デジタル教科書の位置付け、1年半にわたり検討

 デジタル教科書の位置付けに関する検討会議(第1回)が5月12日、文部科学省で開催された。教育現場の先生や校長先生、教育委員会、PTA、教科書出版社、IT企業など多方面の立場から構成される委員によってさまざまな意見が交わされた。

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デジタル教科書の位置付けに関する検討会議(第1回)
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 デジタル教科書の位置付けに関する検討会議(第1回)が5月12日、文部科学省で開催された。検討会議は、文部科学省初等中等教育局によって開催され、東北大学大学院情報科学研究科の堀田龍也教授を座長に、教育現場の先生や校長先生、教育委員会、PTA、教科書出版社、IT企業といった立場の委員によってさまざまな意見が交わされた。

 教育の情報化が進むなか、アクティブラーニングなどの主体的な学習の必要性の高まりや政府の各種提言を受け、教科書の基本的なあり方、デジタル教科書の教育効果と制度的な位置付け、費用負担のあり方などを検討していくことを目的に会議が設置された。開催期間は平成27年5月12日から平成28年12月31日まで。1年半にわたって検討を行う。

 堀田座長は冒頭の挨拶で「教科書をどのように情報化に合わせていくのかということが重要な課題になっている。そこには多くの検討すべき要素があり、これらを前向きかつ専門的に検討していくのがこの会議のミッション。とりわけ、教科書の検定や供給、他の教材との関係、教科書がデジタル化されたときの配慮事項、紙の教科書との共存など、さまざまな検討すべき課題について、本日より約1年半をかけて前向きに議論していく」と述べた。

 日本の教科書制度について、文部科学省初等中等教育局教科書課長の望月氏が、教科書の定義や意義、教科書が使用されるまでの流れ、教科書に関する近年の動向などについて説明。近年では、教科書のページ数が増加傾向にあり、大型化、多様化、カラー化、ルビを振るなどユニバーサル化され、多面的な見方ができるようにバランスのとれた記述がされるようになってきているという。

 自由討議では、学校現場の立場から「教員の格差や地域格差がかなりあると感じるので、ICT環境を教員側から見た環境、子ども側から見た活用、双方の活用に至るための環境整備を適切に行ったうえで、デジタル教科書を導入すべきだ」(練馬区立光が丘春の風小学校 福田純子校長)、「デジタル教科書は、多くの情報を盛り込むことができ、子どもの興味・関心に応じて効果的な学習ができる反面、膨大な情報からどのように質を高めていくのか、教科書検定制度をどのように位置付けていくのかが懸念される」(東京国際大学商学部 山内豊教授)。

 教科書出版社などの企業の立場から「一般の方は、デジタル教科書に対してあまりよいイメージがないようだ。今までの紙の教科書だけでは対応できなくなってきており、教科書のスタイルも変わりつつある」(光村図書出版 黒川弘一氏)、「教科書会社は多くの情報を盛り込みたがるが、端末の容量が足りなくなってしまう。教材をダウンロードするとなると、ネットワークも厳しくなる。教材のアップデートに伴い、OSのアップデートも必要となることがある。ネットワークを経由せずにSDカードで配布するなど、しっかりと仕組みを作っていけば、これらは解決可能であると考えている」(日本マイクロソフト 中川哲氏)などの意見があった。

 また、「デジタル教科書は、教科書と副教材があり、現在普及しているのはデジタル副教材。電子ワークブックもあり、教科書の分類をしたうえで議論を進めるべきだ。現行の教科書のデジタル化は、法制度改正も伴うので、日本の教育の根幹にも関わってくる」という方向性も示された。

 第2回検討会議は、6月30日に開催予定。「学びのイノベーション事業」実証研究報告と関係団体からのヒアリング、自由討議が行われる。第3回目以降、月1回程度の頻度で開催予定としている。
《工藤めぐみ》

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