京大、早産児ほど高い声で泣くことを発見

 京都大学は8月21日、早産児ほど高い声で泣くことが明らかになったと発表した。早産児・低出生体重児の出生割合が増加をたどる中、早産児の心身発達の評価や診断、支援に寄与するものと期待されている。

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早産児・満期産児の泣き声の計測時期(左)と泣き声の音響スペクトログラム(右)
  • 早産児・満期産児の泣き声の計測時期(左)と泣き声の音響スペクトログラム(右)
  • 泣き声(基本周波数)の高さと在胎週数・計測時体重との関係
 京都大学は8月21日、早産児ほど高い声で泣くことが明らかになったと発表した。早産児・低出生体重児の出生割合が増加をたどる中、早産児の心身発達の評価や診断、支援に寄与するものと期待されている。

 発見したのは、同大教育学研究科の明和政子教授らの研究グループ。出生予定日前後まで成長した早産児(在胎週数32週未満および32~36週)と、生後1週間前後の満期産新生児の泣き声について音響的特徴を調べた。

 泣き声については、注射など外的刺激に誘発されたものではない自発的な泣き声を収集。音響解析を行うとともに、在胎週数や身体サイズ、子宮内発育遅延などとの関連を調べた。

 その結果、出生予定日前後まで成長した早産児は、身体の大きさや子宮内発育の遅さにかかわらず高い声(基本周波数)で泣き、予定日より早期に出生した子どもほど高い声で泣くことがわかった。

 早産児は、自律神経系機能の発達が遅いという報告があり、高い泣き声の背景には「迷走神経の活動低下」による声帯の過緊張が関与している可能性がある。これは、早産児が満期産児とは異なる神経成熟過程をたどる可能性を示すもので、早産児の発達評価・診断・支援法の進展に大きく寄与するものだという。

 迷走神経活動の不全については、発達障害との関連可能性を指摘する研究者もいる。だが、生後まもない時期にみられる自律神経系成熟の異質性が、発達途上の小児・青年期もたらす長期的影響、早産児で高いとされる発達障害のリスクとの関連については、依然不明なままとなっている。こうした問題を解決するためにも、さらなるデータの蓄積が必要になるという。

 研究グループでは、生後早期の泣き声と迷走神経の活動レベルとの直接的関連、生後数年にわたる認知発達との関連を明らかにするため検証を続けている。

 明和教授らは「早産児の心身発育の困難さを生後早期から評価し、支援するための簡単な指標の1つとして研究が役立つよう、これからも検証を積み重ねていきたい」とコメントしている。

 研究成果は、8月13日発行の英国王立協会の専門誌「Biology Letters」に掲載された。
《奥山直美》

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