ヤマハ、ボーカロイドで音楽教育…プログラミング教育にも期待

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ヤマハ 研究開発統括部 新規事業開発部 部長 剣持秀紀氏
  • ヤマハ 研究開発統括部 新規事業開発部 部長 剣持秀紀氏
  • SES事業推進グループ玉井洋行氏
  • ヤマハ Smart Education System発表
  • 「創作」=作曲を教えられる先生は多くない
  • 中学校での実証実験
  • デモは「みなさんこんにちは」という文にメロディをつける
  • プログラミング教育への可能性
  • SES事業推進グループ武市尚子氏
 ヤマハが1月16日に発表した「Smart Education System」は小中学校の教育現場で活用できる音楽教育ソリューションだ。第1弾として「ボーカロイド教育版」「ギター授業」「箏(こと)授業」の3種が2月以降、順次市場に投入される。

 Smart Education System開発を担当したのはヤマハ 研究開発統括部 新規事業開発部。部長の剣持秀紀氏は、記者発表の冒頭に「ヤマハだからこそできる形で、音楽の授業に貢献できるソリューションを発表できること幸せに思う」と挨拶した。

◆ボーカロイドを音楽教育に活用

 続いて、同開発部 SES事業推進グループ玉井洋行氏、武市尚子氏らによって、3つの新製品の概要が紹介された。ボーカロイド教育版を開発した背景には「政府は2020年までに生徒1人1台タブレットを実現させるとしている。ハード面の普及施策は進んでいるが、これからはコンテンツの拡充が必要になる。音楽教育では器楽や鑑賞といったコンテンツは作られているが、創作について多くの先生がどう教えればよいのか悩んでいる」(玉井氏)現状がある。

 ボーカロイド教育版は、パソコンまたはタブレットを使って、視覚的に作曲ができるツールだ。音楽を譜面に起こしたり、作曲をするスキルがなくても、歌詞を入力し、その言葉に合わせて音階、リズムを画面上の視覚的な操作でつけていく。伴奏となるコード進行を設定すれば、和音の音階部分にマークがつく。ガイドに音階をつけていけば、違和感のないメロディを作ることができる。

 実際の画面では「ガントチャート」のようなものを作る感覚で、作曲していく。開発にあたって実施したある中学校の実証実験では、3年生が作った詩に、ほかの生徒がメロディをつけ、出来上がった曲を卒業式で披露したという。音楽の素養や才能がある生徒ではなく、グループごとにサビのメロディを作るなど、共同作業や課題解決といった面で効果があった。

 教師側、生徒側に作曲の知識、スキルがなくても曲が作れるのがボーカロイドの強みだ。譜面などに苦手意識がある生徒も、楽しみながら才能を伸ばせる教材として期待される。

 ボーカロイド教育版は、DVDパッケージでの販売となり、全国の楽器店、教育用ソフト販売店などで2月7日より取扱開始となる。価格は、一般も購入可能なシングルライセンスが20,000円(税抜)、校内無制限ライセンスはオープン価格となる。

◆器楽教材としてのヤマハの提案

 ギター演奏と箏演奏の教材は、デジタル教科書形式のオーサリングツールだ。なぜリコーダーではなくギターと箏なのか。この疑問について武市氏は「リコーダーは授業での採用がもっとも多く、多くの先生も教えることができる。指導要領にはリコーダー以外にギター、箏、太鼓などほかの楽器も示されているが、これらを教えることができる先生は少ない。アンケートでは、生徒がもっとも演奏してみたい楽器がギターで、和楽器として導入がもっとも多いのが箏だった。」と、現場の声、調査によってこの2種を最初の教材として選んだと説明した。

 アプリでは、知識などをレクチャーする動画、模範演奏の動画、楽譜の画面などを操作しながら、学習していく。学習は、大画面のモニターや電子黒板に表示させてもよいし、各自のタブレットにインストールして行う授業でもよい。

 2つの学習教材の特徴は、模範演奏の撮影アングルを切り替えたり、テンポの調整が可能なこと。小節(ギター)ごとフレーズごと(箏)の細かいステップで練習ができること。実証実験などで得られた知見をベースにした授業モデルが提供されると武市氏はいう。箏の教材では「唱歌」(演奏の調子を「ツンツンテーン」などの言葉で表現する手法)にも対応している。

 楽器演奏教材は、シングルライセンスと校内無制限ライセンスの2種類が用意され、3月上旬から販売開始の予定。シングルライセンスはDVD+書籍のパッケージとなり全国の書店、楽器店、通販サイトなどで購入できる。校内無制限ライセンスはストリーミングによる提供となり、「EduMall」経由での契約利用となる。価格は、シングルライセンス版が7,500円。校内無制限ライセンスが1年あたり15,000円という設定だ。

◆プログラミング教育への可能性

 最後にヤマハ上席執行役員 飯塚朗氏が「演奏教材については、演奏曲の追加、楽器の拡張などを考えている。ボーカロイドについては、ロボット言語やゲームとは違ったプログラミング教育の教材としての活用の提案も行っていきたい。」と今後の抱負を述べた。

 ボーカロイドをプログラミング教育にという話は、玉井氏のプレゼンの中でも触れられており、文部科学省が立ち上げた有識者会議でも検討されている。作曲とプログラムは関係ないように見えるが、専門家にとって、音符や譜面による楽譜とプログラムコードの類似性は昔から認識されているところだ。著作権の議論でも、音楽とプログラム著作物に共通する概念は少なくない。

 たとえば音符には、繰り返しや演奏回数による譜面の切り替えなどシーケンスにかかわる記号がある。これらは、アルゴリズムの記述との親和性が高い。プログラマーの考えやアイデア、表現を記述したものがプログラムであるなら、作曲家の心情や思想を音楽として記述したものが楽譜であるといえる。

 プログラミング教育とは、必ずしも小学生にプログラムコードを書かせる能力を身に付けることでもなければ、プログラマーを養成するためのカリキュラムでもない。論理的思考やアルゴリズムを身に付けることが本来の目的のはずである。

 視覚的にブロックをつなぎ合わせるプログラミング教育を否定するものではないが、小学生にはボーカロイドで自然に論理的思考を身に付けさせるのは有効かもしれない。
《中尾真二》

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