コクヨ工業滋賀 「おもしろ文具開発秘話」…社長も発案

 滋賀の魅力をぎゅっと詰め込んだ文具、それがコクヨ工業滋賀が企画・販売する「びわこ文具」。これらの商品は、一体どのようにして生まれたのでしょうか。コクヨ工業滋賀 開発グループ 田中沙季さんにお話を伺いました。

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琵琶湖やカイツブリの足、ナマズのおっぽ…ちょっと変わったおもしろ文具「びわこふせん」
  • 琵琶湖やカイツブリの足、ナマズのおっぽ…ちょっと変わったおもしろ文具「びわこふせん」
  • コクヨ工業滋賀 開発グループ 田中沙季さん
  • 田中さん。開発に携わっている「びわこ文具」と一緒に
  • コクヨ工業滋賀が開催する工場見学では、会場でReEDEN・びわこ文具が購入できる
  • しが旅マスキングテープ(左)、 びわこマスキングテープ(右)
  • びわこクリップとヨシメッセージカード。ヨシ紙を使用したメッセージカードは「びわこクリップ」とマスキングテープ2種にセットされている
  • 試作段階の「びわこふせん」
  • ノリの塗布位置・面積を細かく試したようすがわかる
 滋賀の魅力をぎゅっと詰め込んだ文具、それがコクヨ工業滋賀が企画・販売する「びわこ文具」。びわ湖・淀川水系のヨシを有効活用したエコ文具「ReEDEN(リエデン)」の新シリーズで、2014年9月9日に第1弾が発売されて以来、全国のおもしろ文具ファンをとりこにしてきました。

 びわこ文具シリーズのうち、最初に発売されたものは琵琶湖をモチーフとした「びわこクリップ」と、琵琶湖固有の魚と琵琶湖と人のさまざまな関わりをデザインした「びわこマスキングテープ」。これらの商品は、一体どのようにして生まれたのでしょうか。コクヨ工業滋賀 開発グループの田中沙季さんにお話を伺いました。

◆若手が携わるおもしろ文具…滋賀の魅力を発信

田中さん:商品開発に携わって3年目になりました。採用選考の段階では生産管理グループを志望していましたが、採用担当の方が開発グループへお声がけくださり、現在に至ります。大学ではまったく異なることを学んでいたので、戸惑うことばかりでしたが、とても楽しくやりがいのある職場です。

 今でこそ滋賀県や琵琶湖をモチーフとしたさまざまな商品の開発に携わっていますが、実は会社に入るまではヨシを使った「ReEDEN(リエデン)」シリーズについてはもちろん、滋賀県や琵琶湖に関しても詳しく知りませんでした。滋賀県やヨシについて学ぶようになったのは、入社後に「ReEDEN(リエデン)」シリーズやびわこ文具の開発に携わるようになってからのことです。

◆まずは手にとってもらうことから始めよう

--田中さんは「びわこ文具」の立ち上げに携わっていますね。びわこ文具は、どのようにして誕生したのでしょうか。

田中さん:コクヨ工業滋賀では、びわ湖の環境を守るという理念のもと、ヨシの活用に取り組み、広く琵琶湖の環境保全意識を広めるため、2007年から「リエデン・プロジェクト」をスタートしました。プロジェクトでは、琵琶湖・淀川水系のヨシを使用した文具「ReEDEN(リエデン)」シリーズの展開、ヨシ刈りのボランティア活動に取り組んでいます。

 現在は利用されることが少なくなってしまったヨシを刈り取り手入れし、刈り取ったヨシを使用し紙製品として工業製品化することでヨシの活用に繋げています。その製品をお客さまにご利用いただくことができれば、また新たなヨシの活用に繋がります。そうした循環が、琵琶湖の環境保全に繋がるという思いです。

 コクヨ工業滋賀は、「キャンパスノート」をはじめとするコクヨグループの紙製品基幹工場です。「ReEDEN(リエデン)」シリーズの開発当初は自社の強みを活かし、ヨシを製品の一部に使用したノートやルーズリーフ、コピー用紙などを製造・販売しておりました。

