日本デジタル教科書学会2014年次大会の意義とこれからの役割

 日本デジタル教科書学会2014年次大会が8月16日と17日、「深化するタブレット端末活用 ~今育成したい能力~」をテーマに開催された。同大会について、日本デジタル教科書学会の会長で、附属新潟小学校教諭の片山敏郎氏に寄稿いただいた。

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◆堀田先生が語る「日本デジタル教科書学会」への期待と今後

 基調講演の中で、堀田先生からは、「日本デジタル教科書学会」への2つの期待を語っていただいた。

 1つ目は、情報端末活用に関する多くの実践や開発の現実も含めて、実践的、学術的に検討する場としての期待だ。「デジタル教科書とか情報端末のことはここに行けば全部わかるみたいな学会になって欲しい」と、熱く期待を語っていただいた。

 2つ目は、エビデンスのある学会だ。エビデンスとは「科学的な根拠」である。デジタル教科書をキーワードに、心理学者だったら心理学的、社会学者だったら社会学的に実証していくような研究が蓄積できるとよいとアドバイスをいただいた。まさに、自分が目指したいと思っている姿であった。

 堀田先生のご提案を受け、今年度新たに取り組もうと構想していることは、以下の3つだ。

 第1に、調査研究・政策提言である。堀田先生ご指摘のように、学会が主導で調査研究を行い、エビデンスを蓄積し、積極的に発信活動をしていく。今後、どのような調査研究が必要かを洗い出し、優先順序の高いものから取り組んでいく。

 第2に、さまざまな学会で活躍されている方々から理事や役員になっていただき、他の学会との橋渡しをしていただくとともに、他領域への広報活動を行っていく。ICTと教育というと、教育工学を中心に語られがちだが、デジタル教科書の研究は、堀田先生ご指摘のように、教育工学の範疇にとどまらない。社会学や経済学、認知心理学といった他領域や、特別支援教育、各教科教育という他の教育内容を専門とする学会とともに知見を交流していくべきである。これを私は、設立以来「デジタル教科書研究のハブになる」と公言している。そのための、新たな広報戦略が必要と考えている。

 第3に、研究会・研究プロジェクト・研究グループへの助成である。デジタル教科書にかかわる取組みを最大10万円の「助成」という形で支援し、そこから得た、知見を還元してもらう。それぞれ、草の根の意見を大切にし、ボトムアップで高まる学会運営を目指す。もともと、この学会自体が草の根運動的なものである。この遺伝子を大切にしていきたい。

 デジタル端末の活用は、これからものすごい勢いで広がっていくターンに入った。しかし、そこでの知見は、共有されているとは言えない。いかに知見を共有するか、そして、エビデンスを蓄積して、頼りにされる存在になるか。これから1年の課題は大きいが、積極的な挑戦を継続していきたい。

 なお、今回の大会では発表プログラムを見て頂ければわかるように、多くの実践が発表された。近日、学会の年次大会発表原稿集を公開し、より詳しい詳細をご覧頂けるようにする予定である。
《片山敏郎》

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