平成29年度女子学院中学校、鵜崎創院長の式辞…全文掲載

 4月7日(金)、女子学院中学校・高等学校で入学式が執り行われた。229名の中学校の新入生に向け、どのような激励の言葉が贈られたのか。リセマムは、女子学院中学校・高等学校より情報を提供いただき、鵜崎創院長の式辞を全文掲載する。

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平成29年度女子学院中学校入学式 鵜崎創院長の式辞を全文掲載する
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 4月7日(金)、女子学院中学校・高等学校で入学式が執り行われた。229名の中学校の新入生に向け、どのような激励の言葉が贈られたのか。リセマムは、女子学院中学校・高等学校より情報を提供いただき、鵜崎創院長の式辞を全文掲載する。

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◆2017年度 女子学院中学校入学式 式辞

 新入生の皆さん、女子学院へのご入学おめでとうございます。今年も桜の花は一足早く開花し、皆さんの新入学を待ちわびるかのように、すでに春の訪れを感じさせる陽気となっています。本日このように、恵みに満たされて、入学式を迎えられますことを感謝いたします。

 保護者の皆さま、お嬢様のご入学おめでとうございます。中学校・高等学校の大きな成長の時期を過ごす場所として、女子学院へのお導きがありました。お嬢様方が女子学院での生活の第一歩を、本日ここにしるされましたこと、心よりお祝い申し上げます。保護者の皆さま方におかれましては、お嬢様の在学中、その成長を共に見守る良き理解者また協力者として、これからはご支援ご協力を賜りたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、お嬢様とそしてそのご家庭が、神様に豊かに祝福されて、この女子学院での生活に導かれましたことは、たいへん喜ばしいことであります。一方、ここまでのお嬢様方の努力とご家族をはじめとした周囲の皆さまのご支援は、中学受験というひとつのハードルを越えるにあたり、いかばかりであったかと推察されます。その歩みは、時に順風満帆、また時には大きな忍耐を持って取り組まねばならなかったことがあったかもしれません。しかし、神様はそれぞれの思い、そして強い決意を持った皆さんを、本日この場に集めてくださいました。どうかこれまでの経験を自身の宝として大切にし、また新たな課題を迎えた時、それを越えるための今後の糧として持ち続けてください。

 本日読まれた聖書(編集部註:ヨハネによる福音書15章16~17節)にもありますように、神様と人との関係においては、私たちが神様を選ぶのではありません。神様が私たちを選んで、それぞれにふさわしいはたらきの場所に送り出す。そしてその場で御心にかなったはたらきをなさせ、私たちを活かしていくというのがキリスト教の考え方です。したがって、中学を受験するにあたって、皆さんは学校選びに苦慮されたかもしれませんが、実は神様がその道をあらかじめ備えてくださっていたのだと、私たちは聖書の教えに基づいて考えております。皆さんが多くの中学校の中から女子学院を選び取って、この学校での学びを決めたのではなく、神様が皆さんに女子学院で学ぶことをお求めになられたのです。ですから安心して、女子学院での生活を始めていきましょう。あなた方一人ひとりは、神様によってふさわしいものとされ、尊いものとされて、特に今日この場に招かれているのですから。

 いま、皆さんはひとつの目標を達成いたしました。だからどうぞゆっくりと休んでください、そう申し上げたいところではありますが、目標を達成すると、その次には必ず新たな目標が備えられてくるものです。そして新しく与えられた目標とは、これまで越えてきたものよりもさらに高く険しく、達成にはより一層の努力を求められるものとなってくるのです。しかしながら、越えられない目標が皆さんに与えられることはありません。ですから、安心して目の前の課題に取り組んでいってくだされば、求めるゴール、または新たに与えられる道に到達することができるでしょう。こういった経験を繰り返していくと、一段一段ゆっくりと階段を上がっていくように、気が付いた時には、過去の自分が置かれていた場所とは、全く違う未知の領域に足を踏み入れていることになるのです。新入生の皆さんには、6年後の自分の姿を想像することは難しいかもしれません。しかし、学院での生活を始めると、ロールモデルとなる多くの素敵な先輩方と出会います。課題を与え導いてくださる先生方のご指導のもと、女子学院の生活の中で、おぼろげながらも到達点の姿かたちが見えてくるのです。