 しかし、「エコ・環境に良い」というメッセージだけではお客さまに喜んでいただく商品にはなりませんでした。やはり、使う人の気持ちになって考えると、気に入って繰り返し利用していただけるような面白い商品でないと、それはお客さまや環境のためにはならないのですよね。

 そこで、文具を滋賀のお土産に、という発想から、滋賀の魅力を詰め込み、まずは「面白いな」という気持ちで手に取って頂けるような商品作りを目指しました。そのなかでヨシ紙を活用し、「あとから気づく環境意識」に繋げています。それが、ちょっと変わった「びわこ文具」シリーズ誕生のきっかけです。

◆びわこ文具は全4種…ほか「とび太くん」コラボ文具も

--びわこ文具には現在、どのようなものがありますか。

田中さん:2014年9月9日に発売された「びわこクリップ」「びわこマスキングデープ」のほか、2015年3月21日に販売した「しが旅マスキングテープ」、同年3月30日に発売した「びわこふせん」があります。「ReEDEN(リエデン)」シリーズ同様、環境保全への思いを込めて、「びわこクリップ」とマスキングテープ2種に同封されているメッセージカードや「びわこふせん」自体に琵琶湖・淀川水系のヨシを使用しています。びわこ文具の累計販売数は約17,000個になり、多くの方にお手にとっていただけるようになりました。

 びわこ文具のほか、滋賀県内では“飛び出しぼうや”として広く知られている交通安全を啓発するキャラクター「とび太くん」とコラボしたノートや付箋も展開されています。また、「ReEDEN(リエデン)」シリーズでは、そのほか「滋賀のお土産文具」として「麻とヨシのノート」「ReEDEN colours SHIGA セミ B5・A5・A6ノート」「滋賀のお魚ヨシノート」も発売しております。

◆風通しの良い職場から生まれた「びわこ文具」

--商品開発は、すべて現場の方が企画されるのでしょうか。

田中さん:商品開発は、おもに開発グループメンバーの女性3名でデザインや企画を担当しています。グループ内のアイデアで商品が生まれることも多いですが、社長からのアイデアもありますし、営業さんが集めてきてくださる販売店さまやお客さまのお声から商品が誕生することも多々あります。開発会議には社長も加わり、とてもフラットな雰囲気で打ち合わせを行っています。「とび太くんふせん」の簡易卓上スタンドのアイデアなど、社長の発案をもとに製品化した商品もありますね。

 そのほか、ピンク色の「しが旅マスキングテープ」は、営業さんの聞き込みから生まれたものです。当初は、青色の「びわこマスキングテープ」のみの販売でしたが、営業さんから「マスキングテープの利用者は女性が多いので、ピンク色も欲しいという声が多い」という話を聞き、ピンク色のかわいらしい滋賀の旅のシーン・名物をデザインした新しいラインアップが生まれました。

◆商品サンプルを自作…手がけた商品への思い

--商品開発をする際に、苦労したことはありますか。

田中さん:私が担当したのは、「びわこふせん」の開発です。付箋はコクヨ工業滋賀で取り扱ったことのない商品だったので、体当たりで開発をして、試行錯誤の連続でした。

 まず、新しいびわこ文具を作るとなった際に、ヨシ紙を使って琵琶湖の形をした付箋を作りたい、というアイデアが出ましたが、それだけでは「面白くない」と開発グループで頭を悩ませました。ありがたくも、先に発売した「びわこクリップ・マスキングテープ」に関心を寄せていただけるようになってきた時期でした。

 だからこそ、「この会社、次は何をしてくるんやろ?」とお客さまに期待していただける商品作りを心がけました。

 そこで、付箋の形を琵琶湖や琵琶湖に生息する生き物の一部をモチーフにした「カイツブリ」の足、「ナマズ」のおっぽの形にし、ちょっと不思議な付箋を作ってみることにしました。しかし、付箋は弊社で初めて手がける製品だったため、具体的なイメージが沸かず、まずはわたしが付箋の見本を作成することにしました。

