【大学と就職】8割の企業が採用しない? 既卒の就職活動の厳しい実態

 以前に「新卒」と「既卒」の違いが就職活動の難易度に大きく影響することをお伝えした。「新卒」という看板を背負える就活生と、それが外れた「既卒」の就活生の間には、大きな差がある。それが今の就職活動の実情だ。

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卒業後3年以内既卒者の採用
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  • (20)卒業後の就職活動において、既卒者を採用対象としている企業を探すのに苦労した事はありますか。
◆政府の支援もあるが、既卒生の状況は依然として厳しい

 このような状況を、政府も傍観しているわけではない。上記奨励金などの制度面以外にも、さまざまな施策を行っている。

 たとえば、2009年に内閣府が中心となって「若年雇用対策プロジェクトチーム」を立ち上げた。同チームは「第2のロスト・ジェネレーションをつくらない」ことを目指し、ハローワークなどと連携してジョブサポーターやジョブカフェといったサポートを打ち出した(なお、政府広報オンラインによれば、2012年にはジョブサポーターの支援によって19万人以上が就職を決めている)。

 しかし、上記のディスコの調査にもあるとおり、依然として既卒者の就職活動の現実は厳しい。非正規雇用の拡大や企業側の厳選採用などの流れもあり、この状況は、残念ながらそう簡単には改善されないだろう。

◆就職活動に関する親子の認識の違いを埋めよう

 前回もお伝えしたが、一旦大学を卒業して新卒の看板を外してしまうと、それだけで就職活動は厳しくなる。それが今の就職活動の実態である。

 留年は学費の負担なども発生するため、保護者には抵抗もあるだろう。だが、それと引き換えに未就職卒業することには、きわめて大きなリスクが伴うことも覚えておいて欲しい。新卒という貴重なチャンスは、一度手放したら二度と手に入らない。

 また保護者には、我が子の満足いく就職活動のために、普段から密なコミュニケーションを取ってもらいたい。親子の間の就職活動に対する認識の違いが、学生の負担になってしまっている(結果、就職活動がうまくいかない)ケースが意外と多いからだ。

 たとえば、就職活動生の多くは大手企業を目指している。その中には、考え抜いた末にその道を選んだ学生もいれば、ただ何となく選んだ学生も多い。

 中には「親が安心するから」という理由の学生もいる。だが、大手企業の競争倍率は中小企業と比べて高い。そのため、応募したすべての企業に落選してしまう学生も出てくる。

 大手企業に落ちてしまった学生たちの多くは、そこで初めて中小企業へ目を向ける。だが、企業規模や知名度だけを追ってきた学生の大半は、(自己分析や企業分析といった)就職活動で大切なことが見えていない。そのため、ただ闇雲に選考を受けては落選が続くといった泥沼にはまってしまいがちだ。

 そのような状況に陥ると、非常に危険である。精神的に追い詰められて、就職活動ができなくなってしまう学生も多い。その苦痛に耐え切れずに自殺してしまうという悲しい事件も、過去に起きてしまっている。

 親を安心させたいというプレッシャーから大手企業ばかり見ていて、本当に自分に合った企業・仕事を見失ってしまう学生も多いと思われる。その結果、就職活動がうまくいかないと、「やりたいことがわからない」「どうすれば良いのかわからない」と悩んでしまう。だが、こうした学生は「親を心配させたくない」という思いから、すべてを一人で背負ってしまいがちだ。

 そうした学生は、保護者が就職活動の実態、そして我が子の就職観をしっかり把握することで道が開けると思う。安易に「うちの子は大丈夫」と思わずに、また「口を出すのは過保護だ」と思わずに、ぜひ親子でしっかりと話し合ってみて欲しい。

<著者紹介>高嶌悠人(キャリアコンサルタント)
 慶應義塾大学法学部政治学科卒。株式会社電通を経て、教育系ベンチャー企業の株式会社ガクーに入社。そこでは新卒学生を対象とした就職活動支援スクールの運営に携わってきた。現在は独立し、高校や大学、塾、予備校などでキャリアをテーマとしたセミナーなどを開催したり、メディアにてキャリアに関するコラムなどを書いたりしながら情報発信している。著書に、「人気NO.1「内定塾」が教える エントリーシート 履歴書の書き方(高橋書店)」や、「これだけ覚える!一般常識&最新時事(高橋書店)」、「人気NO.1「内定塾」が教える!今までなかったエントリーシート 履歴書の文章講座」などがある。
《高嶌悠人》

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