 実はこういった目標を達成していくためには、もう一つの大切な要素があります。それは2017年度4月入学者、いま横に並んで座っている同じ学年の仲間の存在です。新しい世界に入っていくということは、いったいどういうことでしょうか。皆さんはそれを不安に感じていますか?それとも楽しみで仕方がないですか?隣の人とはこれまで生活してきた環境も違えば、住んでいるところも違う、勉強の方法も同じとは限りません。趣味も、好きな色も、全く同じということはありません。そのうちに、何か共通の話題が見つかるかもしれませんが、そのためには、お互いに相手のことを知っていく努力が必要となってきます。つまりはコミュニケーションですね。そうするとしだいにわかってくることは、互いに共通している部分もあれば、全く相容れない違った部分もあるということです。これがそれぞれの「個」というものの存在です。

 女子学院の学びと生活で求められる大切なことの一つは、それぞれが持つこの「個」を理解し、磨いていくことにあります。共通の話題を持っている者同士は、すぐに互いを知り合うことができるかもしれませんが、そう簡単には相容れない「個」と出会った時、皆さんの本当の学びが始まると考えてください。自分の意見ばかりを主張して、相手を排除してはなりません。他者を認め、尊重し、自分と同じように大切にしてください。相手の話にしっかりと耳を傾け、いままで自分の中にはなかった、新たなものを発見してください。これからしばらくはいままで自分が持っていた価値観と異なったものに出会うチャンスです。皆さんにはこれから、自分の周りにいる同級生だけでも228の異なる「個」、異なる価値観と出会う機会が備えられているのです。

 女子学院は外の一般の社会に比べれば安全なところです。互いに個性をぶつけ合っていくことに対してはとても寛容な場所です。他者を傷つけることはもちろん許されませんが、意見を戦わせ、議論し合う機会が、学院生活の中で数多く用意されています。他者の「個」を尊重しながら、自身の「個」をしっかりと見つめ直し磨いていく、また他者から学んでいく、そういった貴重な経験ができる6年間の安全な居場所なのです。この与えられた環境を、皆さんそれぞれが有効に活用してください。そして将来互いに、この交わりを続けていくことができるような、本当の友人をつくっていってください。

 「求めなさい。そうすれば与えられる。」と聖書の言葉にあります。皆さんが求めさえすれば、神様はあなた方を助けてくださいます。神様に守られたこの女子学院での生活の中で、あなたの個性を大きく育て、自主自立した心豊かな人格を形成してください。他者を思いやること、他者に仕えることというのが、いかなることであるのか、6年間の学びの中で、その答えを追い求めていってほしいのです。授業を通して、様々な行事や体験を通して、また日々の礼拝を通して、答えは学びの延長線上にいつか見えてくることと思います。そこで得るであろうことを、しっかりと自分のものとし、どうか大切にしてください。

 最後にもう一つ、女子学院で期待される大きな楽しみを覚えておいてください。それは、際限のない「知」へのチャレンジです。学ぶべきことを学び、多くの知識を得ていくことはもちろんですが、世界にはひとつの決まった答えのない、場合によっては一生考え続けなければならないような問題が、いくつもあることはご存知でしょう。獲得した知識を持っていかにそれらの問題に立ち向かっていくことができるのか。激動ともいえる動きの速い昨今の世界情勢において、私たちに求められる役割をしっかりと見出していかねばなりません。学ぶべきこと、考えるべきことは尽きることがないのです。単なる知識の他に、問題の見つけ方、問題解決の方法、他者との協力の仕方など、日本の教育界でも新たな学問の方向性が示されてきておりますが、このような学びは、女子学院ではすでに147年前の創立当初以来受け継がれてきた、根本的な教育の考え方であり、日常の学習活動であるのです。この恵まれた教育環境の中で、いままでとは違った、新たな学びを楽しんでください。難解と思われる問題解決への手がかりは、女子学院の学びの中で必ず見出せるはずです。他者の言葉に耳を傾け、聖書に親しみ、聖書に聞き、祈りをもって日々の学びを進めましょう。そのようなあなた方を、神様は必ず御心にかなった道へと導いていってくださいます。

 新入生皆さんの、新しい生活への第一歩をお祝いし、来るべき成長の日々を楽しみに、またその実現をお祈り申し上げます。女子学院へのご入学、おめでとうございます。
《編集部》

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