 作成した見本をもとに、付箋のノリはどこにどの程度つけると上手に剥がせるのかということや、琵琶湖の形を描く曲線の丸みはどの程度が望ましいのかということ、また、動物の足指の切り込みの深さなどについて、お取引先の会社さまにアドバイスをいただきながら何度も打ち合わせました。

 大急ぎのスケジュールで、やることや考えることが多く大変でしたが、無事商品を世に送り出せた達成感がありました。開発グループの先輩が担当したびわこクリップも、まずは開発担当者がクリップのサンプルを作成することから始めていました。最初は厚紙を切り取っただけのクリップが、大きさや形の改良を重ねて現在の形になるまでの過程は苦労の連続だったようです。

◆全国より問合せのある愛らしさ、若い女性やお子さまにヒット

--たくさんの工夫や、滋賀県や環境に配慮したびわこ文具ですが、一番人気の商品は何ですか。

田中さん:一番人気なのは、「びわこクリップ」ですね。現在、びわこ文具人気トップ3はそれぞれ1位「びわこクリップ」、2位「びわこマスキングテープ」、3位「しが旅マスキングテープ」です。

--びわこ文具に対するお客さまからの反応はいかがでしょうか。

田中さん:実は、東京・日本橋で2015年3月に行われた「大近江展」という滋賀の物産展に出展した際には、びわこ文具はそこまでお客さまの目にはとまりませんでした。それが、4月に東京で行われた「コクヨハク」では多くのお客さまからご好評をいただきました。滋賀県とコラボした文具イベントということもあり、琵琶湖の形は知らなくても、普通の文具とは異なる形に興味をもってくださった若い女性や、お子さま、文具好きの方々がびわこ文具を手にしてくださいました。

 これまでには、北海道にお住まいの方から「びわこ文具はどこで買えますか」と嬉しいお問合せをいただいたことがあります。遠方の方にも興味を持っていただける商品を開発できたことはもとより、商品を通じてヨシをはじめとした琵琶湖の環境のことを知っていただける機会になれば嬉しいです。

◆工場見学者向けの完全限定商品、ほか全国の販売店情報

--びわこ文具は、どこで購入できますか。

田中さん:現在はおもに滋賀県内の文具店やショップ、宿泊施設や観光地のお土産売り場などでお取り扱いいただいております。そのほかは、京都・大阪・東京の一部店舗で取り扱いがあるほか、Webサイト「コクヨS&Tショーケース」でも購入できます。ぜひ、滋賀にいらした際は「おみやげ文具」としてお手にとっていただきたいです。

--コクヨ工業滋賀が手がける限定商品や、今後の新商品情報を教えてください。

田中さん:コクヨ工業滋賀の工場見学に参加した方だけに、「滋賀オリジナルキャンパスノート」を販売しています。これはインターネットでも、地方などで行う特別展でも販売しない完全限定品です。

 これからも、地元に寄り添いながら、お客さまにさらに興味をもっていただけ、面白いな、と思ってもらえる商品作りを目指します。「ReEDEN(リエデン)」シリーズ・びわこ文具の今後の新商品にもご期待ください。企画会議でボツにされてしまっても(笑)、めげずに再提案をしながら良い商品開発に努めて行きたいと思います。

--ありがとうございました。

 コクヨ工業滋賀は、7月4日にReEDENシリーズ「滋賀のお魚ヨシノート」を発売したほか、2015年に行われた「2015滋賀 びわこ総文(第39回全国高等学校総合文化祭滋賀大会)」の開会に合わせ7月28日に“滋賀を愛する滋賀ノート”として「ReEDEN colours SHIGA」のセミB5サイズとA6サイズを発売しました。

 若手社員のアイデアと、社員一丸となって開発に携わる社風が生んだ「びわこ文具」シリーズ。今後の展開からも、目が離せません。きらきらと目を輝かせ、はつらつとインタビューに応えてくださった田中さんの新商品にも注目していきたいところです。

カイツブリの足やナマズのおっぽ、おもしろ文具開発秘話…コクヨ工業滋賀 田中沙季さん

《佐藤亜希》

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