいうと千葉県や埼玉県のように首都の隣に位置する自治体が運営する英語村だ。スユ英語村は、ソウル市がYBMという韓国最大手の英語教育会社に運営を委託している。
《趙 章恩》

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