高校生1人1台PC導入の佐賀県、WiC協議会と「教育の情報化」共同研究

 平成26年度から県下の県立高校で生徒1人1台の学習用パソコンを導入する佐賀県教育委員会とWindowsクラスルーム協議会は、今年9月に「教育の情報化に係る調査・研究」の契約を締結して共同研究を開始する。

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佐賀県教育委員会 教育長の川崎俊広氏(左)とWindowsクラスルーム協議会の発起人企業代表の織田浩義氏(右)
  • 佐賀県教育委員会 教育長の川崎俊広氏(左)とWindowsクラスルーム協議会の発起人企業代表の織田浩義氏(右)
  • Windowsクラスルーム協議会の取り組み
  • Windowsクラスルーム協議会の発起人企業代表で日本マイクロソフト 執行役  パブリックセクター統括本部長の織田浩義氏
  • 佐賀県教育委員会 教育長の川崎俊広氏
  • 「教育の情報化」に係る調査・研究の概要
  • 調査・研究のテーマ(1)環境整備
  • 調査・研究のテーマ(2)デジタル教材
  • 調査・研究のテーマ(3)教育ICT研修
 平成26年度から県下の県立高校で生徒1人1台の学習用パソコンを導入する佐賀県教育委員会(教育長:川崎俊広)とWindowsクラスルーム協議会(会長:樋口泰行 日本マイクロソフト代表取締役社長)は、今年9月に「教育の情報化に係る調査・研究」の契約を締結、共同研究を開始する。

 その準備がほぼ整ったものとして12月10日、佐賀県教育委員会 教育長の川崎俊広氏、教育情報化推進室 室長の福田孝義氏、Windowsクラスルーム協議会の発起人企業代表で日本マイクロソフト 執行役 パブリックセクター統括本部長の織田浩義氏、同事務局長で日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター統括本部 文教本部長の中川哲氏による記者発表会を開催した。

 Windowsクラスルーム協議会は、OS、パソコン・タブレット、ネットワーク通信、デジタル教材、研修サービス、ソリューション企業などの45社が、グローバル化社会を生きる子どもたちの学びと、その教育に携わる教職員をICTの側面から支援することを目的に、今年5月に設立された団体だ。教育現場でWindowsをプラットフォームに展開し、企業単体では成し得ない、業界の枠を越えたさまざまな支援を行っている。

 そのWindowsクラスルーム協議会が、佐賀県が展開している「先進的ICT利活用教育推進事業」を全面的に支援する。国際社会で生き抜くための力をつけ、教育の質の向上と児童生徒の学力向上を図るためのさまざまな課題を克服していくには、ICTを利活用した教育が必須と、平成23年度から取り組みを開始。

 人材育成、ICT機器の整備、新教育情報システムの構築を推進しているなかで、実証に基づいた機器整備が進み、電子黒板の全教室配備を終え、県立中学校、特別支援学校ではすでに実施されている学習用パソコンの1人1台導入を、来年度は県立高校36校で実現、現在、機種選定の段階に入っているという。

 Windowsクラスルーム協議会が教育委員会と共同で研究するのは、今回が初めてで、来年6月までを一区切りとして、7月にその結果を報告書にまとめる。研究の成果は全国の教育関係者に展開し、全国の小中高校における教育情報化の先進的事例として、蓄積される経験とICT利活用のノウハウを共有することで、教育の情報化の推進に寄与することを目指す。

 その調査・研究のテーマは、1)環境整備、2)デジタル教材の開発、3)教員ICT研修、4)セキュリティ対策の4項目で、佐賀県は調査・研究に必要となる教育現場の情報と環境を、Windowsクラスルーム協議会は教育ICT環境の実現のための知見とノウハウを、それぞれ提供する。

 具体的に4つの項目を見ていくと、環境整備では、凸版印刷が校務管理・学習管理・教材管理が一体化したICT教育支援システムを構築し、佐賀県の教育クラウドSEI-Netに提供、県内すべての児童・生徒、保護者、教職員の情報の管理や、1人1台の学習用パソコンを学校内だけでなく、家庭からでも安全に利用するための端末管理、ネットワーク環境の整備について調査・研究を行う。

 デジタル教材の開発では、教科書・教材会社と連携し、個々の学習履歴を蓄積してきめ細かな指導ができる教材や、電子黒板、学習用パソコンで利用できるデジタル教材の開発・推進、実際の教育現場での使用と改善などの調査・研究を行う。

 教員ICT研修は、教師用・学習用パソコン、電子黒板、デジタル教材を使いこなし、指導するための総合的な研修を確立する調査・研究を行う。繰り返しあるいは継続して行えるオンラインでの研修、各学校で選出された推進リーダーとなる教職員への研修や、リーダーが自校で行う他の教職員への研修の効果的な実施を検討する。

 セキュリティ対策では、学習用パソコンの家庭での「持ち帰り学習」を考慮した対策を検討し、保護者向けに適切な管理を行うためのガイドブックなどを作成する。

 ちなみに、平成26年度県立高校に導入される学習用パソコンは、高校1年生全員が必要教材として購入する。最高で5万円までの費用がかかる(5万円を超える場合は県が補助)ため、負担と感じる家庭もあるかもしれない。パソコンはタブレットとしても使えるタイプで、OSはWindows 8 Pro、ウイルス対策ソフトやフィルタリングソフト、電子辞書、デジタル教材、Microsoft Office Professional 2013などがプリインストールされ、故障した場合の保証が3年間ついているというものだ。

 今回の調査・研究は、Windowsクラスルーム協議会にとっては、異業種の集合体が、佐賀県といういわば大きな教育の“実験場”で、どのように係りながら支援し、ビジネスにもつなげられるかを模索できると同時に、一方で佐賀県にとっては、さまざまな業種の45社から、包括的にサポートが受けられるという、どちらにも大きなメリットがある。「この成果を活用することで、おそらく、今後の教育の情報化が画期的に進むのではないかと期待している」との川崎俊広佐賀県教育長の言葉には、その先頭を切る自治体が佐賀県であることへの自負がうかがえた。来年7月の調査・研究の結果報告に注目したい。
《鈴木良子》

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