大量生産はできないが、モデリングデータと3Dプリンター、そして切削加工機などがあれば、工場など大きな設備を持たずに、個人や学生が製造業を始めることも可能になる。これらのデジタル機器を活用することで、自分が欲しい製品、あると便利だと思った製品を自分で開発・製造することができるのだ。広尾学園のプロジェクトでは、そのような次世代のものづくりに対する考え方やスキルを身に付けることを目指している。 3Dプリンターを活用するのに重要なのはデータだ。実際にデータはどのように作ればよいのか、3Dプリンターを動かすとどうなるのか、機器やソフトに生徒が直接触れ、可能性を探った。◆人体スキャナーやモデリングツールを体験 原氏は、最初に人体スキャナーを試したい生徒がいないか問いかける。若干躊躇はあったものの1人が立候補し、スキャニング後モニター画面に映し出されたデータ確認する。このスキャナーは縞模様の光線とカメラによって瞬時に対象物を把握するため、レーザーを使ったスキャンというより写真を撮るようなイメージ。生徒の全身モデルがコンピュータの画面に表示され、表情まで読み取れた。 その後、生徒たちは2グループに分かれ、工房内の人体スキャナーやモデリングソフト、3Dプリンターの操作などを体験した。スキャナーはライトとカメラを使ったものやハンディタイプのレーザースキャナーなどが用意され、スタッフの説明を聞きながら機器やソフトを操作していた。◆生徒の芽を伸ばすプロジェクトにしたい 体験ワークショップの最後には、各生徒にスキャナーやプリンターをどのように使ってみたいか、どのようなものを作ってみたいかを聞いた。 「大仏をスキャンしたらどうなるか」「口の中はスキャンできるか」「演劇部だが小道具の作成に利用したい」「(モデリングしたデータで)プロジェクションマッピングをしたい」「箱庭のようなものを作りたい」などさまざまな意見が出された。文化祭では自分の顔のマグネットを作るサービスをしたらどうかと、催し物のアイデアを出す生徒もいた。 3Dプリンターについては、活用方法に関する認識の幅が広がり、プロのエンジニアらの話や実際に体験したことが大きな刺激になったようだ。学校にラボができたらと、今後の活動の可能性に胸を膨らませていた。 体験ワークショップに参加した生徒に対して広尾学園の金子氏は、「うちの学校の生徒は環境と機会があれば必ず芽を出してくれます。みなさんはProject ABBAの最初のメンバーとして、これからどんな花を咲かせてくれるか楽しみです」とコメントした。