ASDを持つ小中学生、善悪は行動で判断…京大ら発表

 米田英嗣 京都大学白眉センター特定准教授らの研究グループは、自閉スペクトラム症(ASD)がある小中学生の善悪判断に関する研究成果を発表した。ASDがある小中学生は、人物の特性よりも、明示された行動に基づいて善悪を判断することがわかった。

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 米田英嗣 京都大学白眉センター特定准教授らの研究グループは、自閉スペクトラム症(ASD)がある小中学生の善悪判断に関する研究成果を発表した。ASDがある小中学生は、人物の特性よりも、明示された行動に基づいて善悪を判断することがわかった。

 悪意の理解が困難であると言われる自閉症スペクトラム児は、相手がだまそうとする際に、相手の悪意に気が付かないことがあるという。近年の研究では、善意による行為が他人に害を与えてしまう状況について、ASDを持つ人は、定型発達者と異なり、悪い行為であると評価することが示されている。

 米田英嗣 京都大学白眉センター特定准教授、柳岡開地 教育学研究科博士課程学生、子安増生 同名誉教授、楠見孝 同教授らの研究グループは、浜松学院大学、福井大学、翔和学園、甲南大学、金沢大学、平谷こども発達クリニックなどと共同で、ASDがある小中学生19名と定型発達の小中学生20名に、登場人物の特性と行動、物語の結末を操作した文章を読んだあとに、登場人物に対して善悪判断を行ってもらった。

 その結果、ASDがある小中学生は、一時的に良い行動を示した普段は悪い子に対して「良い子」であると判断しやすく、登場人物の特性よりも、明示された行動に基づいて善悪を判断することがわかった。ASDを持つ児童が、他者の悪意を理解することが困難な原因として、他者が持っている特性に基づいて推論し、その人がこれから行いそうなことを予測することが困難である可能性が示された。

 この研究成果は、2016年11月29日に英国の科学誌「Scientific Reports」誌に掲載された。研究グループは今後、ASDを持つ人に対する詐欺被害の防止や、いじめ抑止につながる研究を進めていくとしている。
《外岡紘代》

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